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膝の痛みのための鍼治療:症例報告

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鍼治療とは

鍼治療は、何千年もの間、痛みや出産の懸念、エネルギーの低下、気分のむら、さらには風邪やインフルエンザなどの様々な病気の治療に使用されてきた伝統的な治療法です。非常に細い針を挿入して、「気」の刺激と循環を通して治癒を促します。ツボは、患者一人ひとりの病歴や主な懸念または健康目標に合わせて選ばれます。 私の経験から、普段針を恐れている患者でさえ、針治療では非常にリラックスしています!

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膝の痛みのための鍼治療

前述したように、鍼治療は様々な病気に用いることができますが、その一つは膝の痛みです。 まず伝統中国医学の観点から膝の痛みの根本原因を特定してから、この根本原因に対処するためのツボを選ぶことが重要です。 鍼治療は、東洋と西洋において、膝の痛みに非常に広く用いられていて、慢性的な膝の痛みや変形性関節症の治療に対するその有効性を示す研究が増えています。1

ジェーンとの出会い

30代のジェーンは「膝がパキッと鳴った」感じがしたためやって来ました。7前にスクーターから転落して怪我をして以来、この膝の痛みに定期的に悩まされていて、医師によって内側側副靭帯損傷と診断され、整形外科による治療を受ける前に鍼治療を試してみたかったそうです。

問診

自然療法医として、私はジェーンのあらゆる側面について尋ね、膝の怪我以外にも、運動習慣や食事療法、他人との交流についても話しました。ジェーンは、大学院を卒業して社会人になってから7年間、多大なストレスを受けていることについてたくさん話してくれました。また、膝の怪我だけではなく、過去7年間に貧血や子宮内膜症(子宮内膜組織が子宮の外に移動し、非常に痛みを伴う月経困難症が生じる疾患)と診断されたことも知りました。

診断

ジェーンは膝の痛みのために鍼治療を試すことに最も興味があったので、伝統中国医学(TCM)の観点からアプローチすることにしました。伝統中国医学(TCM)の観点からいえば、「肝気の停滞」を示していました。TCMでは、西洋医学とは異なり、臓器はエネルギーや感情、生理学的要素を網羅していて、必ずしも病理学的であるとは限らず、特定の子午線または経路を介して繋がる動きやバランスに注目します。肝臓は、血液と気(エネルギー)を体に循環させる役割を果たします。ジェーンの肝臓に見られるように、臓器に機能障害があると、血液と気が詰まったり停滞したりして、痛みが生じると言われています。多くの場合、過労やストレス過剰、忙しいライフスタイルによって肝気が停滞します。2肝気と血流が最適ではない場合、筋肉や組織、臓器に血液や気が十分に届かず、膝の怪我などの治癒が遅くなったり、長引いたりします。

最初の治療

ジェーンは、健康面における疑いを抱きつつも、最初の治療を楽しみにしていました。ジェーンは、科学に携わってきたこともあり、鍼治療の働きや治療のアプローチについて確実に理解するために様々な質問をしました。そうした質問に答えた後、膝の周りのツボに鍼を刺してその領域への血液と気の循環を増価させてから、他のツボにも鍼を刺して肝気のスムーズな流れを促進しました。ジェーンは、鍼が入った後、心が落ち着く音楽を聴きながら20分間リラックスすることができました。

治療後、ジェーンは痛みが緩和して、より膝を動かせるようになり、興奮していました。 ジェーンに、治療の合間に治癒されることが多いことを説明し、自然療法のモダリティをいくつか提案し、ビタミンDと骨ブロスを摂取することを勧め、単純なハムストリングストレッチのやり方を教えました。そして、次週に再診することにしました。

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5週間の治療

ジェーンは鍼治療のために毎週来ました。再来のたびに、一週間の出来事や今後の希望について話し合い、1520分の鍼治療によるリラクゼーションセッションを行いました。ジェーンの一週間の出来事や気分に応じてツボを選びながら、膝への気や血液の循環を増加させ、肝気の流れがスムーズになるように努めました。

5週間の治療の後、ジェーンは膝をほぼ完全に伸ばすことができるようになり、興奮していました。まだ完全に伸ばすことはできませんでしたが、膝ブレースを使わずに毎日短時間の散歩をできるようになっていました。長時間散歩した後や朝起きた時にまだ痛みを感じていていましたが、最初に診断を受けた時よりもはるかに動かせるようになっていました。また、これまでの鍼治療の効果に感銘を受けた整形外科医に出会えて喜んでいました。その整形外科医は、このまま鍼治療を継続することを提案し、それに理学療法を加えることを勧めたそうです。ジェーンはその勧めに従い、理学療法士とともに12週間の運動プログラムを開始し、膝を完全に伸ばせるようになり、今後、膝の怪我を防げるようにするために、膝を支える筋肉を伸ばして強化しました

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10週間の治療

さらに5週間にわたり毎週治療を続けましたが、足の後ろの筋肉の伸縮と循環を促すために、ファイヤーカッピング治療も取り入れ始めました。1週間おきに鍼治療とカッピング治療を交互に行いました。また、長時間座っているときの正しい姿勢の重要性について話し合いました。ジェーンは、ヨガとストレッチを日常生活に取り入れたことを教えてくれました。

ジェーンは10週目までに膝を完全に伸ばせるようになっていて、痛みを最小限にとどまり、普段通り長時間散歩をしていました。まだ膝の内側にいくらかの痛みがありましたが、その痛みに取り組み続けることを楽しみにしていました。また、自分の体との繋がりをより強く感じるようになり、心が痛みや治癒においてどれほど影響するか、治癒においてよりパワーを与えてくれたことについて話してくれました

この時点で、順調に良好に向かっていたので、治療の間隔を空け始めることを提案しましたが、ジェーンが、こうした毎週の治療が、こうしたストレスの多い不確かな年においてストレスを管理するうえでどれほど役立つか、この治療をいかに楽しんでいるかを教えてくれたので、今まで通り毎週続けることにしました。

今後の方向性

ジェーンは膝の怪我の治癒に勇気づけられ、子宮内膜症などの他の疾患に取り組むことを考え始めました。子宮内膜症を管理する別の方法に興味を持っています。子宮内膜症の治療に対する鍼治療の有効性が研究によって示されていることから、3 次は、他の医療専門家を協力しながら、ジェーンとともに子宮内膜症の治療に取り組むことになるかもしれません。