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多岐にわたるメラトニンの利用法

Kin Leung
BSc, ND, CPCC, FABNO, CHt, CFMP, CCS
https://www.naturopathicfundamentals.com
31 August 2013
日本語

多岐にわたるメラトニンの利用法
Dr. Kin Leung B.Sc., N.D., CCT, CPCC
Naturopathic Fundamentals Wellness Clinic
191 Edwards Way SW, Unit 103
Airdrie, AB. T4B 3E2
www.naturopathicfundamentals.com


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パートI パートII パートIIIパートIV

The Many Uses of Melatonin




パートI

私たちは、成人の10%から37%が不眠症に悩む社会に暮らしています。不眠症は精神運動能力に影響する健康問題で、眠気、事故そして記憶障害の原因になります(1,2)。このような不眠症の人々は通常、1) 眠りにつくのが困難である、2) 眠りを維持するのが困難である、3) その両方、といった3つのうちの1つのカテゴリーに分類されます (1)。多くの人は、夜に良く眠るためにメラトニンを利用することについて聞いたことがあります。しかし、メラトニンには一般に人が知らない用途もあるのです。この記事では、不眠症、癌、時差ボケおよび胃食道逆流現象(GERD: gastro-esophageal reflux, 胸やけとして知られている)におけるメラトニンの役割に焦点を当てると同時に、適切な服用量およびメラトニンの安全性に関する概要を提供します。

メラトニンは体内にもともと存在するホルモンの1つで、人を幸せにするセロトニンと化学的に関連があります(3)。メラトニンは脳内の松果体で夜間生産されます。体内のメラトニン濃度は日中のサーカディアンリズム(訳者注:24時間周期の体内時計)に従い、薄明かりの夕方の始まりによって分泌が刺激され、明るい光によって抑制されます(4,5)。このホルモンは不眠症に有益であり、サーカディアンリズムや体内時計を調節することが示されてきました。歳と共に体内のメラトニンの生産が減少することが知られています。同様に、より若い不眠症患者もメラトニンの血中濃度が低いかも知れません(6,7)。

2010年にBMC Medicine誌に発表されたある研究では、無作為にメラトニンあるいはプラセボを26週間投与された年齢18から80歳までの791人の成人不眠症患者について調査しました。この調査で、メラトニンは年齢に関わらずプラセボに比べて眠りに付くまでに必要な時間を減少させることが分かりました(7)。連続性不眠症の患者を対象とした別の研究では、メラトニンは急速眼球運動(REM: rapid-eye-movement)を著しく増加させて睡眠全体の質を改善しました(10)。

科学誌のあるリビューでは、年配の患者へのメラトニン投与に関する6つの研究を検討しました。年齢65から79歳までの合計95人の患者に、寝る前30分から120分の間に0.5mgから5mgのメラトニンを服用してもらいました。睡眠の質が、脳波のパターンを測定する装置で客観的に測られ、寝付きの悪さおよび睡眠の質の両方に改善が見られました。早朝の眠気や残存は起こりませんでした(11)。

不眠症は、鬱病や注意欠陥多動性障害(ADHD: attention-deficit hyperactivity disorder)などの精神疾患の症状を持つ子供たちにも見られます。幼い子供の継続的な睡眠障害は逆にその家族に影響を及ぼす可能性があります。特にそういう母親たちは、睡眠に問題のない子供を持つ母親たちよりも、子供に対して怒りっぽくかつ優しくないことが報告されました(8)。またメラトニンは、精神疾患子供の眠りを改善する効果があることが分かりました(8)。

メラトニンは極めて安全なプロフィールの天然薬剤で、子供と大人そして年配の人がより良く眠るための薬剤として研究されてきました。メラトニンの新しい応用である癌の治療に焦点を当てた本シリーズのパートIIにもご期待下さい。



The Many Uses of Melatonin - Not just for Sleep

パートII
By: Dr. Kin Leung, B.Sc., N.D., CCT, CPCC
Dr. Kin Leung, B.Sc., N.D., CCT, CPCC
Naturopathic Fundamentals Wellness Clinic
191 Edwards Way SW, Unit 103
Airdrie, AB. T4B 3E2
www.naturopathicfundamentals.com


protective in cancer パートIで、メラトニンには睡眠以外に用途があることに言及しました。メラトニンは癌の予防になることをご存じですか?そうです、メラトニンは癌の予防を助ける幾つかの作用があります。これは最初に、癌のリスクがより高いことが分かった交代勤務労働者の研究を通して発見されましたが、より広範な応用があるかも知れません。この節ではメラトニンの抗癌作用について検討します。

