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睡眠と免疫系 - 自然療法の視点

日本語

Chelsea Azarcon自然療法医

 

 

 

 

睡眠では、まるで息の合ったオーケストラ演奏のようなことが起こります。脳領域が協調して機能し、神経伝達物質と呼ばれる光と化学物質のメッセンジャーの合図により、ある領域はオンに、ある領域はオフになります。しかし、最近の研究によると、睡眠のプロセスは脳に限られたものではなく、主に免疫系を含む全身からエネルギーや情報を受け取ることが示されています。

睡眠不足と高血圧、肥満、糖尿病、うつ病、早期死のリスクの増加とのかかわりは、睡眠が全身により導かれる証です。1免疫系の役割は、睡眠をとらないと病気になり、逆に病気になると睡眠をとる事実を実証した研究により示されています。インフルエンザについて考えてみてください。病気のときは、疲れてより長く眠ります。これは、神経系と同様に、免疫系がサイトカインと呼ばれる独自の化学伝達物質を生成するためです。急性感染時に生成されるサイトカインにより、眠気が生じ、これは、急性および慢性感染症に当てはまることが明らかになっています。ウイルス、細菌、真菌などの病原体の侵入により免疫系が活性化し、疲労を促し睡眠の必要性が高まり、睡眠の質を低下させる化学メッセンジャーの活動が促進し始めます。しかし、睡眠が免疫系にもたらす影響とかかわりがあるのは感染症だけではありません。たとえばナルコレプシーは、多くの自己免疫疾患に関連する遺伝的変異と強いかかわりがあるため、自己免疫疾患であるといわれています。また、睡眠時無呼吸では、化学メッセンジャー、サイトカインのレベルが高まることから、免疫活性化とかかわりがあることも示されています。

sleep

健全な睡眠パターンの乱れによっても、免疫系が活性化します。 睡眠断片化と呼ばれる慢性的な睡眠の短縮や中断により、心血管系や代謝系だけではなく、腸内細菌のバランスも変化する可能性があり、こうした変化により、酸化ストレスが生じます。酸化ストレスは、細胞膜、タンパク質、DNAを攻撃する反応性の荷電粒子が過剰に存在する状態で、免疫系を活性化させます。2 糖尿病や感染症などの疾患が免疫系を通じて睡眠の質を変える可能性があるのは明らかですが、酸化ストレス、サイトカインの生成、免疫活性化マーカーに関連する免疫応答を誘発する物質は、食品や心理的ストレス、環境毒素など、日常生活における毒素への曝露に反応して生成されます。3

From the Immune System
to the Brain

免疫系から脳へ

免疫系の活性化は序章に過ぎません。脳は、慎重に配置された細胞によって、身体の他の部分の機能異常から身を守っています。この防御壁は、血液脳関門と呼ばれます。免疫活性化と酸化ストレスにより生成される化学メッセンジャーにより、この防御壁の機能が損なわれ、免疫細胞などの通常は脳に侵入できない細胞が防御壁を通過できるようになる可能性があります。脳領域の一部はこの防御壁によって保護されておらず、直接攻撃される恐れがあります。こうした構造の一つに、メラトニンを生成する松果体があります。メラトニンは、体の睡眠時計の調節に関与するホルモンで、最近、数多くの免疫機能に対して重要な働きがあることが明らかにされています。45また、一部の免疫細胞は、損傷や炎症、疾患の影響下で無傷の血液脳関門を通過できることも示されています。6さらに悪いことに、睡眠不足により血液脳関門の機能がさらに損なわれ、侵入性物質の透過性が高まる可能性があります。7侵入性物質が脳内に侵入すると、免疫系の抗生物質が脳の伝達ネットワークに影響を与え、脳自体の免疫ネットワークが誘発されます。

