メインコンテンツに移動

ブルーを超えて

Melvia Agbeko
BSc, ND
https://www.ccnm.edu
25 5月 2016
日本語

ブルーを超えて-産後うつ病

by Dr. メルビア・アグベコ理学士・自然療法医師

トリニティ・ヘルス・クリニック
516-220 Duncan Mill Road
Toronto, ON
M3B 3J5

www.melviaagbekond.com
www.trinityhealthclinic.com



ブルーを超えて-産後うつ病

はじめに


T母となることの喜びは、この上なく幸福なワクワクする経験でしょう。しかし、幸せと喜びとの代わりに、もし新米の母親が涙もろくいら立っていつも泣いていて、でもその理由が分からないとしたらどうでしょうか?彼女がもし、赤ちゃんを見てワクワクする代わりに、否定的な感情で赤ちゃんを傷付けてしまうかも知れないと心配するとしたらどうでしょうか?それに加えて、彼女だけがそのような経験をしていると信じ込むことに対する恥、混乱や恐れがあったとしたら?これは、ざっと出産した女性の13%にとって現実です[1]

産後気分障害は主に3つに分類されます:産後ブルー(“ベビーブルー”)、産後抑うつ(PPD: postpartum depression)、そして産後精神病です。

産後ブルー

号泣、気分の落ち込み、睡眠障害、食欲の変化、そして不安といった妊娠後の“ベビーブルー”はしばしば非常に一般的ですが、一方でこの懸念は通常、本質的に一時的で過渡的です。母親が子供の世話を効率的にこなす能力は、制限されたり悪い影響を受けたりすることはありません。30-75%の、そして最大85%の女性たちさえもが、何らかの時点でこの憂鬱を経験するとされていますが、これが長く続くことはありません[2]

産後うつ病

ベビーブルーの不安、涙もろさ、そして不眠は通常終わりがあるものですが、それと同時に産後うつ病の症状を無視するべきではありません。これら2つの現れ方の主な違いは、新米の母親が経験する症状の重症度です。育児放棄が原因で赤ちゃんの世話が出来ない、自殺念慮、赤ちゃんや母親自身に有害である行動の変化があり、しかもそれが長く続くことが明らかに懸念される場合には、その母親は産後うつ病(PPD: postpartum depression)です[2]。他の良くある症状には、自分に価値がないと感じる、罪悪感、無気力、喜びを失う、睡眠が長引く、そして食欲および体重の変化といったものがあります。これらの症状は、より激しさを増しより長引き定着するため、臨床上の疑いを確定するためのスクリーニングを行うべきです。このタイプのうつ病はしばしば、出産後3ヶ月間に見られますが、このような症状の全ての症状で、出産後1年間で発症するものも、産後うつ病の現れの一部であると考えられています。

産後精神病

スペクトラムの反対側では、非常に重い産後精神病が迅速に発症します。2週間以内に、精神病、妄想、幻覚が現れ、気分の乱れの幅が大きく速くなります[2]。このような母親は混乱し、うろたえ、極めて不安になります。これらの症状が原因で、新米の母親はこのような経験を理解することに苦労し、全体的に非常な困難があるでしょう。その結果、母親と子供との双方の健康やウェルビーイングは、特にもし何のケアもされずに放置されれば、極端なものになるかも知れません。後に子供には発達や行動上の変化が現れるかも知れません。


スクリーニング スクリーニング

実際にある女性が産後うつ病を経験しているかどうかを評価するために、しばしばエディンバラ産後うつ病尺度(EPDS: Edinburgh Postnatal Depression Scale)によるスクリーニングが行われます。注記すべきは、このスクリーニングが行われる前ですら、その女性の家族の誰かが既に彼女の気分や行動の変化に気付いていることが一般的であるということです。この自己評価は、うつ病評価のための従来の尺度(例えばベックうつ評価尺度)よりも病理の兆候を示すのに優れてさえいます。このスクリーニングでは、静かな環境で10つの項目について回答し、リスクを評価します。しかし、この評価の難点は重症度を評価できないことです。ですから、臨床評価および判断も非常に重要です。特定の時間をおいてスコアが10を超える場合には、産後うつ病の可能性があります。


何故起こるのか?

何故産後うつ病が発症するのかという理由については完全に分かっていません。しかし、ホルモンの変化、体内の炎症プロセス、劣悪な社会支援システム、ストレスの高い人生のイベント、個人・家族の素因あるいは個人・家族のうつ病・不安症の病歴(特に過去の妊娠中のうつ病があれば最大の指標)、配偶者やパートナーとの関係が悪い、社会支援が低い、そしてストレスの高い人生のイベントや経験といった幾つかの共通のリスク要因があります。

ホルモンの影響 ホルモンの影響

妊娠中は、胎児の成長を支えるためにプロゲステロン値が高く保たれます。エストロゲン値はほとんど一定です。出産の間、体はオキシトシンを生産し陣痛を促し、プロラクチン値が上昇して新生児の授乳が可能となります。オキシトシンは母親と新生児との絆を形成するのも助けます[3]。テストステロン値は妊娠・出産にさほど影響しない傾向にありますが、ある研究では、テストステロンの測定値が高い女性には産後うつ病もあることが分かりました[4]。このような女性たちでは産後の特定の日にテストステロン値が高いままである傾向があり、産後うつ病におけるテストステロンホルモンの影響が示されました。

甲状腺機能も妊娠には非常に重要です。甲状腺値が低いと、うつ病や気分障害のリスクが上昇します[5]。産後うつ病の女性たちではTSH値が高い(甲状腺ホルモン値が低い)ことが分かりましたが、これは特に妊娠中には甲状腺に関する全ての懸念に取り組むことが重症であることを示しています[5]

