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設計された日焼け止め:光老化を防ぐための薬用成分を追加

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sunscreen外因性光老化を軽減するうえで考慮すべき最も重要な局所製品の一つは、普通の日焼け止めです。日焼け止めの処方は進化し、数多くの日焼け止め製品が、特定の皮膚科学的治療を念頭に置いて設計されるようになり、様々な天然物質、特にハーブや栄養素由来の抗酸化剤の光防護効果に関する研究が数多く行われるようになりました。

日焼け止めの使用は、急性および慢性の日光曝露に伴う様々な皮膚疾患に効果があります。こうした皮膚疾患には、基底細胞癌、扁平上皮癌、悪性黒色腫などの皮膚癌や、皮膚の老化、多形日光疹、日光蕁麻疹、薬物/ハーブによる光線過敏症などの光線過敏症、酒皶などの皮膚障害や肝斑などの色素沈着過剰の悪化が含まれます。i, ii, iii日焼け止め製品は、1970年代に広まって以来、その処方が進化しました。最も重要な進化の一つが、UVB(紫外線B波)に加えてUVA(紫外線A波)をカバーするUVフィルターの採用で、それ以来、薬用成分が配合された、肌の状態に特化した日焼け止めが数多く登場し、これによって、日焼け止め製品は、様々な皮膚疾患を管理するためにより使用されるようになりました。この記事では、皮膚の老化の根底にあるメカニズムに対する紫外線の影響に焦点を当てながら、光老化や色素沈着過剰を防止するために設計された日焼け止めに含まれる薬用化粧品成分について、詳しく触れていきます。

日焼け止め: 基本的な背景

米国皮膚科学会の日焼け止め塗布に関する現在の推奨事項は次のとおりです:iv

  • SPF30以上の日焼け止めを使用する
  • 一年中、毎日使用する
  • 露出部分をすべて適切にカバーするための推奨量は30グラム
  • 日焼け止めが肌に最適に吸収するために日光に当たる15分前までに塗布する
  • 2時間ごと、または水泳/過度の発汗の直後に再び塗布する

日焼け止めは、2mg /cm²の密度で塗布した場合にのみラベルに記載されているSPFの効果があるため、日焼け止めの使用における主な懸念の一つは、塗布不足です。v米国皮膚科学会が30グラム塗布することを推奨しているのはこのためで、ショットグラス1杯分ほどの量を思い浮かべれば覚えやすいです。日焼け止めの塗布不足を防ぐための実証済みで効果があるもう一つの方法は、「二重に塗る」ことです。様々な研究により、日焼け止めを露出部分に二重に塗ることで、塗布密度を理想の2mg /cm²にまで近づけることが示されています。vi, vii

現在、北アメリカではケミカルフィルター(別名有機/可溶性)とミネラルフィルター(別名無機/不溶性)のUVフィルターが認証されています。各UVフィルター成分の主な側面について、表1をご覧ください。

1: UVフィルター成分の主な側面viii, ix, x

 

ケミカルフィルタ

ミネラルフィルター

作用のメカニズム

紫外線を吸収し、熱や長波長の光の形で放散します。

微粉化されていないミネラルフィルターは、UV放射を反射および散乱させます。

微粉化されたフィルターも、一部の紫外線を吸収できます。

フィルターとフィルターカテゴリの例

  • メトキシケイ皮酸オクチル(オクチノキサートなど)
  • サリチル酸塩(オクチサレート、ホモサレートなど)
  • ベンゾフェノン(オキシベンゾンなど)
  • その他(オクトクリレン、アボベンゾン、エカムスルなど)
  • 化亜鉛
  • 二酸化チタン
  • ともに、微粉化または非微粉化できます。

その他の主な側面

フィルターにはそれぞれ、主に吸収するUVスペクトル範囲があり、UVB、UVA、またはその両方を吸収します。

微粉化されていないフィルターは、UVB、UVA、および可視光スペクトル全体をカバーします。

日焼け止めは、フィルターを組み合わせて、UVBとUVA(別名広域スペクトル)をカバーするように処方されています。

微粉化された二酸化チタンは、UVA‑1と可視光線をカバーできないことが多いです。

微粉化された酸化亜鉛は、可視光線をカバーできないことが多いです。

見た目が良いです(肌にすんなりなじみます)

