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腸管壁浸漏症候群

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腸の超透過-腸管壁浸漏に気付き、管理する
By: Meaghan McCollum BSc, ND
Naturmend
905 1st Ave. NE, Calgary, AB. T2E 2L3
www.naturmend.com



腸管壁浸漏症候群


パートI:腸管壁浸漏とは何か?

腸管上皮は、外界に晒されている人体中の最も面積が大きい表面です。この上皮層のバリア作用の能力は、健康に必要不可欠であることが分かっています。腸管上皮の(あるものは通過させ、あるものは通過させない)選択的透過性は高度に統制されたプロセスで、正常な腸管機能の一部です。驚くべきことに、透過機能は上皮細胞およびそれら細胞間に存在する細胞間結合との、たった一層を通して達成されます。

正常な腸管の透過機能は、腸内に存在する栄養素の選択的フィルターとして、および有害な(免疫を活性化する)抗原物質や病原分子が腸管上皮層を通過させない障壁として、二重の役割を果たします(1)

“腸管壁浸漏症候群”としても知られている腸管の超透過は、この高度に統制された透過機能が損なわれ、有害な可能性のある抗原分子や病原体が腸管壁を通過する結果として現れる可能性があります。

腸管上皮内膜を通過する経路は二つあります-傍細胞(2つの細胞の間)と経細胞(細胞内を通って)です。腸管透過性の増大に関する多くの文献は、傍細胞輸送、これは上皮細胞間での物質の輸送ですが、を測定・理解することに焦点を当てています。傍細胞輸送は起こるべきではありません。それが起こる時には、しばしば免疫系の適当でない活性化が起こります。

次のような、腸管壁浸漏に寄与すると分かっている病態に先立つ幾つかのものがあります。

ストレス 慢性的な心理ストレスが腸管透過性を増大させることが観察されて来ました(3)。これは勿論、ストレスに影響を受ける多くの病的状態にも関連があります。

運動 長時間で激しいタイプの運動は、腸管透過性の問題の一因となることが示されて来ました。耐久競技の運動選手の最大70%が、競技や長期間のトレーニングセッションに引き続いて消化器不調の症状を報告しています(4,5)

薬品 アルコール(6)、非ステロイド系抗炎症薬 (7)や化学療法(8)は全て、腸管透過性を増大させる原因として詳しく研究されています。

細菌性およびウィルス性胃腸炎 胃腸関連の大腸菌が腸管上皮の健常性をかく乱し下痢を引き起こします(9)。人間の食中毒の原因となるクロストリジウム・パーフリンジェンス(訳者注:ウェルシュ菌)のエンテロトキシン(訳者注:胃腸毒素)は、傍細胞透過性を変化させることが知られて来ました (10)

手術、完全静脈栄養、そして火傷のような重い病気は同様に、腸内の選択的透過性の喪失と関連があります(1)

本記事のパートIIでは、腸の超透過性に関連する幾つかの病的状態について検討しましょう。



腸の超透過-腸管壁浸漏に気付き、管理する

パートII:腸管壁浸漏の結果として何が起こりうるのか?
by: Meaghan McCollum BSc, ND
Naturmend
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パートII:腸管壁浸漏の結果として何が起こりうるのか?腸の超透過は幾つかの病的状態と関連付けられて来ました。ある場合には透過性が病気に寄与することが疑われる一方で、別の場合には腸壁と透過性は病気の過程自体を通して損なわれると考えられています。

肝硬変は、腸の透過性の増大が、病気の進行やその多数の重い合併症に寄与したりする例の一つです(1)。腸の機能障害、とりわけ健全な透過性の崩壊は、肝臓への中毒作用があるという強力なエビデンスが存在します(2)。“腸管壁浸漏“との関連については、肝臓の病理がたぶん最も手広く研究され、証明されているでしょう。

過敏性腸症候群、複数の病因の大変よくある胃腸の疾患ですが、腸透過性の増大が特徴の一つです(3)。腸透過性の増大が、原因として作用する要因の可能性のある過敏性腸症候群の早期の現われであるのか、または病気の過程自体の結果であるのかどうかは、いぜん不明のままです(3)

自己免疫-比較的新しい自己免疫発症のモデルには、腸管壁浸漏により腸内の免疫細胞が抗原(不適当な免疫活性体)へ暴露され、それにより不適切な免疫反応を引き起こすというシナリオが含まれます(4,5)

強直性脊椎炎(AS: ankyosing spondylitis)もまた、病的状態が始まるのに先立ち腸の透過性の増大があると考えられています。というのも、近親者に腸の超透過があるのが分かったからです(6)。検査を受けた68%のAS炎患者は、腸透過性の増加について陽性であるばかりでなく、近親者の60%も同様に陽性だったのです (6)

クローン病での超腸浸透も強直性脊椎炎と同じく、病態生理の重要な一部であると考えられています(7)。それというのも、腸障壁機能障害が近親者に見られるからです。クローン病の配偶者にも腸浸漏性の増大が確認されましたが、これは環境の要因が大きいことを示唆しているのです(7)

