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不眠症

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不眠症-GABAに基づいたサポート
By: Aoife Earls MSc, ND
Trafalgar Ridge Chiropractic and Acupuncture
2387 Trafalgar Rd, Unit 7A
Oakville, ON. L6H 6K7
www.draoife.com
info@draoife.com


Insomnia and the Potential of GABA Therapy


パートI:不眠症とGABA療法の可能性

不眠症は入眠や持続した睡眠の不能のことですが、これは物理的および精神的にストレスが大きいだけでなく、心臓病、卒中、糖尿病そしてうつ病のリスクを高めることが立証されています。不眠症は、複雑な問題で、エピネフリン過剰やセロトニンおよびメラトニンの欠乏というような神経伝達物質の不均衡だけでなく、ストレスホルモンにも影響されている可能性があります(1)。

今まで、最も終始一貫して効果的な睡眠サポートは、ガンマアミノ酪酸またはGABAと呼ばれる脳内の神経伝達物質と関係しています。低レベルのGABAは、うつ病、不安、そして不眠症の一因となることが示されました(2)。バルプロ酸、ゾルピデムのようなベンゾジアゼピンと呼ばれる薬剤は、GABA受容体に結合し、脳内でGABAの作用を模倣し、不安軽減と鎮静作用とを引き起こします(1)。数々の研究でも示されましたが、これらの薬剤には習慣性があり、必要でなくなった際にやめるのが難しく、そして日中相当の眠さを引き起こす可能性があります。この記事では、GABAサプリメントだけでなくL‐テアニン、パッションフラワーのような、非製薬GABAサポートの介入について検討しますが、GABAは処方薬のような副作用なしに睡眠を助けることが可能です。

紅茶や緑茶に含まれているアミノ酸化合物の一つL-テアニンは、神経システムを鎮静する力があります。ですから、睡眠障害だけでなく不安、てんかん、そして震えに対しても、GABA受容体との相互作用による効果を与えます(3)。この効果を得るために毎日10-12杯のお茶を飲むよりも(というのも、お茶のカフェイン成分が睡眠への効果を打ち消すかも知れないからです!)、L-テアニン補給に素晴らしい可能性があることが、動物と人間の研究で示されました。

動物実験では、L-テアニンは脳内のGABAレベルを上昇させ (4)、カフェインが睡眠に及ぼす作用を打ち消しさえする可能性があることが示されました。同様に、L-テアニンはGABA経路だけでなく、脳の他の部分にもアクセスすると信じられています。人を対象とした研究では、L-テアニンは睡眠誘導と睡眠の質とに効果を及ぼすことが示されています。ADHDおよび睡眠困難の青年93人を対象とした最近のある研究では、毎日400mgのL-テアニン補給を受けた男の子たちは、休息が得られる睡眠および全体としての不眠の度合いに80%の改善を経験しました。L-テアニン補給が低コストであることを考慮すると、これは睡眠サポートのためにやる価値のある療法を代表しているかも知れません。

GABA療法の次の節では、ハーブの介入、特にパッションフラワーのエビデンスを吟味しますが、パッションフラワーはそのリラクゼーションおよび鎮静作用を高める力により、薬草医たちにより長い間用いられてきたハーブです。



パートII:不眠症のためのGABA療法:パッションフラワーの効果

GABA Therapy for Insomnia: The Effects of Passionflower

不眠症のための製薬薬剤についての主な不満の一つは、朝の二日酔いのような感覚ですが、これは日中に働くことについての不能、記憶障害、そして通常のレベルでの精神活動の不能などに寄与します。Passiflora incarnataとしても知られるパッションフラワーは、鎮静剤の副作用がないにも関わらず不安感を軽減し睡眠を促進するその能力で長い間知られてきたハーブの一つです(1)。不安は不眠症と密接に関連しており、そしてしばしば不眠症の一因となっていますが、GABA経路により不安と不眠との両方が軽減されます。それに加えて、パッションフラワーがGABA脳情報伝達システムを調整するその能力に関して、ストレスの多い状況に置かれた動物モデルでの調査を行ったところ、GABAシグナリングが増加することが示されましたが、これはストレスからの回復力と関連があります(2)。

