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マグネシウムと人体

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マグネシウムと人体
すばらしいマグネシウム-過小評価されているミネラル
By: Michael Long, ND, BSc
Optimum Integrative Health Centre
#3-855 St David St N Fergus, ON. N1M 2W3
www.ontariohealth.org
dr.long@ontariohealth.org


Magnesium and the Human Body

パートI:マグネシウムと人体

ミネラルは、生物の体を構成し、そして体内環境を調節する化学元素です。体内に全体重のたった4%という小さな割合しか占めていないにも関わらず、その重要性は著しく過小評価されています。実際、生命はミネラルなしでは存在することすら出来ないでしょう。私たちがミネラルと聞く時は、一般にカルシウムや鉄、亜鉛のことが言われています。しかし脇に隠れ脚光の外にいるのは、たぶんそれら全ての中で最も過小評価されているミネラルであるマグネシウムでしょう。人類は益々マグネシウ不足となっていますが、マグネシウムは非常に多数の化学反応や神経筋の経路そして健康な体の総合的な維持に不可欠であるために、問題となっています。

人体は、生命の維持に必要な成分をそれが必要とされる全ての部位に蓄積し濃縮します。マグネシウムは、おおよそ60%が骨に、25%が筋肉、そして残り15%は様々な液体や軟組織に存在しています(1)。軟組織内にあるマグネシウムは、主に脳、心臓そして肝臓のような代謝の活発な臓器に見られます(1)。このことから、恐らくマグネシウムの主な機能は骨と筋肉に関連しており、細胞内で代謝の役割を果たしているであろうと、合理的に推論することができます。

マグネシウムはカルシウムと同じくらい骨と歯の構造を保つのに重要であるかも知れません。カルシウムは骨と同義語ですが、カルシウム過多は良ろしくない可能性があります。カルシウムは骨に硬さを与えるものの、何の柔軟性も与えません。柔軟性の全くない固い骨はチョークと同じことです。固いものの脆くて非常に砕け易いのです。マグネシウムは、骨梁の完全性と骨密度とを改善することで骨に柔軟性を与えるため、極めて重要です(2)。カルシウムとマグネシウムとは腸内で吸収される際に競合するため、どちらか片方が多過ぎるともう片方に欠乏が起こる可能性があります(3)。摂取するカルシウムとマグネシウムの比(4:1)が最高であるフィンランドで骨粗鬆症率と腰部骨折の罹患率とが世界最高であるのは、これが原因かも知れません (4)。

マグネシウムは、骨格筋、平滑筋、そして心筋中の三種類の筋肉細胞中に蓄積します。カルシウムは筋肉収縮に携わる一方で、マグネシウムはカルシウムチャンネルをブロックすることにより反対に作用し、筋肉を弛緩させます(5)。ですからマグネシウムが適量以下の人々には、より大きな筋肉痛や筋痙攣の傾向があります(6)。更に重要なのは、血管を覆っている平滑筋と心臓を覆っている心筋とを弛緩させなければならないということですが、これはマグネシウム欠乏が心血管の健康を損ない(7)、高血圧、卒中や心臓発作のリスクを高める(8)ことを意味します。

エネルギー生産は、マグネシウムの最終的な広範におよぶ生理学的役割です。今日までにマグネシウムは、体内の300以上のATPに関わる酵素反応と関連付けられてきました。より顕著な幾つかの役割は、クレブス回路でのATPの生産、エネルギーを生産のための糖の分解、タンパク質や脂質および核酸といった重要な生化学的構成要素の合成などです(10)。これに基づくと、慢性疲労や代謝欠損の人々にマグネシウムの欠乏が共通して見られることは、恐らく驚きに値しないでしょう。



