メインコンテンツに移動

スポーツの成績と栄養-包括的手引き

日本語

スポーツの成績と栄養-包括的手引き
By: ミカエル・ロング自然療法医師・理学士
オプティマム統合ヘルスセンター
#3-855 St David St N Fergus, ON. N1M 2W3
www.ontariohealth.org
dr.long@ontariohealth.org



運動選手のエネルギー要件


運動選手のエネルギー要件

もしあなたがスポーツに真剣である、あるいは誰かそういう人を知っているならば、運動選手は多少違う種類の人間であることを既にお分かりでしょう。彼らは人間の生理学の極限を気軽に弄び、それにより生産されるアドレナリンを食い物にします。彼らの成功はしばしば、秒、オンス、インチといった一見ほんの僅かな基準にちょうつがいで留まっています。一つのベンチマークが結局はもう一つのベンチマークを生み出すため、運動選手たちは彼らの進歩に長く満足したままでいることは滅多にありません。運動選手たちは、古い格言“練習が完璧をもたらす”を前に進む動機付けとして用い、より強くより速くなるために絶え間ない努力の状態に常にあります。しかし余暇からエリートまでのどの範囲であろうとも、練習は戦いの半分でしかないでしょう。しばしば栄養不良あるいは栄養不足の状態は、運動選手の身体的パフォーマンスの衰えと関係があるとされています[1]

科学により、栄養摂取に基づき運動能力がどのように変化するのかが明らかにされました。最高のパフォーマンスを達成・維持する運動選手たちは、一貫して活動の燃料とするのに必要なエネルギーを最も上手く供給します[2]。この人たちは、蓄えのエネルギーを、運動競技で成功するために必要な体力と持久力とへ効率的に転換することが可能です。これを達成するために、運動選手たちは最良の種類のカロリーだけでなく正しい量を摂取するよう油断しないよう努めなければなりません。ヒトの体は、その最も単純な物理的レベルにおいては大量の蓄積エネルギーの塊です。私たちはエネルギーをカロリーという形で摂取し、呼吸、循環、動作など、生きるのに必要な全ての機能の燃料とします。このカロリー需要は身体活動で費やされるカロリー数に比例して増加します。ですから、非常に活動的な傾向のある運動選手たちは、平均的な人よりも必要なカロリーが高いのです。何が起こっているかを完全に理解するために必要なのは、(摂取カロリー)-(必要なカロリー)=“純カロリー”という単純な数学の理解だけです。

必要とされるよりも多くのカロリーを摂取する時、純カロリーは正の値を取り、余分なカロリーは将来用いるために脂肪として貯えられ、体重が増加します。必要とされるよりも少ないカロリーを摂取する時、純カロリーは不の値を取り、エネルギーの貯えが減少し、体重が減少します。過剰であろうと不足であろうと、全ての酷い純カロリーのアンバランスは、運動能力を縮小させるような代謝的な影響を及ぼします[3]。ですから、最適な運動のためのエネルギー供給というのは結局のところバランスで、純カロリーが事実上ゼロ、つまりニュートラルな状態で、摂取カロリーが必要とされるカロリーと大体一致するような状態です。運動選手一人一人の理想的な摂取カロリーを決めるのは非常に重要ですが、残念ながらこの記事の範囲外です。一般には、もし体重の大きな変動がなくそれぞれのスポーツで競い合うための十分なエネルギーがあるならば、摂取カロリーは適量です。エネルギーレベルの大規模な不足や過剰を避ける限り、代謝は自動制御する能力があるようです[4]

エネルギー的にニュートラルな状態にあることは、望ましい身体組成にある運動選手にとっては理想的かも知れませんが、体重を増やす、あるいはより一般的に減量したい運動選手についてはどうでしょうか?彼らは、運動能力に影響しないよう注意深くやらなければなりません。極端なカロリー制限を行うと、エネルギーを保持するために代謝が落ちますが[5]、それは体が栄養保持に集中し、身体活動でエネルギーを消費するのを妨げるからです。カロリー制限が終わると、体はカロリーを貯蓄することにより反応しますが、これは結局、体重増加のリバウンドという結果に終わります[5]。ですから、極端なカロリー制限は、運動能力を妨げるだけでなく、一時的な減量しかもたらしません。それとは反対に、大幅なカロリーオーバーの食事により体重増加を求める運動選手たちは、彼らのトレーニングスケジュールがどんなに厳格であろうとも、余分な栄養を望まれる筋肉よりもむしろ脂肪として貯蓄することで、運動能力の衰えという危険を冒します[6]。体重および身体組成を適正にするためのカギは、元々のニュートラルなエネルギー摂取から10-20%以内の増加あるいは減少でそれを行うことです[7]