交代勤務労働者は、その不規則な睡眠スケジュールのせいで、メラトニン生産のパターンが異常です。彼らはメラトニン分泌が通常ピークにある夜中にしばしば起きています。メラトニン分泌は闇により刺激されることを思い出して下さい。ですから、あなたが継続した不眠にある時に何が起きるでしょうか?最近になって、夜間により多く光に晒されると乳癌のリスクが増加することが認められました(1)。これには不十分もしくは異常なメラトニンの分泌が原因であるという仮説が立てられました(1,2)。ある研究では、対象者が過去10年間でメラトニン分泌が最も高い夜の時間帯(おおよそ夜12時から午前2時まで)に眠らないことの多かった週の1日につき14%、乳癌のリスクが増加することが分かりました(1)。

メラトニンは幾つかのメカニズムを通して抗癌作用を発揮します。研究者によると、メラトニンの抗癌作用はその免疫調整効果、反増殖効果および抗酸化効果によるものです(3,4)。ある研究では、他に何も効果的治療が望めない20人の転移性疾患の癌患者(癌が体全体に広がった患者)を調査しました。1日20mgのメラトニンを毎夕2ヶ月以上経口投与しました。研究者は、最も活発な脈管形成血因子である管内皮成長因子(VEGF: vascular endothelial growth factor)と呼ばれる分子の血中濃度を測定しました。これはVEGFが、癌細胞の成長・拡散を促進させると知られているプロセスである新しい血管の増殖を促進することを意味します。研究者は、メラトニンを用いた治療がVEGFの血中濃度を著しく減少させることを発見しましたが、これはメラトニンが新しい血管の増殖を抑制することにより腫瘍の増殖を減少させたかも知れないことを示唆しています(4)。

別の研究では、メラトニンには乳癌のようなエストロゲン依存性の癌に対する抗ホルモン作用があるかも知れないことが分かりました。言うまでもなく、エストロゲンは癌における大変重要なホルモンです。それというのも、特に乳癌ではエストロゲンが腫瘍増殖を促進することが知られているからです。メラトニンには抗エストロゲンあるいはエストロゲン調整作用があります(5)。メラトニンはエストロゲンがエストロゲン受容体に作用する方法を変え、その結果として全体の効果を減少させると考えられています(5,6)。

人を対象とした21の研究のメタ分析(訳者注:先行研究からのデータを全て合わせた一連の研究)では、メラトニンの服用は1年後の患者の生存率を上げ、化学療法の副作用を軽減するかもしれないことが分かりました(7)。癌患者がメラトニンを服用する前には、免許を受けた自然療法の医師や腫瘍内科医と相談するよう推奨されていますので注意して下さい。

この魅力的な議論に続き、本シリーズのパートIIIでは時差ボケや胃食道逆流現象(GERD: gastro-esophageal reflux, 胸やけとして知られている)に対する薬剤としてのメラトニンの役割に焦点を当てます。



The Many Uses of Melatonin - Not just for Sleep

パートIII
By: Dr. Kin Leung, B.Sc., N.D., CCT, CPCC
Dr. Kin Leung, B.Sc., N.D., CCT, CPCC
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jet lag パートIIでは、癌治療や癌予防というメラトニンの新たな応用について論じました。 より知られているメラトニンの応用は時差ボケの処置です。時差ボケは、いくつかの時間帯を横断するフライトから来る疲労です。これは、睡眠・覚醒の周期に影響を及ぼすサーカディアンリズムが崩れるのが原因であると考えられています。メラトニン補給は身体の本来のリズムのバランスを取り戻すのを助ける可能性があります。

当然のことながら、時差ボケにおけるメラトニンの調査には飛行機の乗務員の研究が伴われました!研究者は、一連の国際フライトの後の乗務員の時差ボケを緩和する際の経口メラトニンの効果について調査しました。これは52人の国際客室乗務員を対象に、1) 早期メラトニン(5mgのメラトニンを目的地到着3日前から帰国5日後まで服用し続ける)、2) 晩期メラトニン(プラセボを目的地到着前3日間服用し次に5mgのメラトニンを帰国5日後まで服用し続ける)、3) プラセボ(1)といった、2つの異なる服用スケジュールとプラセボとの比較により行われました。この調査の結果、プラセボと比較して晩期メラトニン服用グループが目的地到着6日後に時差ボケと睡眠の乱れが著しく少ないと報告されたことが明らかになりました。プラセボよりもさらに悪い全体的回復が報告された早期メラトニングループと比較して、晩期メラトニングループは同様に著しく早く活力と敏捷性とを回復させました。これらの発見は、旅行中と旅行後のメラトニンは長時間旅行者にとって潜在的な効能があるかも知れない一方で、旅行に先立ち早期にメラトニンを服用しても助けにならないかも知れないことを示しています(1)。