人間では、不安症の患者60人を対象とした試験において、500mgのパッションフラワーを服用すると不安を著しく軽減し何の副作用も報告されないことが分かりました(3)。別の研究では、パッションフラワーは、鎮痛剤として使われる習慣性の強い薬であるアヘン剤を服用していた人々を徐々にそれから引き離すために用いられました(4)。アヘン剤使用中止過程の副作用は不安と不眠ですが、この研究でパッションフラワーは、禁断を緩和する抗不安剤であるクロニジンという薬剤と同じくらい効果的に禁断症状をコントロールしたのです(4)。この研究および他の研究では、パッションフラワーは、麻薬からの解毒期間中の短気や不安の症状に対して著しい効能がありました(4,5)。

これは、麻薬の解毒を助けるパッションフラワーの能力を示していますが、しかしパッションフラワーは睡眠を促進するのに用いられる薬剤とどのように比べられるでしょうか?

人間では、ある研究において、パッションフラワーのお茶を軽い不眠症に対して一週間使用しました。パッションフラワーのお茶を摂取した被験者たちでは、鎮静作用のない普通のハーブティーを摂取した人たちと比較して、睡眠の質が全体的に改善しました(6)。更に、自然療法的な用途の範囲内では、パッションフラワーは単独で用いられるよりもむしろ、しばしば他のストレス軽減・鎮静ハーブと組み合わせて処方されます(7)。これは、複数のバーブ同士の共働作用を引き起こす可能性があります。例えば、最近のある研究では、バレリアンおよびホップと共にパッションフラワーを含んだ処方についての効果を調査しました。睡眠剤のゾルピデムと比較して、このパッションフラワーの処方は、全睡眠時間、(睡眠潜時と呼ばれる)入眠までの時間、毎夜の目覚めの回数、そして不眠症のつらさの評点において、同等の改善を見せました(8)。

この情報を踏まえると、睡眠障害に悩んでいたりストレスの多い時期を経験していたりする不安傾向のある人々にとって、パッションフラワーは効果のある薬剤であるようです。



パートIII:GABA補給

GABA Supplementation

ガンマアミノ酪酸(GABA: gamma-aminobutyric acid)自体はサプリメントの形で入手可能ですが、これは脳内のGABAレベルの低下(これは不安や不眠の患者に起こります)に悩んでいるかも知れない人たちに、この重要な情報伝達化学物質を供給するのに用いられます。同じくGABAの補給は、体がストレスを扱ったり、ストレスからより効率的に回復したりするのも助けます。このパートでは、GABAを直接補給することの利点について検討します。

ある小規模な研究では、25mgのGABAをチョコレートに添加した上で13人の被験者にストレスの多い数学のテストを受けてもらい、GABAの効果を調べました。被験者の心拍数と、唾液中のストレス反応マーカーであるクロモグラニンA(CgA)のレベルとがストレス反応評価タスクの前後で測定されました。GABAの補給により、体はストレスの多いイベントからより早く、心拍数とCgAレベルとのより早い正常化を伴いつつ、回復しました(1)。

この研究では更に踏み込んで、ストレスの多いイベントにさらされる人々における、GABA補給の脳波パターンに及ぼす影響が調査されました。別の研究では、被験者100人が2つのグループに分けられ、半分は100mgのGABAを与えられました(2)。被験者の脳波と、ストレスを受けている間の免疫機能の尺度である唾液中IgA抗体とが、このグループがストレスにさらされる前後で測定されました。GABA補給を受けたグループでは、脳テストにおいて免疫機能改善を示すより高いIgAおよびα波増加の両方が見られましたが、これは嗜眠のない平静さと関連があります。これらの効果はGABAを摂取してから1時間以内という早さで見られました。同様の結果は、別の研究グループで繰り返されましたが、この調査ではGABA補給が、(計測された脳波パターンの通り)脳を鎮静し、IgAを増加させ、ストレス回復を高めかつ速めました(3)。