運動選手たちのための食事ガイドライン 運動選手たちのための食事ガイドライン

一人の運動選手が競技を行う能力は、彼あるいは彼女の体に貯えられているエネルギー基質を結集し、それを筋肉収縮の動力に替える能力により決まります。効率性の観点から、適切な形の十分なエネルギーが身体活動の開始時に容易に利用可能となることが非常に好ましいのです。この必要なエネルギーを供給することに失敗すると、結局は早過ぎる疲労および不良な成績という結果がもたらされます。日々のスポーツ栄養計画は、運動選手一人一人が自分の競技を行うのに理想的なエネルギー源を供給するための方法を探求します。

特定の栄養素の摂取が運動選手に対して推奨されている理由を理解するためには、まずエネルギーが体でどのように使われているかを理解しなければなりません。炭水化物、脂肪そしてタンパク質の3つの主要な高分子は全て、筋肉のエネルギー源となる可能性があります。どんなときでも、ブドウ糖と呼ばれる糖は血流中を流れて骨格筋に集まってゆきます。身体活動が始まると、この自由に循環している糖が筋肉に、それが疲弊するまでの60-120秒(運動選手のフィットネスによる)続く期間中、直接、エネルギーを供給します[8]。この時点から体はそのエネルギーを、炭水化物、脂肪およびタンパク質の蓄えから解放し、酸素の存在の元で燃やすことにより作り出さなければなりません。エネルギー生産のために体が使う基質は運動の激しさに応じて変わり[9]、運動の激しさが増すにつれて炭水化物への依存がより高くなります[10]。運動選手がその最大アウトプットの85%に達するまでに、エネルギーの三分の二以上がブドウ糖によりまかなわれ、残りは長期脂肪貯蓄により供給されます[11]

運動の世界では、ほとんど不公平なほどにタンパク質の筋肉増強における役割が強調されています。実際には、タンパク質はエネルギー生産のためには、もっとも重要でない栄養上の基質で、激しい運動中には総エネルギーの3-5%といったほとんど無視できる量を供給します[12]。合意されている運動選手の一日に必要なタンパク質は、体重1kgにつき1.5グラムで[13]、プロテインシェイクといった高タンパク食を定期的に摂取している人たちはかなりの摂取過剰であることを意味します。余分なタンパク質は、一般に信じられているようには筋肉増強経路に入らず、その代わりに将来に使うために脂肪として蓄積されるか、高い代謝負担で腎臓により排出されます[13]。どのみち、極端なタンパク質過剰は障害であり、運動能力に良いことはありません。一人の運動選手は、毎日おおよそ1.0-1.5g/kgのタンパク質を摂取するよう努めるべきですが、これは一日の総カロリーの10-15%です[13]

スポーツ栄養の真のスーパースターは炭水化物です。炭水化物は、運動選手のエネルギー生産に使われる主要な基質で、ですから調整の良く取れた運動選手が摂取するべき主要な栄養素です。運動選手一人一人に必要な一日の炭水化物量は、運動の種類により様々で、その需要は耐久性や激しさに伴い増大します。スポーツ栄養最適化は、エネルギー摂取とエネルギー消費とを厳密に適合させようとするため、運動選手の炭水化物摂取は注意深く計画されなければなりません。軽度から中程度の激しさの運動は、一日5-7g/kgの摂取を必要とする一方で、持久性の高い運動では7-10g/kg必要で[14]、これは一日総カロリーの55-70%を占めます。競技会の前に十分の炭水化物が利用可能であることを確実にすることが、運動の最大アウトプットを維持するための唯一で最大の因子です。高脂肪食を摂取した運動選手たちはパフォーマンスのピークを57分維持することができると考えると、脂肪および炭水化物の混合の食事を摂取した選手たちでは114分にまで上昇し、高炭水化物食を摂取した選手たちでは167分という高みに君臨します[15]。運動選手は、全ての利用可能な炭水化物が底を突くと“頭打ち”となりますが、これは筋肉および脳の機能に燃料を供給するためのエネルギーが何も残っておらず、精神的および身体的の両方で、活動を続けることが不可能となることを意味します。

脂肪組織は体の長期的エネルギー貯蓄を現しています。最も痩せている運動選手でさえ、50,000-100,000カロリーの大量の脂肪を貯蓄しており、これは理論的に一人の人を2000 km近く燃料補給することなしに維持するのに十分です[16]。紙の上では、脂肪は活動のための完璧な燃料源であるように見えますが、残念なことに運動が必要とする高い代謝需要に追いつくには遅すぎる速さで代謝されるため、高脂肪食が運動能力にプラスの効果を与えるだろうということを示唆するエビデンスはありません[16]。しかし、身体的フィットネスが改善するにつれ、遊離脂肪をエネルギー基質としてより上手に用いることに運動選手の体が適応します[17]。総カロリーの20-25%を脂肪から摂取することは、最適なパフォーマンスのエネルギー源に十分です。