炎症性変化

産後うつ病で、高い炎症レベルがどのような役割を演じるのかについてのデータは殆どありません。しかし、炎症を評価する1つの方法は、体内のホモシステイン値を見ることです。B1,B6,B9,B12のようなビタミン共役因子は、妊娠の健康的な維持だけでなく胎児の神経システムや臓器の発育のために非常に重要です。ホモシステイン値が上昇する際には、これらのビタミン共役因子のレベルが低下し、それが気分に影響します。ある研究では、産後6週間以内では血中ホモシステイン値が高いことが分かりましたが、これは体内における炎症レベルが高いことを示しています。同様に、産後一週間ではセロトニン値も低くなる傾向にあり、調査対象の母親たちの全体的な気分の低迷と関連性がありました[6]が、これは、新米の母親が経験する産後うつ病の困難を一部説明できるかも知れません。

新しい研究領域では、母親の人生初期のストレスの高い出来事と彼女の後の人生における産後うつ病への傾向についての調査が行われています。ストレスの高いイベントは、本質的に彼女を後の人生における妊娠期間中や産後のうつ病発症にかかりやすくする炎症分子のカスケードを刺激する可能性があります[7]。この研究は、産後うつ病を発症する傾向にある女性たちではどの経路が影響を受けているのかを明らかにするかも知れません。

支援システム

妊娠を経て出産する全ての女性にとって、支援は不可欠な要素です。近親や親しい友人による支援が重要であると同時に、親密な関係やそれによる支援は新米の母親にずっと大きな影響を及ぼします。支えになるパートナーは、新米の母親にバランスが取れていると感じさせるのを助け、彼女の気分やホルモンに肯定的に作用します[2]。しいかし、パートナーとの関係に不和があり、とりわけ暴力や虐待がある場合には、産後うつ病のリスクは著しく増加するでしょう。

個人・家族歴

過去のうつ病の病歴は、産後うつ病のリスクも上昇させます。ある女性が過去に(産後あるいは一般の)うつ病を経験している際、以降の妊娠で再発する可能性が高くなります[2]。更に、家族の誰か-しばしば母親や父親ですが-うつ病や不安症の病歴がある際に、これも母親の産後うつ病のリスクを上昇させるでしょう。


管理 管理

全ての問題に対する自然療法的アプローチは全体的かつ個人的です。自然療法的アプローチでは、身体的、精神的そして感情的な状態を含む健康問題の複数面を網羅します。次は非常に一般的な考慮事項で、効果がもたらされた産後うつ病の女性たちがいることが示されました。

栄養補給

オメガ-3:妊娠中の女性は青魚(例えば鮭や鰯)を1-2サービング、摂取することが推奨されていますが、このような魚は必須脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA: eicosapentaenoic acid)やドコサヘキサエン酸(DHA: docosahexaenoic acid)を含んでいます。他のオメガ-3源には、亜麻仁やチアシードがあります。産後うつ病には多数の要素が携わっているため、魚の摂取は必ずしも産後うつ病の発症を予防するものではありませんが、高いオメガ-3の値は、健康な神経システムや身体を全体的に支える傾向があります[8]。オメガ-3は、気分の調節に影響する炎症の変化にも役立ちます。

SAMe—S-アデノシルメチオンは、体内に十分な葉酸およびB12がある際に元来、体で生産されます。B12はしばしば動物性タンパク質に含まれており、葉酸は中央エネルギーのシステムの健康な発達を支えます。SAMeは酸化、炎症、そして抑うつに対する予防効果がありますが、これらは全て産後うつ病の女性を支えるのに重要です[8]

葉酸:葉酸塩はホモシステインをメチオニンに転換するのを助けます。しばしば産後うつ病の女性たちは低い葉酸値を示しますが、これが更にリスクを高めています[8]。これは、新生児の脳、脊椎、そして神経の健康的な発達を支えるのに非常に重要です。

薬草

セントジョンーンズワート:セントジョーンズワートの活性成分であるハイパーフォリンは抑うつ的症状だけでなく産後うつ病の女性たちにも、一般に良く効くことが示されています[8]

さらに、ラベンダーの抽出液を用いた幾つかの研究の結果によると、睡眠の即時改善、抑うつ的影響の減少、それに加えて疲労の低下がありました[9]

カモミール・ ティーも新米の母親の睡眠の質に良いことが分かっています[10]

生活習慣

運動:ヨガのような穏やかな運動は、監視のない社会支援セッションよりも、産後うつ病の女性たちにより良好な影響を与えることが示されました。毎週20分のヨガをする女性たちは抑うつと不安のレベルがより低かったのです[11]。コルチゾール値も全体的に低下しました。それに加えて、新米の母親に自分の気持ちを書いてもらったところ、産後の抑うつや悩みが減少しました [12]

中国伝統医学においては、産後うつ病は陰陽のアンバランスと考えられており、ですから、それに応じた治療(食事、鍼、そして漢方薬)がそういった懸念に取り組むために適宜個別化して用いられます。全体的に、新米の母親のための自己治療や同居している人たちからの支援は一般に、母親のバランスを保たせる作用があり、心配の重さや深刻さを軽減します。


検討事項

女性の産後うつ病には複数の寄与因子があります。自然療法医学を通して、個別の問題を全体的な手法で取り組み、症状の原因を理解して下さい。あなたの自然療法医や医療専門チームに相談して、懸念に適切に取り組むことが重要です。産後うつ病を経験している女性にとっての一般的な考慮事項は、個人的な懸念に加えて、健康のための支援システムを得る、感じている不快感や課題を認識する、軽い運動、良好な睡眠そして健全な栄養のようなセルフケアの異なる面を奨励するといったものです。