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妊娠中の脚の腫れと静脈瘤を軽減するには

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妊娠中の脚の腫れと静脈瘤を軽減するには

自然療法の視点

Sarah Zadek 自然療法医

Upper Beach Health & Wellness

1937 Gerrard St E

Toronto, ON, M4L2C2

妊娠に伴い、体内の循環が大きく変化します。それは当然なことで、胎児やその周りの体液によって体重が増加すると、臓器や壁の脆い静脈などにより圧力がかかります。血液量も増加し、これによって腫れや静脈瘤、痔核が生じる可能性があります。

妊娠中の女性の約40%が、少なくとも上記の一つを経験していて、妊娠初期から症状が現れ、妊娠後期により著しくなる可能性があります。[1]特に一日の大半を立って過ごしている場合、夕方頃や時間が経つにつれて、下肢に痙攣や痛みが生じ始めます。その他の症状には、痺れやチクチクする痛み、重い痛みがあります。[2]

妊娠が循環に与える影響とは?

まず、静脈と静脈弁の構造や機能を理解することが重要です。血液の逆流を防ぐために、静脈には弁があります。この弁が弱まると、静脈は、重力に逆らって中にある血液を前方や上方に移動させ続けられなくなり、静脈内に血液が溜まる可能性があります。静脈の壁が伸びて垂れ下がると、静脈が拡張します。こうして静脈内に血液が溜まると、下肢の循環に大きな問題が生じます。

妊娠中には、胎児によって骨盤内の圧力が増加し、痔核や外陰静脈瘤が生じることが多いですが、脚の静脈は、より重力に逆らって働かなければならないため、最も影響を受けます。[3]

Reducing Leg Swelling and Varicose Veins in Pregnancyもちろん、妊娠中の循環障害は様々な要因で生じ、子宮の重量増加の他、血液量が増えることでも静脈により圧力がかかります。プロゲステロンには、血管壁の筋肉を弛緩させる働きがあるため、プロゲステロンレベルの上昇によっても循環障害が生じます。[4]

下大静脈(IVC)に過剰な圧力がかかると、静脈圧に影響が生じる可能性があります。IVCは血液を下肢から受け取り、心臓に戻します。そのため、IVCが圧迫されると、下肢の静脈圧がさらに上昇し、静脈瘤のリスクが高まります。 [5]女性が左を向いて横たわるのを好むのは、このためかもしれません。IVCは右側を上行していて、左側を通る、より壁が厚くて筋肉質で、圧縮に対して抵抗力がある大動脈と比べ、不快に感じる可能性があります。

こうした違いにより、症状がまず右側に現れることが多く、最初に右足首や右足の腫れに気付く可能性があります。[6]

Reducing Leg Swelling and Varicose Veins in Pregnancyこのような循環障害により「静脈不全」や下肢浮腫が生じる恐れがあり、水分が過剰に溜まることで組織に腫れが生じます。静脈に溜まった血液は、静脈から足首や下肢の周囲の組織に押し出されます。

脚の腫れと静脈瘤を予防・治療するには

圧迫ストッキング

長いストッキングや足首ソックス、膝ソックスは、段階的に圧力がかかるように設計されていて、足首が最もきつく、脚を身体に近づけながら上げると、徐々に緩くなります。こうした段階的な圧迫により、逆圧が加わり、心臓に血流が促されます。

ある研究によると、妊娠中に圧迫ストッキングを着用すると、表面の静脈瘤を完全に除去できなかったにもかかわらず、脚の循環障害が大幅に改善されたことが示されました。[7] また、大伏在静脈の逆流の発生率も大幅に減少しました。[8]

別の研究では、妊娠中に圧迫ストッキングを定期的に着用すると、全く着用しなかった場合や頻繁に着用しなかった場合と比較して、脚の痛みが軽減し、生活の質が向上することが示されています。[9]

圧迫ストッキングは大きく進歩し、スポーツソックスからタイツ、パンストまで、様々な生地や色、スタイルから選べるようになりました。これにより、日常的に着用しやすくなりました。

ウォーキング

ウォーキングは下肢の疲労と腫れに効果があります。一般に、ウォーキングにより、脚の骨格筋が圧迫されて、より静脈血が上行します。一方、立っている場合、血液が重力に逆らって上行するには、下肢の筋ポンプ作用が必要になります。妊娠中の女性にとって、ウォーキングは衝撃が少なく穏やかな運動です。軽いウォーキングは、有酸素運動になるだけではなく、下肢や全身の循環を促します。長時間座っているのなら、立ち上がって短い距離を歩くことで(部屋を横切るなど)、腫れや下肢の重みに十分効果があります。