運動選手たちのための栄養上のタイミングおよび食物の選択 運動選手たちのための栄養上のタイミングおよび食物の選択s

一旦、運動選手が彼らの活動のための最適な燃料供給に必要なエネルギーの量および割合について良く理解したら、これらの必須条件を満たすための戦略を実行しなければなりません。適正量のカロリーを摂取することがパフォーマンスのピークを達成するのに最も重要な因子であることを示す十分なエビデンスが存在する一方で[18]、最良の種類のカロリーを正しいタイミングで摂取することは、パフォーマンスの最適化で確実に大きな役割を果たします。毎日の食事パターンは運動のエネルギー対価を満足させるのを目的としていますが、運動に至るまでとその最中および直後で、注意深く増やしてゆく必要があります。

前で議論したように、日常的にそして特定の活動のレベルに応じて、運動選手はエネルギーのニュートラル状態を達成するために、ざっと55-70%を炭水化物、20-25%を脂肪、10-15%をタンパク質という割合に従って、正しい総カロリー数の食事摂取をすべきです。何よりもまず、運動選手たちはこれらのカロリーを、一日を通した少量で頻繁な食事摂取に、均一に拡散すべきです。ある研究では、カロリーを均一に拡散する人たちは、総カロリーが全く同じで、一食の食事量が大きく、より頻繁でない食事摂取をした人たちよりも、パフォーマンスの劇的な改善を経験することが示されました[19]。顕著な改善には、より高い体力、より高い持久性、脂肪のない体への変化、体脂肪減少といったものがあります[20]

“理想的な”食事摂取を構成する食品が何であるかについての合意はまだほとんどありません。10人の専門家に尋ねると、確実に10の異なる意見が返ってくるでしょう。しかし、運動選手たちの体は非常に高い対価に取られているために、可能な限り健康に良い栄養素で燃料を供給するのが第一の優先事項となるべきでしょう。“地中海式食事法“と同様に抗炎症全体食事法は、短期的損傷および長期的な慢性疾患の発展を防ぐ上に[22]、確固とした栄養上の基礎をもたらすことが示されました[21]。炎症性筋肉痛および関節痛は運動選手をあまねく冒しています[23]ので、炎症反応を減少させるような方法で体に栄養を供給するのは良いことずくめです。抗炎症食を実践することについての膨大な文献が存在します。抗炎症食では一般に、加工食品、赤肉、ジャガイモおよび乳製品を避け、そして鮮やかな色の果物および野菜、脂肪のない肉および魚、全粒穀物、オリーブ油およびココナッツ油、ナッツ、種子類、豆類そして料理用香料を奨励しています[21]

運動選手たちは、栄養補給が直ちに身体活動につながることに対してより懸命に集中しがちで、毎日の摂食行動に対してはあまり注意深くありません。活動のエネルギー源となる栄養の蓄えは、身体活動セッションの(直前やその最中でなくて)合間にされるときに最も効率良く働くことから、このような不注意の代価は高く付くかも知れません [24]。多くの運動選手は、活動のエネルギー源となるブドウ糖の利用可能性を最大化するために、目的のはっきりした“炭水化物積み込み”プログラムに参加することであると思われますが、このブドウ糖は多くの人たちにとってパフォーマンスのブースターであることが分かっています[25]。それでも、トレーニングや競技会前の数時間での栄養上の微調整は、パフォーマンスに影響します。イベント前の食事は、競技会の1.5-2時間前に摂取すべきで、糖の貯えを飽和させるために200-300グラムの消化されやすい炭水化物で構成されていなければなりません。食物繊維、脂肪やタンパク質が多く含まれる食品は全て胃部を空にするのを遅らせることから、競技中の筋けいれん、酸の逆流、吐き気や嘔吐を防ぐために、競技が終わるまで避けるべきです。運動競技中に良く消化される傾向にある食品には、パスタ、果物、野菜ジュースやパンがあります。言うまでもないことですが、トレーニング中に徹底して試したことのない食品は、競技会の当日には絶対に摂取してはいけません。

運動選手にとって競技中は、全ての厳しい練習の収穫の時です。短時間のスポーツでは、イベント前の栄養戦略は、大半の運動選手にとって最適なエネルギー出力を維持するのに十分です。しかし、消耗運動では、ジェルやスポーツドリンクという形での炭水化物および電解質の追加的エネルギー補給が、競技のアウトプットを維持するために必要となるかも知れません。運動後、運動選手たちは糖分を使い尽くしており、補充を必要としています。しかし、大半の運動選手たちは食欲不振のために、イベント後の十分な回復を2.5時間遅らせてしまい[26]、翌日の苦痛が悪化します。運動後の理想的な食事は、炭水化物およびタンパク質の両方を含み、枯渇した糖の貯えを補充し、筋肉の回復を改善します[27]。1.0g/kgの炭水化物および0.1g/kgのタンパク質から構成される一食は、食欲の許す限り、運動後なるべく早く摂取すべきです[28]