微粉化されていないフィルターは、見た目があまり良くありません(白いチョークのような筋が残る可能性があります)。

酸化鉄を含む「着色された」日焼け止めは、こうした影響を最小限に抑えながら、可視光スペクトルを遮断します。

一般的に忍容性は高いですが、場合によっては、刺激性反応やアレルギー反応が生じる可能性があります。

特定のフィルター(ベンゾフェノンなど)の潜在的な内分泌および環境への影響について、いくつかの懸念が提起されています。

アメリカ以外では、様々なUVAフィルターが用いられています。

通常、忍容性は非常に高く、刺激性反応やアレルギー反応は生じません。

エアゾールスプレーの日焼け止めはお勧めしません。

 

光老化を防ぐための薬用成分を追加

肌の老化を遅らせるための様々な外用剤や処方が熱心に宣伝され、注目を集めていることは良いことですが、最も重要なのは、日焼け止めを定期的に使用することです。特に他の薬用成分が配合された高価なアンチエイジング製品が注目されていることから、日焼け止めの役割は見過ごされがちですが、このシンプルで地味な局所剤は、肌の外因性老化の主な原因である紫外線に対抗するために欠かせません。複数の研究により、様々な肌老化のプロセスを緩和するうえでの日焼け止めの使用の重要性について調査されてきましたが、xi, xii, xiii UVによる損傷の背後にあるあらゆるメカニズムが理解されて以来、日焼け止めの効果を高めるための成分に関する研究への関心が高まっています。

これについて理解するために、光老化のプロセスについて簡単に触れていきます。光老化の一般的な兆候には、細かいしわや深いしわ、皮膚の弛緩や乾燥、肌の質感の変化(肌荒れ、サメ肌など)、face 色素の変化(不均一またはまだら肌、日光黒子やシミなど)が含まれます。顔の老化の原因の最大80%は紫外線によるものだといわれています。xiv UVBとUVAの両方がこのプロセスに関与していて、UVAは皮膚の真皮層に達する可能性が高いです。xv慢性的に紫外線を浴びている場合、活性酸素種(ROS)が生成され、転写因子AP-1が活性化されます。この活性化が鍵で、転写因子AP-1が活性化することでプロコラーゲンの形成が抑制され、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)が活性化されてコラーゲンが分解され、核内因子κB(NF-κB)が活性化されてさらなる炎症が誘発され、ROSの生成が促進されます。また、紫外線により、エラスチンが分解され(同時に異常なエラスチン繊維が蓄積されます)、皮膚の抗酸化ネットワークが枯渇し、色素沈着過剰につながるプロセスが誘発されます(肝斑の悪化、ニキビの痕、肌の色むら/まだら肌、シミなど)。xvi, xvii

以上のことから、研究や日焼け止めの処方において、光老化のさらなる進行を妨げるために、薬用成分、特に抗酸化成分の配合の効果について熱心に取り組まれていることは非常に良いことです。これは、ROSの生成と光老化を軽減するために他の成分を見つける必要があることを示しています。広域スペクトルの日焼け止めには紫外線による影響を防ぐ重要な働きがありますが、一部の研究者は、従来の日焼け止めはROSの形成を約55%のみ減少させるといわれているため、抗酸化成分を配合することで、ROSの生成を抑えられる可能性があると推測しています。xviii抗酸化物質は、その他の効果を得るためにも日焼け止めに配合されていて、フィルター成分を安定化させたり、xixベータカロチンやレスベラトロールなどの抗酸化物質を用いて、ケミカルフィルターが表皮の角質層を通過して真皮層の奥深くまで移動するのを防いだりする効果があります。xx

様々な抗酸化物質の紫外線保護効果に関する前臨床研究が数多く行われ、その結果について、様々なレビュー記事にまとめられています。xxi, xxii, xxiii, xxiv, xxv こうした研究では、より人体実験が行われるようになりましたが、その大部分は、試験管内試験や動物実験によるものです。表2は、日焼け止めに含まれる一般的な抗酸化物質の一部です。

uv

2: 日焼け止めに含まれる一般的な抗酸化物質

抗酸化物質(局所)