別の研究では、時差ボケの軽減に必要な幾つかの異なる服用量を比較しました。研究では、ボランティアは、a) メラトニン0.5mg、b) メラトニン5mg、c) 緩効性メラトニン2mg、そしてd) プラセボ、のいずれかを受けました。東方へのフライト後、この研究薬が1日1回4日間、就寝時に服用されました。メラトニン5mgのグループは、大陸にまたがるフライト後、睡眠の質が著しく改善し、寝付きの悪さがより短縮され、疲労と日中の眠気が軽減しました。驚くべき事に、0.5mgの低服用量は、典型的な服用量である5mgという高服用量と殆ど同じ効果がありました(2,3)。その効能は、より多くの時間帯を東向きに飛行機で横断するほど大きく、西向きに横断するほど小さくなるようです(2)。

メラトニン服用は、ある人々は低用量に大変良く反応する一方で他の人々はもっと大量のメラトニンが必要かもしれないといった、個人間での変異性があるかも知れません。旅行中および旅行後のメラトニン補給は時差ボケの症状を軽減する可能性があります。この記事のパートIVでは、消化に関連する健康状態へのメラトニンの利用およびメラトニンの適切な服用量と安全上の注意に焦点を当てます。



The Many Uses of Melatonin - Not just for Sleep

パートIV
By: Dr. Kin Leung, B.Sc., N.D., CCT, CPCC
Dr. Kin Leung, B.Sc., N.D., CCT, CPCC
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191 Edwards Way SW, Unit 103
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digestive health これまでの節で、私たちはメラトニンの不眠症、癌そして時差ボケへの利用について考えました。この回では、(驚いたことに!)メラトニンの消化関連疾患への利用およびこの魅力的な物質の様々な応用における服用量を、私たちのこれまでの議論に基づいて考察します。

メラトニンは脳で生産されるホルモンの1つあることから、メラトニンが脳や睡眠関連の疾患に役立つというのは、特に驚くに値しません。しかしながら、メラトニンが消化の問題にも役立つ可能性があるというのは、驚きでしょう!この理由は、実は大量のメラトニンが腸で局所的に生産されているからなのです(1)!そうです、メラトニンは脳のいちホルモンであるだけでなく、消化活動の局所信号でもあるのです(2)。更に熟考すれば、実際、消化もはっきりした日毎のパターンを伴う極めて日周期性の活動であるので、これは理に適っています(2)。特に、メラトニンは、“胸やけ”としても知られている胃食道逆流現象(GERD: gastro-esophageal reflux)に有用であることが分かりました。

GERDは、食道あるいは“食物パイプ”に逆流した胃酸へ食道内膜が過剰に晒されることに起因し、“胸やけ”の原因となります。メラトニンは、酸により引き起こされるダメージの予防、そして抗炎症作用があると見られています(3,2)。ある研究では、1) メラトニンのみ、2) 酸抑制剤、3) メラトニンと酸抑制剤の組み合わせ、4) 無治療(対照)、といった4つのグループに分けられた36人のGERD患者を8週間にわたって調査しました。研究者は、メラトニンが胸やけと“胃”痛に関するGERDの症状に際立った改善をもたらし、食道括約筋の機能を改善し、そして基礎酸生産(食物の非存在下での酸の生産)を減少させたことを発見しました(1)。別の研究では、ビタミンB等の他の栄養に加えてメラトニンを服用している患者は、治療を受けた全員についてGERDが退行したことが分かりました(4)。

一般にメラトニンは極めて安全であると見られていますが、カルシウムチャネル遮断薬と呼ばれるあるタイプの血圧調整剤のうち幾つかの薬剤との相互作用のリスクがあるため、メラトニンを服用する前に免許を受けた自然療法の医師に相談することが推奨されています(5)。加えて、メラトニンは幾つかの疾患、特にあるタイプの癌では、勧められないかも知れません。

次の表は、このシリーズで扱ったメラトニンの応用での服用量の概要です。全体として、メラトニンは多岐にわたる疾患に対して効能がある可能性を持つ安全で効果の高い天然の薬剤であると見られていますが、既に薬を服用していたり癌の診断を受けていたりする場合には、服用前に免許を受けたヘルスケアの提供者と相談することが推奨されています。

表1. メラトニン補給の応用 th{ background-color:#AEAE9E; }
適応症 服用 所見
不眠症 0.5 mg-5 mg 就寝前30-120分 効果的な服用量は個人間で異なる。人によっては就寝前0.5 mgと5 mgとでは効果は同じことが分かっている。
抗癌 20 mg 就寝時又は就寝前30 分 癌には20 mgの服用量が助けとなることが示された。
時差ボケ 0.5 mg-5 mg 就寝前30分 旅行後に服用するのが最も良い。
胃食道逆流現象(胸やけ) 3 mg 毎日就寝時