食物アレルギー

食物アレルギー発症についての仮説というのは、腸透過性の増大により食物からの抗原が損傷を受けた堅い結合の中を傍細胞的に輸送され、それにより抗原を免疫系へ暴露し、続いて抗原特有の免疫反応を発症させるというものです(8)。更に研究が必要ではあるものの、幾つかの研究で腸の透過性がアレルギー反応の直接の結果であり、喘息と湿疹との患者両方に認められることが示されています(9)

この記事のパートIIIとIVでは、腸管壁浸漏の検査方法および治療について検討します。



腸の超透過-腸管壁浸漏に気付き、管理する

パートIII:腸管壁浸漏の検査
by: Meaghan McCollum BSc, ND
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Testing for leaky gutこの記事のパートIIでは、腸管壁浸漏と問題の病気との間の強力な因果関係が、幾つかの病理により描かれました。パートIIIでは容易く手に入り、安全で、廉価な腸管壁浸漏発見の試験と、そして管壁浸漏の治療の可能性の一つである天然薬剤のアミノ酸、L-グルタミンについて検討します。

検査

腸透過性の増大の有無とその度合いは、人体で代謝されない物質を経口摂取することにより測定されます。使用されるのは幾つかのタイプの物質で、代表的なものはラムノース、乳糖やマンニトールのような糖分子です。これら各々の物質は無毒で、腎臓を通して排泄されるため、尿に集まったものを測ることが可能となります。

臨床で最もよく使われるのは乳糖・マンニトール検査です。乳糖は典型的な吸収の悪い二糖類ですが、これは腸管壁浸漏がある場合にのみ腸障壁を通過します。マンニトールは単糖類の一つですが、これは経細胞輸送により良く吸収されます。これらから二種類の情報が得られます。 「傍細胞“腸管壁浸漏”輸送」対.「経細胞 “正しい吸収” 輸送」です(1)

乳糖・マンニトール検査により透過性の度合いを評価することが可能ですが、この透過性の度合いは時に、クローン病(訳者注:限局性回腸炎)や危篤の患者の重症度と関連があると見られています(2)

この記事の範囲外に、腸の超透過性の治療に有益である可能性のある多数の治療が存在します。それらの中で、その治療法を支持するのに適度に十分な文献のある幾つかの核心の治療に焦点を当てましょう。

治療法

グルタミン

堅い結合組織の安定性は、腸細胞内のATP濃度に影響されます(3)。腸透過性に対してグルタミンが作用するからくりは、適切な堅い結合の構造・機能面においてATPがより多く利用可能となるところにあります。グルタミンは同様に、腸細胞内のグルタチオン濃度を増加させ、固い結合構造を反応性の高い酸素種から保護するのを助けます(4)。動物モデルや化学療法剤で見られるように、酸化性ストレスは腸透過性を増大させる重要なメカニズムなのです(5)

これまでに臨床試験では腸透過性に対するグルタミンの直接の効果は殆ど示されませんでしたが、化学療法(5) 、クローン病(6)、そしてひょっとしたら過敏性腸症候群(7)で用いると、腸の透過性に効果があることが示されてきました。クローン病では、腸透過性機能を改善するために体重1kgにつき0.5gの服用量が用いられました(6)



腸の超透過-腸管壁浸漏に気付き、管理する

パートIV:腸管壁浸漏の統合的治療
by: Meaghan McCollum BSc, ND
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プロバイオティクス

Probiotics 腸の健康のためにプロバイオティクスを補給するプラスの効果について反論するのは難いものの、腸の健康増進のメカニズムはまだ議論の中にあります。提案されているプロバイオティクス補給の効果というのは、腸の本来の透過性を回復し、宿主のミクロフローラ(訳者注:腸内細菌)を統制し、炎症に寄与する可能性のある分子の均衡を保つ助けをするということです(1)

腸透過性改善の研究はまだ論争の過程にありますが、これからの何年かの間に腸透過性に関連する幾つかの病態における幾つか系の生物を更に調査すれば、明らかにされることでしょう。腸の超透過性に関連した症状に対してプロバイオティックがもたらす効果に関する調査の幾つかは次の通りです。

メラトニン

メラトニンは、睡眠や不安、鬱に対する効果とは別に過敏性腸症候群の症状を改善することが、過敏性腸症候群の女性に服用量3mgを投与したある二重盲険プラセボ対照試験において示されました(2)。またメラトニンは腸の透過性を減少させることが、動物実験で示されました(3)

繊維

大腸内の細菌は私たちの食事に含まれている繊維を発酵させて、その副産物として短鎖脂肪酸(酪酸塩、プロピオン酸塩そして酢酸塩)を生産します。実はこの細菌フローラの老廃物は、私たちの大腸の細胞にとって好ましく理想的な食べ物なのです!十分な酪酸塩を供給することは、腸菅上皮の健康に大変効果的です(4,5)

食事療法

飲み食いするものを選ぶ取り組み、とりわけ私たちの体の免疫系を悪化させるように作用する可能性のあるタンパク質を避けるために特定の食物を回避することは、腸菅壁浸漏症候群に関連した多数の病気の治療に信じられないほど有益であることが証明されています。このような食事療法を益々支持する研究が急速に生まれています。今後の記事で、腸菅壁浸漏とそれに関連する自己免疫疾患を改善するための食事療法を検討しますので、どうぞご期待ください。