Brain Immune Activation

脳内免疫細胞の活性化

神経伝達物質は、神経系が伝達に用いる化学伝達物質で、脳の様々な部分をつないで睡眠を促し、気分を含む他の多くの機能を制御するオーケストラの一部です。 睡眠とかかわりがあり、鎮静効果があり、メラトニンの生成に役立つ神経伝達物質は、セロトニンとトリプトファンです。免疫系のサイトカインと酸化ストレスにより、セロトニンレベルが低下し、トリプトファンが通常の神経伝達物質の経路を通過できず、代わりに脳毒性化学物質が生成されることが示されています。8その他の神経伝達物質にグルタミン酸とドーパミンがあり、過剰な刺激作用があります。活性化された免疫細胞によりドーパミンレベルが影響を受けてグルタミン酸が増加し、睡眠を妨げる不安障害が生じる可能性があります。9

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炎症や酸化ストレスにより脳の免疫ネットワークが活性化すると、睡眠パターンを伴う巧妙なプロセスが開始します。脳内炎症過程は、アストロサイトとミクログリアと呼ばれる脳特有の2種類の細胞を介して起こります。こうした細胞には様々な役割があり、神経細胞を修復および維持する機能があります。また、アストロサイトは睡眠のプロセスに直接関与しています。一連の研究により、こうした細胞が活性化されたときの活動が研究されています。この特殊な細胞は、睡眠不足、酸化ストレス、免疫応答を促す化学メッセンジャー、サイトカインにより活性化されます。

こうした誘発物質が存在する場合、脳細胞が老廃物を過剰に生成して表面が変化し、ミクログリアとアストロサイトに余分な「清掃」負担をかけます。脳内清掃は、貪食と呼ばれる過程を介して行われます。通常、貪食の目的は老廃物の排除ですが、ミクログリアとアストロサイトは、炎症を促す誘発物質の影響下で神経細胞の一部を貪食し始めます。つまり、脳は自らを貪食し始めます。これは、身体が消耗した神経細胞を修復しようとしている可能性もありますが、自己破壊による影響が生じます。マウスの脳を用いた実験では、わずか24時間の睡眠不足により、活性化されたミクログリアが、学習と記憶の障害を引き起こし、それが少なくとも7日間続きました。101112急性および慢性の睡眠不足によるアストロサイトの活性化も、認知機能の低下とかかわりがあります。長期的には、睡眠不足と脳免疫細胞の活性化が、パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患を起こす可能性があります。13これは、神経伝達物質の生成が阻害されて免疫細胞が活性化し、その結果、脳の老廃物を除去する機能が停止するためです。

脳内炎症も永続します。活性化された脳の免疫細胞により、炎症を促すサイトカインと反応性粒子が生成され、炎症により生じる脳内炎症のサイクルが悪化します。こうした細胞の活性化(通常ミクログリアの活性化)が続くと、脳は他の損傷に対してより脆弱になり、進行中の神経細胞の損傷が悪化する恐れがあります。14

Summary

まとめ

カナダ人の25%は睡眠に不満があるといわれています。15従来、これは単発症状のための処方薬で治癒されていました。しかし、こうした薬物は望ましくない副作用を伴い、不眠症を悪化させる可能性があります。最近の研究では、睡眠の変化は、免疫系のバランスの不均衡により生じる可能性があることを示しています。また、睡眠の変化が免疫系のバランスの不均衡を引き起こす可能性もあります。さらに、基礎疾患により、炎症性変化が起こって睡眠障害が生じる可能性がある一方で、睡眠障害により、基礎疾患につながる炎症性変化が起こる可能性があります。脳の免疫系のバランスの不均衡は、炎症を促す化学伝達物質、サイトカインと酸化ストレスにより生じます。サイトカインと酸化粒子は、基礎疾患や睡眠不足、日常生活における毒素への曝露により生成されます。

こうした研究結果は、睡眠の問題に取り組むための新たな手段を示しています。睡眠障害は個別の疾患ではなく、様々な基礎疾患とかかわりがある可能性があります。したがって、自然療法医とともに睡眠の質を改善する際は、基礎疾患の治療に取り組んで炎症を軽減し、日常生活における酸化ストレスの要因を特定することが重要です。おそらく、睡眠の質を改善するための鍵は免疫系にあります。

 

 

 

参考文献
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