パートII:十分摂取しているか? Are we getting enough

推奨される一日の摂取量(RDI; recommended daily intake)というのは、各栄養素に割り当てられた適用量で、これにより健康のための必要最低限を満たすのに日々食事で摂取すべき量を規定しています。マグネシウムのRDIは年齢と性別とにより様々ですが、一般に大人のためにまずますの摂取量は400mg/日です(1)。アメリカ合衆国では、人口全体の48%がこのRDIを満たしていません(2)。しかも14-18歳と71歳以上との年齢層では、欠乏のレベルが70%より大きいのです(2)。実際、20世紀を通して行われた試算では、マグネシウムの平均摂取量は漸進的に下落しており、具体的には1900年のほぼ500mg/日から1990年のたった175mg/日への減少を明白に示しています(3)。

マグネシウムの欠乏が問題かどうかというよりは、マグネシウムが欠乏する理由の方が問題です。数え切れない医学や栄養学の謎が存在するものの、これはそういったミステリーの一つではありません。非常に多数の人々がマグネシウム欠乏であるのは、単に彼らが食事で充分にマグネシウムを摂取していないからです。私たちを悩ませている肥満、心臓病そして糖尿病といった慢性病の危機は、ひどい摂食パターンと巷に溢れかえる加工食品で促進されたのです。マグネシウムは主に、全体食品(これは標準的な北米の食事に欠けています)の中や野菜そして全粒などの食品中に存在します。更にマグネシウムは食物が加工される過程で取り除かれます。例えば、白い小麦粉や白いパン製品を製造するために麦から胚芽層を取り除く際に、80%ものマグネシウムが失われます(1)。古代の人々が何世紀もの間行ってきた狩猟採集民(石器時代第二期)のようなタイプの食事は、一日あたりほぼ800mgのマグネシウムを摂取することを可能とするのは言うまでもなく(4)、他の重要な栄養素も多量に含んでいると思われます。

腸内の吸収不良、骨への取り込み不良、そして尿への漏洩など、他の要因によるマグネシウムの欠乏は年齢と共に深刻化し (5)、貧弱な食事を摂取することに関連した問題を倍増させます。脂質の吸収不良(脂肪便)がある人々は、大便中に高い割合で排泄される遊離脂肪酸とマグネシウムとが石鹸を形成するため、特にマグネシウム欠乏の害を被り易いのです(6)。マグネシウム低摂取と対になったカルシウムとリンの高摂取も同様に、腸内吸収のための結合部位で競合を起こし、マグネシウムの血中濃度を劇的に減少させますが(7)、これはバランスの取れた食事を取ることの重要性を物語っています。繊維の高摂取によるミネラル吸収の問題は極めて小さく(8)、高繊維の食事からの恩恵に勝るものはありません。ですから、年配の人や吸収不良症候群、肝臓および腎臓の病気を持つ人は、マグネシウムを始めとする栄養上の欠乏について検査を受けることが推奨されます。

マグネシウムは体内で広範に作用することから、私たち人口に見られるマグネシウムの欠乏率は、それに相応しい深刻さをもって扱われていないと言えるでしょう。そういった一連の状況の最も深刻な側面として、マグネシウム欠乏が人格の変化、幻覚、震え、そして心臓の不整脈と関係することが挙げられます(9)。標準的な米国の食事を摂取する人々には、適量以下のマグネシウムレベルが原因である筋力低下、痙攣、不安、浅眠、PMS、月経困難や不安がより現れ易いことでしょう(6)。マグネシウムは骨の鉱化に重要であるため、長期的なマグネシウムの欠乏は骨粗鬆症の一因となります(10)。既に明らかなことの繰り返しになるかも知れませんが、人間の病気の多くは適切な栄養を日々確実に摂取することにより避けられるのです。



