睡眠が紛れもない良薬であるわけ Elena Zarifis ND https://www.drelenaznd.com 4 December 2020 言語 日本語 数多くある眠る理由(神経細胞の修復や再生など)の一つに関する学説は、グリンパティック系に関する最近の研究により見出されました。そうです、頭に「グ」がついたリンパ系です。グリンパティック系は脳内にあり、中枢神経系から代謝で産生された老廃物を除去するという重要な役割があります。グリンパティック系は、起きている間はわずか13%なのに対し、睡眠中には20%に増加します。2つまり、グリンパティック系は睡眠中により機能します。 私たちは、眠る「理由」について明確にわかっていてもいなくても、睡眠が健康にとってどれほど重要であるかは知っています。 質の高い睡眠を十分にとることは、短期的および長期的な健康や病気の予防に不可欠です。 これは確かなことです。この記事では、甲状腺刺激ホルモン、レプチン、コルチゾール、成長ホルモン、インスリンなどの数多くの重要なホルモンの調節を含む、様々な重要な生理的プロセス対する睡眠の主な役割について触れていきます。 現代社会において、私たちが睡眠問題を抱えていることは、言うまでもありません。世界は目まぐるしく動き、要求水準が高く、ストレスレベルは上昇し、テクノロジーや画面が、四六時中、利用されています。こうした環境やライフスタイルにより、私たちはストレッサーを次々と受け、心から休息したり質の高い睡眠をとったりするのが困難で、与えられた仕事をこなすために、時間を割き、スキルを磨かなければなりません。こうあるべきではありませんが、これが現実です。 甲状腺刺激ホルモンとレプチン 睡眠不足がホルモンに及ぼす影響を評価した研究では、睡眠不足(特に約4時間の睡眠)により、甲状腺刺激ホルモン(TSH)とレプチンのレベルが低下することが示されています。3 レプチンが少ないと、食欲が高まります。これは、通常、レプチンにより満腹感を得るためです。レプチンが低い場合、脳は、食物/カロリーに満足しているというシグナルを受け取りません。これにより「空腹」を感じ、エネルギー密度が高く(高カロリー)、栄養価の低い食品、つまり単炭水化物(砂糖や加工食品)など、素早く手軽にエネルギーを得られる食品を欲し始めます。 甲状腺の健康維持は複雑ですが、簡単に言えば、TSHレベルが低いということは、甲状腺が刺激されず、体内を循環して細胞内のエネルギー産生を促す甲状腺ホルモンを産生できないことを意味します。甲状腺の健康と甲状腺ホルモンは、体内のほぼあらゆる組織やホルモンに影響を与えるため、バランスを保つことが大切です。また、循環している甲状腺ホルモンに適切に反応するために、体内の他の部分が全体的に健康であることも同様に重要です。これを達成するための鍵の一つは、質の高い睡眠をとることです。 コルチゾールと成長ホルモン 睡眠には様々な段階があり、各段階において、身体の生理機能により様々な活動が行われています。 徐波睡眠とも呼ばれる睡眠段階3では、眠りが非常に深く、ここから目覚めるのは困難です。4 睡眠段階3で、身体の修復や学習などに重要な成長ホルモンが分泌されるため、質の高い睡眠を十分にとることが大切です。5 睡眠とは別に、成長ホルモンは、睡眠段階1や2、急速眼球運動(レム)睡眠と比べ、睡眠段階3で大幅に増加するといわれているため、深い睡眠を十分にとることも大切です。6 ストレスホルモンの一つであるコルチゾールは、睡眠・覚醒サイクルにおいても重要です。コルチゾールは、朝に急上昇し、これによって目覚めて意識がはっきりとし、一日をスタートするための準備ができます。コルチゾールは、朝に急上昇した後、午後遅くにわずかに急上昇し、翌朝再び急上昇するまで徐々に減少し、夜に最も低下します。このコルチゾールのリズムが乱れていて、夕方や夜にコルチゾール値が高すぎると、ゆっくり眠れなかったり、寝付けなくなったりします。 具体的には、コルチゾールによって睡眠段階3(徐波睡眠)が妨げられ、7これにより、身体の修復や学習に不可欠な成長ホルモンが減少します。 これは、質の高い睡眠を十分にとるために、ストレス管理や夜間の行動がいかに重要であるかを示しています。 