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カラギーナン

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カラギーナン - 評判の悪い、安全な食品添加物

by: Heidi Fritz, MA, ND

Bolton Naturopathic Clinic
64 King St W, Bolton, Ontario L7E 1C7

www.boltonnaturopathic.ca
info@boltonnaturopathicclinic.ca



カラギーナン - 評判の悪い、安全な食品添加物

はじめに

カラギーナンは何十年もの間、食品添加物として用いられてきました。カラギーナンは赤い海草に由来する高分子量の親水コロイドで、安定剤や食物をゲル状にするための増粘剤として食品に加えて使われます[1]。カラギーナンには強い結合性が備わっていることから、主に乳製品や肉製品に使われます。カラギーナンには複数の種類がありますが、それらはかなり類似しています。全てのカラギーナンは、ベジタリアンあるいはヴィーガンにとってのゼラチンの代替と考えられています。少なくとも研究調査されてきた生物種では、カラギーナンは胃腸管内であまり分解されず、吸収されません。全身投与される際に、カラギーナンは免疫システムに様々な作用を及ぼすことが報告されていますが、これらの影響は必ずしも経口摂取した際に起こる作用と同じという訳ではありません。インターネット上の情報ソースやメディアは、カラギーナンは危険であり避けるべきであるという極端な立場を取りました。カラギーナンに発ガン性、遺伝毒性、または発ガン促進性があるということは明かとされていません[1]。これまでに行われた多くの毒学的研究では、人の摂取標準よりもかなりの過剰量を用いました。食糧農業機関・世界保健機関共同の食品添加物専門家委員会が推奨するカラギーナンの一日当たり許容摂取量は‘詳細不定’とされていますが、これはカラギーナンが危険ではないことを意味します。

様々なタイプ、異なる命名体系、基礎化学的な差異、そして調査対象のカラギーナンの種類といったものが、カラギーナン摂取の安全性に関する多くの混乱を招きました[2]。吟味されるべき他の面は、試験管実験のデータを、人間がカラギーナンを扱うプロセスであるかのようにそのまま解釈されてしまったことで、これは適切ではありません。その結果、文脈から取り出された特定の情報が事実のように報じられました。多くの細胞ベースのモデルのお陰で、様々な薬剤や化学物質の安全性に関する重要な情報を提供することが可能となりました。これらのモデルは便利かも知れませんが、その発見を拡張してそれが人にも当てはまるとすることには注意しなければなりません[2]。同一性、純度、用量、溶解度、結合性、そして細胞モデルの使用といった問題は見過ごされています。このような種類の状況では、試験管実験のデータは誤解を招く可能性があります。カラギーナンについての包括的なレビュー文献は多くはありません。この記事では、インターネット上で言われている内容を確認し、エビデンスに基づくアプローチを提案しましょう。


インターネット上で言われていること インターネット上で言われていること

ある人気のブロガーが、“カラギーナン:有機食品に隠れている化学物質”という記事をポストしました[3]。このタイトルはカラギーナンに対する疑惑を喚起しました。この記事では、カラギーナンは消化することができず栄養価がゼロであると述べられています。しかし、カラギーナンは食品添加物として利用するのが目的ではないため、カラギーナンに栄養があったり、カラギーナンが消化されたりする必要はありません。人は、栄養があったり消化されたりすることのない多くのものを常に摂取しています。次に、このブログの記事は、カラギーナンは炎症を引き起こし、結果としてこれが潰瘍や出血になると言っています[3]。こういった非常に強い主張にはそれを支持する強力なエビデンスが必要とされます。このブロガーは、Joanne Tobacmanの調査を引用しています。Joanne Tobacmanはカラギーナンについての研究を行った人です。Tobacmanによると、カラギーナンはどのような形であれ、曝露すると炎症を引き起こす可能性があるということです。炎症は、心疾患、アルツハイマー病、そしてガンといった多くの深刻な病気の根因です。Tobacmanの主張は、生理学的投与量を超えて投与を受けたラットを更に拡大解釈したものです。人間がこのラットの服用量を摂取すると同じ事が起こると解釈するのは適切ではありません。このブロガーは、カラギーナンは言われているほど悪くはない可能性があるものの、消化不良、皮膚発疹、そして他の健康問題の原因となるといった引用を紹介し、特に定期的に摂取すると有害となる科学的根拠が存在するという結論を下しました。この結論は多少穏やかなものですが、しかしそうは言っても強力なエビデンスに基づいている訳ではありません。