抗酸化作用、光防護、光老化に関する注目すべき発見

(前臨床

ビタミンC

UVBおよびUVAによる紅斑、光毒性による損傷、日焼けによる細胞の損傷を防ぐ(特にビタミンEと併用した場合)。xxvi, xxvii, xxviii

コラーゲンの合成に関与する酵素の補因子として作用し、コラーゲンの形成を促す。xxix

そのROSスカベンジング作用により色素沈着を減少させ、チロシナーゼ活性を阻害してメラニンの形成を抑える。xxx

人体実験により光防護が実証された形態: アスコルビン酸、アスコルビルリン酸ナトリウム(SAP)、アスコルビルグルコシドxxxi

ビタミンE

肌の老化や免疫抑制、脂質過酸化(およびその結果生じる細胞膜の分解)、発癌など、様々な紫外線による影響から守る。xxxii, xxxiii, xxxiv

紫外線によるシクロブタン型ピリミジンダイマー(CPD) の誘発、つまりDNAの突然変異や発癌をもたらす可能性のあるDNAの光損傷を防ぐ。xxxv

ビタミンCと併用した場合に相乗効果がある。xxxvi, xxxvii

緑茶ポリフェノール

NF-κB経路による炎症を軽減するxxxviii, xxxix

紫外線による紅斑(日焼け)を抑制するxl, xli

緑茶に含まれるエピガロカテキンガレート(EGCG)が、UVBによる過酸化水素の放出を阻害する。xlii

コラゲナーゼ活性を阻害しながら、AP-1およびNF-κBのUV誘導発現をダウンレギュレーションしてコラーゲンの分解を抑える。xliii, xliv, xlv

EGCGのナノ粒子化、ヒアルロン酸とともに、フリーラジカル/ROSを一掃し、EGCGの肌への浸透と沈着を促す。xlvi

ブドウの種子と皮のエキス

抗酸化物質ポリフェノールが豊富に含まれている: プロアントシアニジン(ブドウの種子)とレスベラトロール(ブドウの皮)xlvii

どちらも紫外線による炎症を抑える。xlviii, xlix, l

過酸化水素と脂質過酸化を減少させる。li, lii, liii

脂質ナノ粒子カプセル化されていない限り、急速な代謝が局所使用において問題となる。liv

大豆エキス

抗酸化作用による潜在的な肌の老化に対する利点。線維芽細胞の増殖を促進し、コラーゲンの合成を増価させ、MMP-1を減少させ、エラスチンを増価させることが実証されています。lv

人体実験において、I型およびIII型コラーゲンの増加、UVB曝露後の紅斑の減少、顔の色素沈着の改善(まだら模様の減少)、肌の質感の改善、細いしわの減少、全体的な肌の色と見た目の改善が示されています。lvi, lvii

ゲニステイン植物エストロゲンは、抗酸化作用とチロシンキナーゼ阻害作用により、抗発癌効果がある。lviii

紫外線によるDNAの酸化を防ぐ。lix

ミルクシスルエキス

抗酸化物質ポリフェノールの一種、シリマリンが豊富に含まれている。lx, lxi

過酸化水素、脂質過酸化、および様々な炎症を引き起こす物質に対する光防護剤。lxii

UVBにより損傷したDNAの修復を促す(ヌクレオチド除去修復経路を介して)。lxiii, lxiv

局所的に塗布した場合の光安定性が実証されている。lxv

 

光老化に対する抗酸化物質が豊富な日焼け止めの効果が、人体実験により研究され始めました。ほぼあらゆる実験が比較的小規模ですが、日焼け止めのみを使用するよりも抗酸化化合物を併用した方が、より紫外線による光老化と色素沈着過剰だけではなく、lxvi, lxvii 可視光やlxviii, lxix赤外放射(日光から感じる熱/暖かさ)による光老化と色素沈着過剰も防ぐといわれています。lxx 以下は、2件の新たな臨床研究の要約です。