幸い、自然療法には、ストレス管理や睡眠障害に対して様々な効果があり、こうした問題を抱えている場合、頼りになります。 体重管理と「腹部の脂肪」の危険性 質の高い睡眠は、体重管理においても非常に大切で、さらに重要なことに、臓器の周りに蓄積される脂肪組織の量においても重要です。この内臓の周りに蓄積される脂肪組織は、内臓脂肪組織(VAT)と呼ばれ、様々な危険性を伴い、内臓脂肪組織によって炎症が悪化したり、心血管疾患のリスクが高まったりします。ホルモンを活性化させる働きがあってホルモン自体を分泌し、ホルモンの不均衡や様々な健康上のリスクをもたらします。 4~6時間の睡眠で十分に身体が機能すると考える人が多いですが、残念ながら、これは間違いです(稀なクロノタイプがある場合を除いて)。身体は生存するために無条件に微調整されますが、それが有効だったり、持続可能であったりするわけではありません。 ある研究において、短時間睡眠(1日6時間未満)、平均的な睡眠時間、長時間睡眠(9時間以上)の人の内臓脂肪組織の量が評価されました。8その結果、睡眠時間が6時間未満や9時間以上の場合、内臓脂肪組織が大幅に蓄積されることが示されました。9 幸い、短時間睡眠から平均的な睡眠時間に切り替えることで、内臓脂肪組織のさらなる増加を避けられることが示されています。10 こうした睡眠不足に伴う内臓脂肪組織の増加には、原因がいくつかある可能性があります。様々なメカニズムが一緒にまたは別々に生じる可能性がありますが、そのうちの2つをご紹介します。 睡眠不足と体重増加:コルチゾールと神経系 睡眠不足による内臓脂肪組織の増加のメカニズムの一つは、睡眠不足によってコルチゾールに悪影響が及ぶためです。コルチゾールが長時間にわたり過剰に分泌され続けると、脂肪が内臓(臓器の周り)に集まり、時間の経過とともに、一般に「内臓脂肪」と呼ばれる中心性肥満として現れます。研究によると、夜間のコルチゾール濃度と交感神経系(SNS)の活動は、睡眠が途切れている間中、増加しているといわれています。11つまり、睡眠の質や持続時間が不十分な場合、睡眠不足やストレス、不安症、高コルチゾール血症が生じ、これが悪循環する可能性があります。 交感神経系が活発に活動していると、身体はリラックスしていなく、眠りにつけなくなります。睡眠不足により、交感神経系が活発に活動し、翌晩に眠れなくなります。このサイクルはその後も続きます。 睡眠不足と体重増加:レプチンとグレリン 悪質な睡眠により交感神経系の活動が活発になる理由の背景にあるもう一つのメカニズムは、睡眠不足がレプチンに及ぼす影響に関連しています。研究によると、睡眠不足によって、前述したようにレプチン値が低下するだけではなく、こうした食欲を調節するホルモンの変化に伴い、行動も変化するといわれています。この行動の変化は、高カロリーの摂取です。12* ある研究において、参加者のレプチンとグレリンの血中濃度が測定され、睡眠制限期間(4時間の睡眠)後に空腹感と食欲が評価されました。13その結果、4時間のみの睡眠により、レプチンが減少して食欲や空腹感が増し、グレリン(食欲を刺激するホルモン)値が上昇しました。14具体的には、レプチンが18%減少し、グレリンが24%増加しました。 *上記は、あらゆる炭水化物が体に悪い、カロリー計算がすべてであることを示しているわけではなく、睡眠不足によって食欲調節ホルモンと行動に影響が及び、加工食品や栄養価の低い食品をより欲するようになることから、より健康的なライフスタイルや目標を守り続けるのが困難になる可能性があることを示しています。 また、4時間睡眠の場合、炭水化物含有量の多い食品に対する食欲が32%増加しました。15 上記の結果は、睡眠不足になると空腹感が増して満腹感が減り、より多くのカロリーを摂取することを示しています。16 インスリンと血糖 睡眠は、血糖値を適切に調節し続けるうえでも重要です。食事を摂ると、血糖値が上昇し、インスリンが放出されて血糖を細胞内に取り込み制御します。睡眠不足により、インスリン抵抗性と炎症が増加するといわれています。17インスリン抵抗性があると、身体はそのインスリンに反応しなくなり、糖とインスリンが細胞によって使用されず、血中に多く残ります。