パートIII:マグネシウムを十分に摂取する Achieving an adequate intake of magnesium

主に栄養上の欠乏を扱う上で難しいのは、健康上の成果は長期間かけてゆっくりと現れるという事実に起因します。つまり栄養的に良くない行動に対してマイナスの強化(訳者注:負のオペラント条件付け)が殆どないということです。それというのも、私たちは自分の今日の健康と過去の何年もにわたる累積被害とを関連させない傾向があるからです。もし不健康な栄養状態が直ぐ害となれば、人口全体としての私たちの栄養状態はかなりの確率で今日のそれとはずいぶん違っていることでしょう。これが特にマグネシウムということになると、その重要な生物学的機能はゆるぎなく、そしてその欠乏率が凄まじいことは火を見るよりも明らかです。長期的な健康の問題を防ぐためには、臨床でマグネシウム欠乏を発見することと、欠乏を修正すために栄養を補充することとに、焦点を移行しなければなりません。

食事と健康に関する症状との徹底的な検査は、通常マグネシウム欠乏に向けられる可能性がある一方で、真の診断には血液検査という形の客観的な測定が必要です。面白いことに、検査を受けた多くの人々は相変わらず網の目から抜け落ちています。これは最も一般に使われている検査方法が本当のマグネシウムレベルを良く表していないからです。血液中ではほぼ全てのマグネシウム(99%)が細胞内に見られ、ほんの少しの割合(1%)が細胞外に見られるということは良く知られています(1)。ところが、殆どのラボ検査は、血液中の血清あるいは液体の部分でマグネシウムを測定します。検査対象のものがそもそも探しているものが含まれていないと既に分かっている検体である時に、その検査が劣った指標となるのはお分かりでしょう。ですから、マグネシウムの欠乏を特定する最初の段階ではマグネシウムが実際存在している細胞内を検査するべきです。人は、特に年配の人は、血漿検査よりもむしろ赤血球内試験によって、ふるいにかけられるべきです(2)。

健康な人は、マグネシウムを含む全ての栄養素を必要量摂取するのを確実にするために、日々の栄養の摂取以上のことは気を付けるべきでありません。吸収不良の問題がないと仮定して、大部分が野菜、果物、豆・マメ科植物、健康的な脂肪、そして脂肪の少ないタンパク質で構成されている(加工されていない)全体食品を食事として摂取することにより、全ての必要なビタミンとミネラルが供給されるはずです。このようなタイプの食事である地中海スタイルの食事パターンを堅持すると、栄養欠乏の予防に効果があることが示されてきました(3)。マグネシウムの最良の食品源は木の実、種、マメ科植物、全粒、そして緑の葉野菜です(4)が、その一方で標準的な北米の食事は、肉や加工食品など、マグネシウム源の少ないものの比重が高くなりがちです。

消化吸収に問題のある人は、マグネシウムの貯蔵を満たすために更に手助けが必要かも知れません。まずビタミンDのレベルが十分であることを確実にするのが賢明です。それというのも、ビタミンDはマグネシウム吸収を高めるからです(5)。もしビタミンDによって欠乏が解消されなければ、マグネシウムの補給が必要であると考えられます。

マグネシウム補給には様々な形があり、あるものは他のものよりも優れています。元素マグネシウムが腸で吸収されることはありませんので、マグネシウムは担体分子と結合される必要があります(6)。最も広く手に入るマグネシウムのサプリメントは、無機物、アミノ酸、そしてクレブス回路の中間生成物との結合物です。まず、無機物結合マグネシウム(例えば、酸化物や塩化物)が市場で最も廉価で最も広く入手可能なマグネシウムのサプリメントです。残念ながら、生物学的利用率がたった4%であるため、ほとんど吸収されず、これが急速な下痢を引き起こし(7)、栄養補給というよりは効果の高い緩下剤となります。次に、アミノ酸に結合したマグネシウム(タウリン酸塩、グリシン酸塩)ですが、これは上から中程度の生物学的利用率で、耐容性が最も高く、それゆえに腸が過敏な人々に薦められます。最後に、クレブス回路の中間生成物に結合したマグネシウム(クエン酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩)ですが、これは生物学的利用率が90% (7) と最高で、クレブス回路に直接投入されるという利点があります。クレブス回路はATPを生成しますが、このATPはエネルギーを高め、疲労に対抗することが示されています(8)。