神経システムの沈静化にGABA補給が親和性を示したいくつかの研究においても、「GABAは実際に睡眠を改善することが可能か?」という問いが残ります。ある研究では、不眠症患者18人を対象に、他のいくつかのアミノ酸と組み合わせたGABAの処方について調査しました。プラセボと比較すると、GABA処方により、眠りに付くのにかかる時間の減少、夜間を通した睡眠時間の増加、睡眠の質(心拍数により確認されたより深くより休まる睡眠)の改善、そして疲労および“ふらふらする“感覚の減少といった、数々の著しい改善がもたらされました(4)。

結論として、GABAおよびL-テアニンやパッションフラワーは、脳内のGABA情報伝達系を調整することを通して、ストレス、不安、そして不眠の症状を、緩和することを示しました。パートIVでは、これらの不眠症に有望な天然薬剤の服用量と組み合わせとについて見てゆきます。



パートIV:天然睡眠薬であるL-テアニン、パッションフラワー、GABAの相乗効果

Synergy Between Natural Sleep Agents L-theanine, Passionflower, and GABA

このシリーズの前述3つのパートでは、睡眠薬が作用するのと同じ系である、GABA情報伝達系を調整する薬剤のうちの、過剰な鎮静作用、記憶障害およびベンゾジアゼピンのような習慣性のない、いくつかの非製薬睡眠増強剤の使用を支持するエビデンスを概観しました。

私たちの議論では、L-テアニン、パッションフラワー、そしてGABA補給の3つの介入について考察し、それらが睡眠に関して次の事柄を達成することを示しました。

  1. 1.L-テアニンは、鎮静作用および不安を軽減する力がありますが、しかし眠気は誘発せず、その代わりに認知機能と集中力とを改善する力があることを示しました(1-2)。
  2. 2.パッションフラワーは、GABA経路を調整し、不安を軽減し、ストレスからの回復を改善し、薬物中断を助け、そして軽い鎮静作用があり、更に他のハーブや栄養素との組み合わせで最も良く作用する可能性を持ちます(3-5)。
  3. 3.GABA補給は、ストレスを扱う体の能力を高め、免疫機能を含むストレスからの回復力を高め、落ち着きと関連する脳波パターンを促し、そして睡眠を促進します(7)。
上記の睡眠および不安の介入の服用量に関する予備的なガイドラインは次の通りです。
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介入 服用量 昼、夜または両方?
L-テアニン 毎日100-200mgを朝夕二回 日中と夜に服用可能、それほど鎮静作用は強くない
パッションフラワー 毎晩お茶1杯またはハーブのカプセルで500mg 不安に対しては日中と夜に服用可能、ストレスの多いイベントの少なくとも1時間前に服用
GABAサプリメント 100-200mg 毎晩就寝前

典型的には、睡眠サプリメントはいくつかのハーブや栄養素の組み合わせを用います。検討した3つの薬剤は、第一選択のうちの3つですが、それらは包含的ではありません。他のGABA経路に影響を及ぼす薬剤には、バレリアン、カヴァ、カモミール、そしてアミノ酸のトリプトファンといったものがあります。

それに加えて、GABA経路に対して特に影響を及ぼさない他の薬剤でも、例えばメラトニンがそれ特有の脳受容体に作用したり、5-HTP(訳者注:5-ヒドロキシトリプトファン)がセロトニン受容体に作用したりするように、睡眠パラメターに対して効能があるかも知れません(7)。異なる情報伝達経路を通して作用する薬剤が組み合わさる際には、潜在的な付加的効能や相乗効果がもたらされる可能性があり、それら個々の作用を超えた効能があるかも知れません。不眠は多因性の問題であることから、実際、このような相乗効果がしばしば起こります。

不安や不眠に悩む人たちは、彼らの問題に対するナチュラルな解決法が存在し、それらの代替法が、習慣性のある強い睡眠薬への依存を避ける手助けとなる可能性があることを認識すべきです。不眠の領域の研究は進化していることから、脳の神経化学を圧倒するよりもむしろ釣り合いを再度保たせるというその力により、ハーブと栄養を基礎とした柔らかな介入について、研究は続けられるでしょう。