もう一人の人気ブロガーは、カラギーナンが有用かそれとも有害かにというテーマであるポストを書きました[4]。このブロガーは、2001年に発表されたエビデンスは、実際にはカラギーナンでは無くポリギーナンを用いていることを指摘しました。ポリギーナンはカラギーナンの分解産物です。動物実験で、ポリギーナンには発ガン性との関連があるとされました。しかし、カラギーナンからポリギーナンへの変換は、人がポリギーナンを作るために必要な高温および強酸の環境を再現できないことから、人体内では起こりません。このブロガーは、研究対象の品種に基づくと、カラギーナンについて行われた多くの研究は矛盾する結果を示すことを指摘しました。幾つかの品種では有害な可能性のある一方で、他の品種では安全です。全体としてこのブロガーは、1-3%のカラギーナンで構成される食事を用いた動物実験で結腸細胞に何の変化も示されなかったという事実に基づき、より合理的な見解を示しました[5]。他に注目すべきなのは、食品中のカラギーナン濃度が0.01-1%であることです。そして、更にこの食品は人間の食事全体のうちの小さな割合にしか過ぎません。これは、実際に人が摂取するカラギーナンの最終的な量は、極度に少量であるということです。


有害であるという実際のエビデンス? 有害であるという実際のエビデンス?

カラギーナンは、試験管内で人の腸細胞の細胞周期を停止させる可能性があるというエビデンスが存在します[6]。この研究では、人の腸上皮細胞が低濃度のカラギーナンに曝されました。その結果、曝露のない対照群と比較して細胞死の増加、細胞増殖の減少、そして細胞周期の停止が示されました。しかし、ここでのカラギーナンの濃度は、標準的な西欧の食事から予想される人間の結腸での曝露より高く、ですから適切に解釈を行わなければなりません。このデータは、例えば、カラギーナンが潰瘍性結腸炎や他の慢性疾患の原因になるということを意味するのではありません。このデータは、せいぜい更に詳細な調査が行われるべきであることを示すだけです。

食物中に含まれるカラギーナンの安全性についての最近のあるレビューでは、カラギーナンが便で排泄されることが分かりました[1]。カラギーナンは胃酸や胃腸管内の細菌叢でも分解されません。カラギーナンには著しい吸収あるいは代謝がなく、栄養吸収にも著しい影響を及ぼしません。数々の品種に関する幾つかの研究のレビューによると、食品等級カラギーナンは食事中5%以下の量では腸に潰瘍を生じさせないことが示されていると、著者は述べています[1]が、これは普通の人が摂取するであろうと思われる服用量よりも桁違いに大きい量です。カラギーナンは、(複数の適切な測定から判断して)免疫システムに影響を及ぼさないことが分かりました。カラギーナンは、ヒヒの赤ちゃんのための乳児用調製粉乳ですら安全であり、そして人間の赤ちゃんについての疫学調査でも安全であることが示されました。全体として、カラギーナンは安全です。


結論 カラギーナンは、デザート、アイスクリーム、サラダドレッシング、ソース、ビール、歯磨き粉、そして他の多くの製品に含まれる食品添加物です。カラギーナンは、インターネット上の多くの情報やメディアによって安全ではない可能性があると言われました。これらの記述は、適切なエビデンスの上に基づくものではありません。カラギーナンに発がん性、遺伝毒性、または発ガン促進性があるということは分かっていません。更に、カラギーナンが有害であることが分かった実験では、ポリギーナンのような異なる品種を使っていたか、あるいは人が摂取すると思われる量を遙かに上回った服用量および手法が用いられました。試験管実験や動物実験のデータからの不適切な拡大解釈が多く行われました。人のカラギーナン摂取についてのデータはわずかにしか発表されていませんが、現在入手可能な全てのエビデンスは、人がカラギーナンを摂取することの安全性を暗示しています。