水分補給および強壮補助 水分補給および強壮補助

生き物には水が必要不可欠であることは誰もが知っています。水は、身体活動を可能にしている体内のほぼ全ての生理学的プロセスの基礎です。水は血液量を維持し、酸素および栄養を筋肉に運び、関節や肺を滑らかにし、そして私たちを過熱から守ります。それにもかかわらず、運動選手の大半は、運動の前、最中そして後に水を十分に取っていません[29]。水は身体活動にきわめて重要であるために、表面上は取るに足らないような水分量の低下ですらパフォーマンスを大きく妨げる可能性があります。2%というわずかな水分減少で、心血管のアウトプットと体温調節システムとが弱まるために、運動のための生理学的能力は妨げられます[30]。衰えのレベルは脱水の大きさと共に明らかに激しくなります。

運動選手の脱水の問題は、人体における長期的水分貯蓄システムの欠如と喉の渇きの感覚についての誤解とが原因で起こります。喉が渇いたと感じるのは、一般に信じられているような脱水を待つ間の兆候ではなく、むしろ実際の脱水の兆候なのです。受容体は、血液量の減少から来る血圧の低下といった身体上の情報を集めますが、これらの情報は脱水として解釈され、脳に“喉の渇きの信号”を放出させます。運動選手たちは、安静のときよりも水の貯蓄をずっと速く消費するため、喉が渇いたと感じる時までに、動きを止めることなく完全に水分補給をすることができない可能性があります。運動選手たちは、競技会の間に水分補給が多過ぎあるいは少な過ぎにならないよう、水分摂取の練習をする必要があります。実際に必要な水分の要件は、個人のニーズおよび行うスポーツの種類に大きく依存するため、一般的な水分補給の手引きを定めることは難しくなっています。しかし、全ての運動選手たちは、競技会の1.5時間前に大量の液体を摂取して完全に水分を補給し、競技中は水分損失と同じペースで液体を摂取し、そして運動の間に失われた体重1ポンド(0.454kg)あたり500-600 mlの水を補給すべきです[31]

スポーツ栄養で最も議論があるのは、間違いなく、運動選手のパフォーマンス能力を高めるサプリメント、あるいは強壮補助の使用に関する問題です。サプリメント業界は、彼らの製品を運動選手たちが使うよう説得するために、多額のお金を費やしました。スポーツにおける補給のエビデンス実際のレベルは、この業界が私たちを信じさせていたレベルよりもずっと劣っており、多くの利益は運動選手たちがカロリー摂取を押さえているという事実に帰するもので[32]、サプリメントは単に、運動選手を理想に近いエネルギーレベルで活動させるだけのものです。言うまでもないことですが、高価なサプリメント法よりもずっと安価なエネルギー要件を満たすような選択肢が存在します。

明確な利点が明らかになった強壮補助のいくつか:
1.    炭水化物および電解質-トライアスロンやマラソンのような消耗運動の間、エネルギーの貯えが使い切られ、電解質は汗で失われます。運動選手たちはこれらの損失を活動中に補充してパフォーマンスを維持しなければなりません。炭水化物および電解質摂取は、疲労の進行を遅らせ、エネルギーの貯えを維持するためにに明らかな利益があります[33]
2.    必須脂肪酸-オメガ3脂肪は文献により十分な裏付けられた抗炎症の力があり、体内の炎症プロセスを軽減することが示されています[34]。激しいトレーニングは継続的な身体上外傷をもたらすことから、運動選手たちは高い炎症負荷を持つ傾向があり、これはパフォーマンスに影響し、より怪我し易く、慢性疾患の発症を導く可能性があります[35]。運動選手たちはこのリスクを相殺するために、2:1のEPA:DHAを2g摂取することが推奨されます。
3.    分岐鎖アミノ酸(BCAA’s: Branched Chain Amino Acids)はかつて、トリプトファンの血液レベルを上昇させることにより疲労を軽減すると考えられていましたが、その後、複数の研究によりこれは間違いであることが示されました[36]。しかし、トリプトファンは活動中の筋肉の損傷を減少させ、運動後の筋肉の回復を改善することが示されました[37]
4.    Lカルニチン-耐久イベントではエネルギーの貯えのより大きな部分を使うことのできる運動選手たちの競技能力が上がります。Lカルニチンは、脂肪をより簡単に使用可能なエネルギー基質にすることで、運動能力を補助することが示されています[38]。さらに、筋肉の回復や免疫機能の改善といった利点があります[39]