Reducing Leg Swelling and Varicose Veins in Pregnancy水浸法

歴史的に、水療法(ハイドロセラピー)が治癒を促すために用いられてきました。水は、腫れを軽減させる冷湿布としても、組織の弛緩や血流の増加を促す温湿布としても、物理的な適用に十分な温度を保てます。水浸法は、脚を重力から解放し、脚の循環が変化することから、治療の選択肢として数多くの可能性を秘めています。

これは様々な方法で行うことができます。まず、腰や胸まで水に浸りながら立つだけでも重力を緩和できます。効果を高めるには、脚を水に浸した状態で水中を歩くと、脚の筋肉が収縮して余分な圧力がかかります。さらに、「アクアフィット」クラス(自分の身体能力に合った)に参加すると、水の中に全身浸りながらより筋肉を使うことで、循環により効果があります(妊娠中に適した運動でもあります)。上記はすべて、妊娠中でも安全で、体力に合わせて選べます。

ある研究では、20分間、水の中で立ったり歩いたりすることで、脚の腫れが大幅に減少することが示されました。[10]

その他、2件の研究において水浸法について調査されました。そのうちの一つでは、45分間のアクアフィットにより、脚のボリュームが大幅に減少することが示されています。[11] もう一方の研究では、妊娠後期に20分間脚を水に浸すことで、下肢浮腫が軽減されることがわかりました。[12]

リフレクソロジー

ある研究において、2種類のリフレクソロジーについて調査したところ、妊娠中にリラックスしながらリンパ・リフレクソロジーを行った場合、休息のみの場合と比べて、脚の症状、特に下肢浮腫が大幅な減少しました。また、リンパ・リフレクソロジーのグループは、休息のみのグループとは対照的に、治療に満足していました。[13]

休息

前述したように、妊娠中に体が変化しても、脚の症状を軽減し、血行を改善するのに役立つ手段がありますが、立ったり座ったりして姿勢を変えることは、依然として有効です。例えば、多くの場合、長時間立ちっぱなしでいると、症状が悪化し、静脈不全が加速します。運動したり脚を上げたりしながら休息しましょう。上記の水浸法に関する研究では、「脚上げ」についても調査され、妊娠後期に脚を20分間上げたところ、水浸法と同様に下肢の腫れが軽減することがわかりました。[14]

結論

薬物療法や手術など、他にも数多くの選択肢がありますが、こうした治療法は妊娠中には適さない場合があります。一方、水浸法やリフレクソロジー、脚上げ、圧迫ストッキングを着用したウォーキングなどのエクササイズは、妊娠中の下肢の循環障害を軽減および治療するうえで、すぐに実行できる安全な手段です。また、立ちっぱなしを避け、姿勢を変えることも大切です。

References

1                   Smyth, R.M.D., N. Aflaifel, and A.A. Bamigboye. “Interventions for Varicose Veins and Leg Oedema in Pregnancy.” The Cochrane Database of Systematic Reviews, No. 10 (2015): CD001066.

2                   Smyth, Aflaifel, and Bamigboye, op. cit.

3                   Smyth, Aflaifel, and Bamigboye, op. cit.

4                   Smyth, Aflaifel, and Bamigboye, op. cit.

5                   Smyth, Aflaifel, and Bamigboye, op. cit.

6                   Benninger, B., and T. Delamarter. “Anatomical Factors Causing Oedema of the Lower Limb During Pregnancy.” Folia Morphologica, Vol. 72, No. 1 (2013): 67–71.

7                   Thaler, E., et al “Compression Stockings Prophylaxis of Emergent Varicose Veins in Pregnancy: A Prospective Randomised Controlled Study.” Swiss Medical Weekly, Vol. 131, No. 45–46 (2001): 659–662.

8                   Thalet et al, op. cit.

9                   Allegra, C., et al. “Acceptance, Compliance and Effects of Compression Stockings on Venous Functional Symptoms and Quality of Life of Italian Pregnant Women.” International Angiology, Vol. 33, No. 4 (2014): 357–364.

10                Smyth, Aflaifel, and Bamigboye, op. cit.

11                Hartmann, S., and R. Huch. “Response of Pregnancy Leg Edema to a Single Immersion Exercise Session.” Acta Obstetricia et Gynecologica Scandinavia, Vol. 84, No. 12 (2005): 1150–1153.

12                Khedr, N.F.H., and R. Hemida. “Effect of Leg Elevation versus Water Immersion on Leg Edema in Third Trimester of Pregnancy.” IOSR Journal of Nursing and Health Science, Vol. 5, No. 6 (2016): 1–9

13                Smyth, Aflaifel, and Bamigboye, op. cit.

14                Khedr and Hemida, op. cit.