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断食 科学的説明

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断食は、何世代にもわたって文化的なスピリチュアル実践の一部として伝えられてきました。 今日では、適正体重の維持、病気の治癒や予防に用いられています。人体は柔軟に代謝でき、 利用可能な供給源に応じて、細胞にパワーを供給するために用いるエネルギー源を変更できます。結局のところ、鍵となるのはケトン体の生成で、これによって病気を予防して寿命を延ばす断食の治癒力が生まれます。

 

断食とは

断食では、今日広く行われているように、目的に応じて様々な期間中に食事とほぼあらゆる種類の飲料を控えます。断食には、1日1食のみ、食物摂取を1日8時間に制限、週に2日間の摂取カロリー制限、週に24時間の絶食など様々あります。こうしたプロセスは断続的な断食と呼ばれます。それぞれ方法が異なりますが、依然として効果はあります。また、さらに水断食(水のみを摂取する)を長期間行うこともできます。長期間にわたって水断食を行うことで、

 

体内では、エネルギーを蓄えている摂食状態とエネルギーを燃焼している空腹状態の2種類の状態が常に生じています。摂食状態は、積極的に食事をしたり食物を貯蔵したりしている状態で、エネルギーを摂取して、肝臓や筋肉にグリコーゲンとして貯えることで、得たブドウ糖を燃焼させます。カロリーの消費が終わると空腹状態になります。まずグリコーゲンからブドウ糖が生成され、こうした貯えが枯渇すると、脂肪からケトン体が生成されます。

 

plateグリコーゲンとは

 

グリコーゲンはブドウ糖の貯蔵形態で、筋肉や肝臓に貯蔵され、ブドウ糖が枯渇した際に用いられます。誰もが日々の食事によって約24時間分のブドウ糖を体内に貯蔵しています。断食が始まると、ブドウ糖は補給されず、グリコーゲンがエネルギーに分解され始め、摂食状態から空腹状態に変わります。グリコーゲンがブドウ糖に分解されて用いられる過程を、グリコーゲン分解といいます。そこから、ブドウ糖はさらにピルビン酸と呼ばれる分子に分解され、各細胞の発電所ミトコンドリア(細胞小器官の一つ)におけるクレブス回路またはクエン酸回路(TCA)で用いられます。こうした一連の生化学反応で、ピルビン酸は細胞のエネルギー通貨、アデノシン三リン酸(ATP)に変換されます。ATPは、各細胞において毎秒何十億も生じる生化学反応に向けてパワーを供給するために必要で、細胞が生きている限り、進行中の過程において常に生成および消費されます。必要なエネルギー量は一定していて、女性は48時間、男性は72時間後に貯蔵されたグリコーゲンがすべてブドウ糖に変換され、再び燃料源が切り替わります。

 

Ketoケトーシス

 

ケトーシスは、絶食時に身体が利用できる最後のエネルギー源で、脂肪がケトン分子に分解されて、クレブス周期に入り、細胞のエネルギーになる過程を示します。脂肪またはトリグリセリドが肝臓でケトン体に分解されて血流に入り、そこで他の臓器や筋肉組織に取り込まれます。ケトーシスはケトン体のエネルギーへの変換を示し、この変換はミトコンドリアでも起こります。こうしたケトン体への分解過程をβ酸化と呼びます。

 

ケトン体は、血糖値が低下した際に脂肪酸をエネルギー源として利用できない脳にとって重要で、脳に代替エネルギー源を与え、この量は長時間断食した際に脳が必要とするエネルギーの約2/3に相当します。ケトン体は常に血中に存在し、そのレベルは空腹時や長時間の運動中に上昇します。一晩の断食の後、ケトン体は、身体が必要とするエネルギーの2~6%を供給しますが、3日間の断食後は、必要なエネルギー量の30~40%を供給します。健康な成人は、肝臓で1日あたり最大185gのケトン体が生成されます。断食を続けると、血中にケトン体が次第に蓄積され、尿中にあふれ出ます。 血中のケトン体レベルが上昇している状態をケトーシスと呼びます。特に容易にケトン体レベルの検査できるのは、尿中における状態と濃度で、尿試験紙法が用いられます。

 

肝臓において脂肪から次の3種類のケトン体が生成されます。β-ヒドロキシ酪酸(BHB)(78%)は構造上、厳密にはケトン体ではありません。そして、アセト酢酸エチル(20%)とアセトン(2%)があります。断食の利点は、主にBHBとアセト酢酸エチルで、アセチルCoAに変換され、クレブス周期でATPを生成するために用いられます。一方、アセチルCoAに変換できないアセトンは、肺を介して体内から放出されます(1)。

 

ケトン体がこれほど効率的な燃料であるわけ

 

