携帯電話の使用 5つの健康に及ぼす影響

携帯電話の使用によって、脳の神経回路が変わって創造性が奪われ、多少集中できなくなったり、さらには知性が低下したりするという記事が、至る所で新たに掲載されていますが、本当でしょうか？

2018年1月、The Globe and Mail（カナダの新聞）に、「スマートフォンにより、知能が低下し、非社交的かつ不健康になる。なぜ手放せないのか？」と題した記事が掲載されました。携帯電話に対する告訴には、携帯電話の使用による心や対人関係、注意力、仕事と私生活のバランス、記憶力、創造性への悪影響などが含まれます。しかし、これは事実でしょうか？心理学の第一人者は、「この種の話題にメディアが注目しているが、その裏付けとなる文献はまだ生まれた始めたばかりである」と述べています。[2]スマートフォンの使用とその脳への影響について様々な憶測が飛び交っていますが、これについては研究され始めたばかりです。そもそも、最初のiPhoneが発売されたのは、わずか10年前なのですから。携帯電話についてわかっていることは以下です。

携帯電話はストレスを増大させる…少なくとも短期間は

以下の状況について想像してみてください。カフェで友人と一緒に座り、別の友人が到着するのを待っています。するとスマートフォンがポケットで振動しました。あなたは、友人が遅れていてテキストメッセージを送っているのだと考えながら、スマートフォンを掴みます。あるいは、「携帯電話で何が起こっているのだろう？」と思うだけかもしれません。その瞬間、あなたは電話に応答しています。スマートフォンでオンにした通知の数やプッシュ通知の送信を許可したアプリによって、携帯電話が鳴る回数は異なりますが、それに応答しなくても、鳴るたびに注意が向きます。

別の状況です。同じコーヒーショップですが、今回はまだどちらの友人も来ていません。ポケットの中の携帯電話は振動せず、鳴りもしていませんが、友人からテキストメッセージが届いていないか、最近投稿したInstagramがどれだけ「いいね！」を得たかを確認するため、または単に待たされている間に気晴らしをするために、とにかく携帯電話をチェックします。いずれにしても、再びチェックするために電話を置きます。

最新情報を知るためにスマートフォンのチェックを強制されることで、身体にストレスがかかります。[3]常に応答しなければならない状況や、最新情報を知りたいという欲望は非常に新しい現象で、私たちの体はそれに対応できるようにはできていません。iPhoneが誕生したのは、わずか10年前です！私たちは、常に電話に出るという状況に慣れていなく、これは大きなストレスになります。

携帯電話で睡眠が奪われているような気がしているなら、それはあなただけではありません。[3]携帯電話は、様々な睡眠の質に影響を及ぼしています。これに関する調査の多くは、10代を対象に行われていて、友人にメッセージを送るために夜更かしをしていると報告されています。[3]睡眠時間を削って何かをしていると（ミステリー小説を読むなど）、もちろん睡眠に影響が生じますが、携帯電話の睡眠への影響は、睡眠不足以外にもあるようです。日中に携帯電話をよく使う学生までもが、使わない学生よりも疲労しているといわれています。[3]

睡眠に関する報告だけでなく、一部の研究では、睡眠中の脳波や脳内の血流、急速眼球運動など、携帯電話が睡眠に与える観察可能な影響の解明が試みられてきました。これまでのところ、結果はまちまちで、携帯電話の周波数による影響が全く示されなかったケースもあれば、なかなか眠りにつけない、睡眠中の脳波パターンや眼球運動が変化するといった影響を示したものもあります。[3]しかし、今のところ、脳の変化と睡眠の知覚の両方に関する研究は行われていません。[3]電話を使用する人は睡眠不足であるといわれ、就寝前に携帯電話を使用することで、睡眠中の脳機能に影響が生じる可能性があることがわかっていますが、それを繋ぐ証拠はまだ示されていません。