パートIV:補給の一役割とは? A role for supplementation

いくつかの栄養素は、服用量が大きい際に付加的な利点があります。健康を維持する量と生理学的機能を改める量とでは、著しい違いのある可能性がります。このようなことは、病気の過程の治療では良くあることです。マグネシウムについては、大人が健全な機能を維持するための服用量はざっと400mg/日である一方で、何らかの病気を治療するための服用量は静脈内で2000mgまでとされる可能性があります(1)。マグネシウムの許容限界は健康な大人でおよそ経口750mg/日です(2)。このような高摂取量を達成するためにはほとんどの場合、補給が必要です。クエン酸マグネシウムは、多くの開業医の選ぶところのサプリメントとなっています。それというのも、クエン酸マグネシウムはすこぶる生物学的利用率が高く、耐容性が良好で、価格が手頃であるからです(3)。

マグネシウムがもたらす治療上の効果は、マグネシウム本来の生理学的作用に直接関係します。マグネシウムは体の全ての筋肉を弛緩させますが、これは刺激に対して筋肉が過敏であることが根本的原因である全ての状態を、相殺もしくは和らげるのを助ける可能性があることを意味します。例えば、急性心筋梗塞(心臓発作)に続き、病院に到着した最初の一時間以内にマグネシウムを静脈に投与すると、短長期の合併症を改善し、死亡率を引き下げます(4)。これは、冠動脈の平滑筋を弛緩させることにより、血管膨張させ、それが心筋への血流と酸素の供給を改善するからです(5)。

マグネシウムが持つ筋肉の鎮静効果は、臨床で多くの応用があります。喘息では肺を覆う平滑筋が収縮した状態になってしまいますが、マグネシウムはそれを弛緩させるのを助け、細気管支を拡張させより多くの酸素の取り込みを可能にします(6)。マグネシウムは筋肉の緊張や、緊張性頭痛や偏頭痛の発症の原因となる血管収縮を軽減するのを助けます(3,4)。そしてまた、痙攣と月経困難症の女性の子宮筋けいれんを鎮静します(7)。同様な論理が、高血圧、狭心症、下肢静止不能症候群や卒中など他の多くの疾患におけるマグネシウムの治療上の効果を説明するのに応用できます。

カルシウム腎結石形成の病歴を持つ人はマグネシウムの補給を考慮すべきです。カルシウムの溶解度(水に溶ける能力)はマグネシウムによって大きく増加するため、カルシウムが尿を通して流れるのを可能にし、結石形成の広がりと深刻さを減少させるのです(8)。

線維筋痛症は、マグネシウム補給で改善を示した別の症状です。線維筋痛症の患者はしばしば筋肉痛や慢性疲労に関係した症状を経験します。リンゴ酸マグネシウムは、線維筋痛症に最も良く使われる種類の栄養補給です。クレブス回路の中間生成物であるリンゴ酸は、サプリメントとして摂取される時にクレブス回路に直接供給される可能性があると信じられています。これはエネルギー生産を増大させ、線維筋痛症の症状に伴う疲労を改善するのを助けます。臨床試験では、リンゴ酸マグネシウムが筋肉の圧痛を減少させ、線維筋痛症の人々の疲労を改善したことが示されました(9)。

マグネシウムは良好な健康状態を保つのに決定的かつ良く理解された役割を果たします。また、マグネシウムは多数の病的疾患の治療に大いに効果を発揮します。マグネシウムの重要性が明らかであるにも関わらず、私たち人口のマグネシウム欠乏の規模は時間が経るにつれ大きくなるばかりか、それに誰も気付いてすらいないように思えます。このような理由により、マグネシウムは最も過小評価されているミネラルの座に君臨しているのです。