antioxidants5日間の予備研究で、抗酸化物質が豊富な日焼け止めの臨床効果が分析されました。lxxi この研究では、18~40歳のフィッツパトリックスキンタイプ(皮膚の光損傷の可能性を推定するための尺度)IおよびIIIの被験者5人が、抗酸化物質を含み保湿効果のあるSPF25の日焼け止めと、抗酸化物質を含まない保湿効果のあるSPF25の日焼け止めを臀部の皮膚の別々の個所に塗りました。そして、別の個所に紫外線をシミュレートしたUVライトを当て、さらに別の個所は比較対象領域として、日焼け止めを塗らず、UVライトを当てませんでした。試験領域と対象領域の両方に、最小紅斑線量の2倍のUVライトを当て、4日目にパンチ生検による組織学的評価を行いました。主要評価項目には、表皮にあるランゲルハンス細胞の定量化(枯渇が紫外線による免疫抑制の指標になります)とコラーゲンを分解するMMP-1のレベル(光損傷した皮膚によくみられます)が含まれていました。抗酸化物質には、ビタミンC(アミノプロピルアスコルビルホスフェート)、ビタミンE、カフェイン、エキナセアパリダ抽出物、Chamomilla vulgarisエッセンシャルオイルの他、刺激から肌を保護する鎮静剤として用いられるサンゴの一種、ゴルゴニアンエキスなどのユニークな薬用物質も含まれています。SPF25のみの日焼け止めと抗酸化物質を含む SPF25の日焼け止めにより、ランゲルハンス細胞の枯渇を防げ、双方の日焼け止めに有意差はありませんでした。一方、MMP-1の測定では重要な発見があり、日焼け止めを塗らずUVライトを浴びた個所と比較して、SPF25のみの日焼け止めを塗った個所は、MMP-1レベルが43%減少し(p <0.002)、抗酸化物質を含む SPF25の日焼け止めを塗った個所は、60%減少しました (p < 0.0001)。 最後に、SPF25のみの日焼け止めと抗酸化物質を含む SPF25の日焼け止めのMMP-1レベルの減少には、有意差17%があることがわかりました (p < 0.05)。

別の研究では、40人の被験者が50J /cm²の可視光にさらされ、皮膚で生成されるフリーラジカルが測定されました。lxxii その結果、ベースラインレベルと比較して、フリーラジカルが85%増加しました(p <0.05)。評価により、ナツシロギク(Tanacetum parthenium)エキス、大豆エキス、ガンマトコフェロールを含む抗酸化物質が豊富な日焼け止めが、可視光によるフリーラジカルの生成においてプラスの効果を示しました。日焼け止めを塗らずに可視光にさらされたグループn = 24と、抗酸化物質が少ない日焼け止めを塗って可視光にさらされたグループn = 12の両方が、フリーラジカルの生成が増加していました。抗酸化物質が豊富な日焼け止めを使用したグループn = 12のみが、抗酸化物質を含まない日焼け止めを使用したグループと比較して、フリーラジカルの生成が大幅に減少し、54%減少しました(p < 0.05)。

処方の課題

日焼け止めの処方において、抗酸化物質が豊富な日焼け止めの処方を統合する際に課題に直面しています。1つ目の課題は、角質層に対する効果と抗酸化効果、外層を通過して真皮および表皮組織内に集中的に働く効果を同時に得ることです。lxxiii 2つ目の課題は、抗酸化物質があるからといって効果が保証されるわけではなく、処方する際に、抗酸化作用が高いだけでなく、効果を十分に発揮できる濃度がなければなりません。lxxiv 抗酸化物質の理想的な濃度や、日焼け止めに配合する際に濃度を調整する必要があるかがわかるとは限らないことに注意してください。この詳細について、今後の研究で解明されることを願っています。

光老化を防ぐ日焼け止めのその他の一般的な成分

多くの場合、光老化を防ぐ日焼け止めには、光老化に対する効果が実証されているその他の薬用物質が含まれています。これには、レチノール、ナイアシンアミド、および様々なペプチドなどが含まれます。また、ヒアルロン酸やグリセリンなどの様々な保湿成分も含まれ、素早く肌をふっくらと滑らかにする効果があります。日焼け止め自体の色素沈着を防ぐ効果を高めるために、一部には、美白効果がある薬用成分がさらに含まれています。繰り返しになりますが、ナイアシンアミドやビタミンCなどにこうした効果がある可能性がある他、甘草の根エキス、未発酵の大豆エキス、テトラペプチド-30(テトラペプチドPKEK)などの特定のペプチドにも美白効果があります。lxxv, lxxvi

日光から肌を守るためにbeach日焼け止めを使用することは、現代社会においてより一般的になり、これによって、光老化と色素沈着過剰を緩和する薬用成分が配合された日焼け止め製品が登場しました。こうした効果のある薬用化粧品の多くに、様々な抗酸化物質が含まれています。抗酸化物質の潜在的な効果を明らかにするには、より多くの人体研究が必要ですが、予備試験では、こうした抗酸化物質が有益である可能性があることが示されています。また、さらなる研究によって、抗酸化物質などの薬用成分を日焼け止めに配合する際の課題が解明されるでしょう。こうした詳細が明らかになりつつあり、日焼け止めが日光から肌を完全に守る製品へと移り変わる姿を目の当たりにしているのかもしれません。