携帯電話を無視しようとしていても、携帯電話に注意が向く

現在、「注意力」が話題になっています。テクノロジーが普及するにつれて、ADHD率が増加しています。[2]スマートフォンの登場以来、平均的して、注意力の持続時間が減少しています。[1]携帯電話は、アラートを用いて注意を引きます。スマートフォンを使用している間は、注意力が低下し、これにより、運転中に注意力散漫になりますが、懸念すべきことは、携帯電話を使用している間に、注意力が影響を受けるか否かではなく、携帯電話から離れているときに、注意力に影響するかどうかです。[2]携帯電話と注意力に関する問題点は、携帯電話を無視しようとしていても、注意力に影響を及ぼす可能性があることです。心理学の第一人者によるモバイルテクノロジーの習慣と認知機能に関する記事で、「重大な点は、スマートフォンを無視しようとしていても、焦点的注意を妨げる恐れがあることである。実験において、参加者は、アラートを示す音や振動を聞くだけで、気が散り、主要なタスクへの注意力が低下した」と述べられています。[2]携帯電話の注意力に対する短期的な影響は明らかですが、長期的な影響は不明のままです。携帯電話から離れたら、注意力は向上するのでしょうか？これについては、まだ解明されていません。

携帯電話は記憶の仕方に影響を与え、これが問題になる恐れがある（あるいは問題ないかもしれない）

今日、ポケットサイズの機器を用いて、あらゆるインターネットのコンテンツにアクセスできます。これにより、別の機会にも情報にアクセスできることを期待しています。後で情報にアクセスできると思うことで、情報が脳内で長期記憶に保存されることが少なくなります。[2]これは問題でしょうか？ それとも、私たちはテクノロジーに適応していて、情報そのものではなく、情報の保存場所を覚えているのでしょうか？[2]

情報の検索は、情報が豊富でアクセスしやすい昨今、合理的かもしれませんが、個人的な体験についてはどうでしょう？ 研究により、写真を撮ることで、観察対象の記憶が減るといわれています。[2]日頃、いかに携帯電話を使用して、写真や動画で出来事や体験を記録し、友人と共有しているかを考えると、これは重要な点です。[2]写真を撮ることによって、人生で経験した出来事の記憶が減っているかもしれません。

携帯電話の使用が、記憶力に影響を与えることは確かですが、まだ明らかになっていない問題がどれほどあるかはわかりません。[2]

携帯電話は習慣化し、中毒を引き起こす可能性があり、過剰な使用によって他の健康問題が生じることから、これは問題である

中毒になるか否かにかかわりなく、携帯電話の使用はいわば「中毒のような」ものです。[3]携帯電話を手放せなく、タスクを完了するために携帯電話に頼り、以前と同じ満足感を得るために、携帯電話でより多くの時間を費やしています。[3]他の依存症と同様に、10代の若者は、携帯電話の過剰な使用によって、両親との関係が悪化し、学業がおろそかになる可能性があります。The Globe and Mailに、携帯電話には「争点となっている臨床的な中毒性はないとしても、事実上中毒性がある」と記されていますが、全くその通りです。[1]

中毒か否かにかかわりなく、携帯電話の過剰な使用は多くの問題を引き起こす恐れがあります。[3][4]重大な点は、携帯電話がメンタルヘルスに大きな影響を与え、過剰な使用により、うつ病や不安症、自尊心の低下のリスクが高まります。[3][4]また、多くの場合、携帯電話を前かがみになって使用するため、「テキストネック」などの身体的な負担がかかります。[5]全体として、携帯電話の過剰な使用は、身体的および精神的健康に大きな影響を与え、テクノロジー中毒の広がりが懸念されます。

では、携帯電話により、「知能が低下し、非社交的かつ不健康」になっているのでしょうか？ 注意力や記憶力などの認知機能に影響を及ぼしますが、スマートフォンにより知能が低下するか否かは、今のところわかっていません。ただし、携帯電話の過剰な使用による健康への影響を過小評価してはいけません。睡眠不足や悪い姿勢、ストレス、不安症やうつ病のリスクの増加は「無視できません」。特に携帯電話を頻繁に使用している場合、健康に悪影響を及ぼすようです。では、その対処法は何でしょう？

前述したあらゆる点を考慮して、携帯電話の使用に関する常識的な推奨事項を次に示します。

寝室に置かない。就寝前は、スマートフォンをベッドから離れたところに置きましょう。少なくとも寝る前30分には片付けておくとより効果があります。