こうしたインスリン抵抗性の高まりは、概日リズムが乱れている場合、2倍になるといわれていて、18シフト勤務者がこれに該当します。血糖コントロールとインスリン感受性の維持は、健康を保つうえで不可欠です。こうしたメカニズムは、心血管や皮膚の健康、気分の調節、癌の発症率、脳の健康、視力、甲状腺の健康、炎症レベル、ホルモンの不均衡、糖尿病、心臓病、慢性疾患などに大きく影響します。 血糖値と睡眠は互いに繋がり合っていて、睡眠の質は血糖値に左右されます。血糖値のコントロール不足により、血糖値が一晩で低下し、寝付けず、頻繁に目覚めます。 睡眠が健康を保つうえで不可欠な理由は他にも数多くありますが、この記事ではこのくらいにとどめておきましょう。以下の睡眠問題にはそれぞれ様々な根本原因があり、こうした問題が一つあるだけで、健康に悪影響を及ぼします: 1日7~9時間寝ていない 朝に休まった感じがしていない、リフレッシュ感を得られていない 夜中に衝撃や不安感で目覚める、頻繁に目覚める なかなか寝付けない 眠り続けるのが難しい 自然療法で睡眠を改善できます。一人ひとり異なるので、質の高い睡眠を十分に得られない理由は、人によって異なります。 睡眠が、様々なホルモン、消化器の健康、メンタルヘルス、栄養状態、痛み、日中の環境や行動、自宅と寝室の環境、過去のトラウマ、現在のストレス、活動レベル、活動時間、摂取した食べ物や飲み物、前夜の睡眠により左右されることは想像できるでしょう。 睡眠は不可欠で、甲状腺や免疫系の健康、血糖コントロール、コルチゾール値と交感神経系の活動、内臓脂肪沈着、炎症、ホルモン、成長、学習、身体の修復、脳の健康など、数多くの主な健康と病気の要素に影響を与えるため、基本的な健康を保つうえで大切です。 健康の改善や維持を望むなら、睡眠をしっかりとりましょう。 よく眠れない場合は、自然療法医に相談してください。 References: Kim, T.W., J.-H. Jeong, and S.-C. Hong. “The impact of sleep and circadian disturbance on hormones and metabolism.” International Journal of Endocrinology, Vol. 2015 (2015): 591729. Jessen, N.A., et al. “The glymphatic system: A beginner’s guide. Neurochemical Research, Vol. 40, No. 12 (2015): 2583–2599. Darley, C. Sleep physiology, disorders and the adrenal connection. Webinar. Institute of Naturopathic Sleep Medicine Inc. Kim, Jeong, and Hong, op. cit. Darley, op. cit. Darley, op. cit. Holl, R.W., et al. “Thirty-second sampling of plasma growth hormone in man: Correlation with sleep stages.” The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism, Vol. 72, No. 4 (1991): 854–861. Darley, op. cit. Chaput, J.-P., C. Bouchard, and A. Tremblay. “Change in sleep duration and visceral fat accumulation over 6 years in adults.” Obesity, Vol. 22, No. 5 (2014): E12. Chaput et al, op. cit. Chaput et al, op. cit. Spiegel, K., R. 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