上記で述べたように、各細胞が機能するにはエネルギーが必要です。細胞は組織を構成し、組織は内臓(肝臓、腎臓、心臓、脳)などの臓器や皮膚などの外部器官、骨、結合組織、髪などの組織を構成します。各臓器とその細胞が機能するにはエネルギーが必要で、こうしたエネルギーは、ミトコンドリア内のブドウ糖またはケトン体によって生成されます。しかし、各分子をミトコンドリアのクレブス周期に備えるためには、クレブス周期に入れるような大きさと構造に分解されなければならなく、ケトン体の利点はここにあります。クレブス周期に入るには、各燃料はアセチルCoAに分解されなければなりません。ケトン体がアセチルCoAに分解されてクレブス周期に入るには3つの段階が必要ですが、ブドウ糖では10段階必要です。化学結合の破壊にはエネルギーが必要で、切断を要する結合が少ないほど、より容易に燃料を抽出してエネルギーを得られます。ケトン体は、分解においてそれほどエネルギーを要しないことから、ブドウ糖よりも簡単かつ迅速にATPに変換されます。ブドウ糖よりもケトン体でパワーを供給する方が、エネルギーを消費せず、より効率的です。

 

ケトーシスの利点

 

12時間の絶食後、BHBレベルは0.6 mmol/Lを超えます。ケトン食またはケトジェニック・ダイエット中、BHBレベルは0.6-<3 mmol/Lに達する可能性があります。BHBの代謝により、オートファジーが活性化され、古い細胞が浄化されます。アポトーシスは細胞死を示し、細胞周期の終わりに各細胞で開始される自然な過程です。古い細胞が除去されることで、長寿や寿命にプラスの効果が生じます。体内で最適に機能している細胞のみを保持し、古くあまり役に立たない細胞を取り除くことで、組織と臓器の機能や健康全般が改善されます。3日間の水断食後、体内の白血球がすべて破壊され、新しい白血球に入れ替わります。これは免疫系の大規模なアップグレードです。

 

血液脳関門には、繊細な脳組織の健康を維持し、栄養を与える機能があります。ケトーシス状態の際、血液脳関門は、神経細胞とそのシナプスの接続として知られる脳細胞を保護する機能が高まり、その結果、脳では認知機能が改善されてストレスに対する抵抗力が増し、フリーラジカルとその損傷による炎症が減少します。パーキンソン病を患っている場合、症状が軽減し、 BHBが用いられることで、認知症やアルツハイマー病、パーキンソン病を患う人の認知能力が改善されます。癲癇を持つ子どもには、症状の緩和と脳活動の改善がみられます。また、心臓においては、心拍数と血圧が低下し、ストレスに対する抵抗力が増します。脂肪細胞はエネルギーとして消費されるため減少し、筋肉細胞ではインスリン感受性と効率が向上し、炎症が減少します。さらに、血中の炎症性メディエーターとレプチンホルモンが減少し、肝臓では、インスリン感受性とケトン生成が増加し、炎症性メディエーターが減少します。腸ではエネルギーの取り込みと炎症が減少して広範囲で細胞が増殖し、組織が再生されます(2)。

 

運動中、BHBにより酸化ストレスが軽減され、回復力が高まります。酸化ストレスが軽減されることで、運動中に脳と心臓血管系が保護されます。また、BHBは骨の劣化を防ぐのに役立ち、脳腫瘍の成長を遅らせ、転移性腫瘍の拡大を阻止します。 断食により、膵臓癌細胞が死に、末期癌患者の癌悪液質(筋肉消耗)が減少します。さらに断食によって神経芽細胞腫(神経組織の癌(3))の成長が遅れます。ケトン食には、認知症やうつ病、気分障害、乳癌などのその他の病気の進行を防止する効果が驚くほどあります(4)。

heart

より専門的な観点で見れば、断食することで、NLRP3を介して炎症がブロックされ、それにより神経炎症や癌、インスリン抵抗性、骨疾患、アルツハイマー病、メタボリックシンドローム、2型糖尿病の進行を防げます(5)。

 

断食には、細胞内のインスリンを減少させ、インスリンが再び分泌された際に、細胞のインスリン抵抗性を高める働きがあるため、インスリン抵抗性や2型糖尿病の治癒に役立ちます。細胞のインスリン感受性が高まることで、ブドウ糖が効率よく検出されて入れ替わり、細胞に必要なエネルギーを満たすために血中に必要なブドウ糖が減少します。インスリン抵抗性の間、血中にブドウ糖が過剰にあるため、受容体は格下げ(除去)されます。その結果、細胞は同じレベルのブドウ糖では満足せず、同様の効果を得るために、血中のブドウ糖濃度の許容上限を超えなければならなくなります。インスリン抵抗性により、過度の炎症や組織損傷が長期にわたって起こったり、糖尿病や急性のコンマ菌が生じたりします。細胞のインスリン感受性を保つことで、2型糖尿病の進行を防げます。

 

断食は人類の歴史が始まった頃から行われてきました。断食の素晴らしさは、あるエネルギー源から別のエネルギー源に移行するための代謝柔軟性とかかわりがあります。ケトン体は、病気の予防や治癒において器官系に多大な効果をもたらします。断食によって、体内におけるマイナスの過程が減少し、長寿と生活の質全体に対してプラスの影響を得られます。

 

References:

 

1. https://www.diapedia.org/metabolism-and-hormones/51040851169/ketone-body-metabolism

2. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2367001/

3. https://stm.sciencemag.org/content/4/124/124ra27.short

4. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4982776/

5. https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02122575