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感染症と健康

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我が家では春以降、病気にかかっていません。幼い子供が2人いて、1人はプリスクールに通い始め、もう1人は幼稚園に通っています。通常、特に1年のこの時期には、多くの人が風邪をひきます。統計によると、幼児は年に810回も風邪をひくといわれています。[i]

 

その一方で、これほど長い間、風邪やインフルエンザにかかっていないので、きっと大丈夫なのでしょう。また、ソーシャルディスタンス(社会的距離)を守るのは難しいかもしれませんが、これによって、ウイルスや細菌の感染拡大が遅れているといわれています。

「衛生仮説」によると、先進国における自己免疫疾患やアレルギーの発症率の増加は、感染症の発症率の減少とかかわりがある可能性があるといわれています。[2] 研究により、生後6ヶ月間デイケアに通うことで、湿疹や喘息の発症リスクが大幅に減少することが示されています[3]また、動物を用いた研究でも、感染負荷が低いほど自己免疫疾患の発症率が高まることが示されています。[4] 基本的に、人類とともに進化した感染性病原体は、様々な免疫疾患から身体を守ってくれます。

Infections and Health特に子どもの場合、免疫系が正常に発達するには、微生物への適度な曝露が必要です。これは、過去10年間における先進国での喘息発症率の増加に表れている可能性があるといわれています。[5]湿疹の発症率も過去30年間において先進国で劇的に増加し、現在、子どもの1530%、大人の210%が患っています。[6]同様に、自己免疫疾患も増加していて、炎症性腸疾患、1型糖尿病、多発性硬化症が増えています。[7] この因果関係は明らかではありませんが、強い相関関係があります

 

現在、世界で10億人以上がアレルギー性疾患を患っていて、この数は、2050年までに40億人にまで上昇するといわれています。[8]主に喘息が多く、あらゆる年齢層において3億人が罹患しています。[9] 動物を用いた研究では、呼吸器系ウイルスの感染により喘息を予防できることが示されています。[10]

もちろん、もっと病気になるべきだといっているわけではありません。病気を避けるのではなく、病気の頻度や強度を減少させて、免疫機能を高め、アレルギー性疾患や自己免疫疾患を予防するように勧めているのです。感染が免疫機能に及ぼす影響を調べた研究では、有益な細菌や微生物叢(体の表面や体内に生息するあらゆる微生物)が、免疫機能の調節に有効であることが示されています。[11]

 

Infections and Health

プロバイオティクス(健康な生きた細菌を含む)は、特に免疫反応を正常に保つうえで役立つといわれています。 研究レビューでは、プロバイオティクスサプリメントを服用している子どもは、気道感染の発症リスクが低いことが示されています。[12]子ども6,000人以上を対象とした23件の試験研究のレビューでは、プロバイオティクスにより、少なくとも一種類の気道感染症の発症リスクが大幅に減少することが示されました。また、プロバイオティクスを摂取している子どもは、デイケアや学校の欠席が少ないことも示されています。

また、プロバイオティクスによって病気を予防できるだけではなく、自己免疫疾患の症状を改善できるといわれています。実験により、プロバイオティクスで腸内の細菌を改変すると、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、狼瘡、多発性硬化症による胃腸の症状と炎症が改善されることが示されています。[13]

 

免疫系のバランスを保つうえで有効なもう一つの天然サプリメントはビタミンDです。主なビタミンDの源は太陽です。研究によると、日光を避けることで、主な死因を占める疾患を患う可能性が高まり、免疫機能にかかわる癌や心臓病の発症リスクが増加することが示されています。[14]現在、私たちは一日の大半を屋内で過ごしているため、一般に、体内のビタミンDのレベルが低下していて、ビタミンD欠乏症の有病率が大幅に増加しています。20098月から201111月に行われたカナダ健康対策調査では、カナダ人の約32%がビタミンD3不足で、ビタミンD325(OH)D3)の血中濃度は、50nmol/L未満でした。[15]

Infections and HealthビタミンD欠乏症は、多発性硬化症、1型糖尿病、狼瘡などの自己免疫疾患に広く見られます。[16] 複数の研究により、ビタミンD受容体が一部の免疫細胞に見られ、ビタミンDが免疫系に影響を与えることが示されています。[17]ビタミンDは、複数の種類の細胞の成長や分化を調節し、免疫反応を調節するのに役立ちます。[18]ビタミンは、炎症に関与する免疫細胞の産生を軽減させ、自己免疫疾患の予防に重要な役割を果たしています。[19]ビタミンD欠乏症により、上気道感染症やインフルエンザの発症リスクが高まることを示す研究結果が数多くあります。[20]学童を対象としたある研究では、ビタミンD12,000 IU摂取すると、インフルエンザにかかるリスクが18.6%から10.8%に減少することが示されました。[21] 一部の専門家が、ビタミンD欠乏症の予防に向けて直ちに行動するよう呼びかけているのは、驚くべきことではありません。[22]

感染に伴う合併症や慢性疾患の発症リスクを最小限に抑えるために、有効な免疫反応を保つことは、間違いなく有益です。衛生仮説や研究により、軽度の感染症を患うことは、アレルギーや自己免疫疾患の予防に役立つことが示されています。また、プロバイオティクスやビタミンDの補給等により、健康を守り、免疫系のバランスを保てることも実証されています。

免疫力を高めるために、健康を左右する主な要素にも注目する必要があります。日頃から運動をして健康的な体重を維持し、喫煙を避け、野菜を多く摂ることで、感染症を患った際に、健康を改善し、健康に悪影響が及ぶリスクを減らせます。[23]