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運動とメンタルヘルス-自然療法的アプローチ

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運動とメンタルヘルス-自然療法的アプローチ

by Dr. Christina Bjorndal, ND

Natural Terrain Naturopathic Clinic
200-6650 177th St NW
Edmonton, AB
T5T 4J5

(587) 521-3595 naturalterrain.com
Exercise and Mental Health - Naturopathic Approaches


カナダ気分障害協会は、2009年に驚くべき統計を発表しました。これは、カナダ人5人中1人が、うつ病、気分障害、不安神経症、双極性障害、統合失調症、注意欠陥多動性障害、そして痴呆(これまでのところ不安神経症およびうつ病が最多)といった精神疾患を生涯に一度は経験するだろうというものです。もし人口の20%がそのような病気に冒されるならば、あなたやあなたの知る誰かが現在、過去に、あるいは将来、精神疾患にかかることは極めてあり得ます。カナダではこの数十年、罹患率が着実に上昇しましたが、この傾向は続くと思われます[2]。この一世代で、8900万人を超えるカナダ人が、精神疾患と共に生きるだろうと考えられています。

もし、あなたやあなたの知人が、気分障害、不安神経症、双極性障害やうつ病エピソードと闘っているなら、恐らく、多くの利用可能な治療オプション-薬剤から栄養補給品や鍼まで、について聞かれたことがあるでしょう。気分を支えるための対策があまりにも多数存在するため、何が自分に合っているのがを知るのは難かしいかも知れません。

カナダの人口の10%近くが、何らかの形の処方坑うつ剤を利用しています[5]。この従来療法の第一選択肢の治療は安くなく、控えめに見積もっても2011年のカナダにおける精神疾患の費用は、直接費用が423億ドル、間接費が63億ドルです[2]。これほど多数のカナダ人が精神疾患を抱えて生活している事実と、このように高額の治療費とを考え併せると、最も効果的で安全性が高くそして安価な気分障害に対するツールの一つである運動が、精神疾患の規範的な治療として、これほど十分に利用されていないのは不思議と言うほかありません。

患者さんたちにレクチャーをする際、私はこの引用文を紹介します。

“うつ病や不安神経症において、最も過剰に使用されているのが薬物(坑うつ剤)で、最も十分に利用されていないのが運動です”

そして私は、人が抑うつや絶望の奈落にいる時に運動するのは非常に困難であることは理解できると、説明を続けます。更に私は、それが一日で私のしたことの全てである日があったとお話しします。外に出るための格闘は時には激しい苦痛でした。時には、寝室から玄関まで移動するのに何時間も-2、4、6、8あるいは10時間-かかりました。うつ病の時は、回復したいと思う私の一面と、抑うつと敗北とにはまっている自分の一面との間の戦いで身動きが取れず、外に出るために必要な全てのステップをやり遂げるための勇気を奮い起こすために何時間もかかるでしょう。

Exercise and Mental Health - Naturopathic Approaches
  • ベットから起き上がる
  • 着替える
  • もしシャワーを浴びることが出来るなら歯を磨いたり髪をとかしたりする
  • 玄関に行く
  • 靴を履く
  • ドアを開ける
  • 一歩踏み出す
  • もう一歩踏み出す
  • 更にもう一歩踏み出す
  • ステップ8と9とを最低30分繰り返す
  • しばしば、私は玄関に一時間以上座って、ただ靴を履こうという気持ちや動作と格闘しました。しかし、私が外に出たくなかったのと同じくらい、野外での運動により気分が更に悪くなったことは、かつて一度もなかったというのは、本当のことです。一度たりともです。エンドルフィンの好影響は一時的で、翌朝までは維持しませんでしたが、運動には累積的影響があり、毎週あるいは毎日、十分な回数を繰り返せば気分が良くなる以外はあり得ないと、信じています。

    非常に単純な何かが、精神疾患に対して実際大きな影響を与えることが可能だと考えるのは、単純過ぎるように思えますが、強力なエビデンスが声高く叫んでいます。精神疾患の神経性科学の研究では、運動が効果的な治療であることが示されています。


    運動の種類

    有酸素、筋力トレーニング、娯楽的エクササイズ、そして“グリーン・エクササイズ”

    Exercise and Mental Health - Naturopathic Approaches

    多数の研究で、精神疾患における運動の好影響についての調査が、有酸素運動について行われました。これは一般に、週60-300時間のジョギング、サイクリングそして他の同じ様な高負荷運動といった有酸素活動です。有酸素運動についての研究レビューでは、抑うつおよび不安スコアに有意な減少、認知の改善、そしてメンタルヘルスの多数の側面の改善における中心的特徴である自己認識の改善が示されています[4][5][6][7]。うつ病治療のための定期的な有酸素運動についての2016年のメタ分析では、運動は坑うつ剤による治療と統計的に同等に効果的であり、そのような薬剤での費用や副作用がないことが示されています[8][9]。運動と投薬治療とを組み合わせて利用する際は、どちらかの単独治療よりも好ましい反応が得られます。複数の調査では、統合失調症、双極性障害、注意欠陥他動症候群、そして強迫神経症の診断を受けた人の精神症状を減少させるのに有酸素運動が効果的であることも示されました[10][11][12][13][14][15]

    幸運なことに、メンタルヘルスを改善するのはランニンングとエアロビクスだけではありません。複数の調査では、有酸素的フィットネスに改善のない定期的な筋力トレーニングも同様に心理的に好ましいことが示されました[14][15]。定期的な重量挙げ、スポーツや他の種類の活動的な運動に加えて、厳しい高負荷のランニングも、気分を改善し、不安および抑うつスコアを低下させます[15]。これらの精神的ウェルビーイングに対する改善は、早歩き、テニス、ダンス、ウェイトトレーニングや、心拍数の上昇や筋肉の往復運動を伴う全ての運動を20分という短時間で週3-5回行うと、現れ始めます。

    米国およびカナダにおける人口全体研究のあるレビューによると、どのような種類の運動が脳に最も良いかについて、もう一つ興味深い話がありますが、これは娯楽的エクササイズが最良だということです。データを編集し、同量のエネルギーを、家事に使うグループと娯楽的エクササイズに使うグループとで比較したところ、娯楽的エクササイズに携わるグループに心理面でより大きな効果が示されました[16]

    最後に、その効果を最大限利用するために、運動を野外で行って下さい。運動および自然に触れ合うことは両方、健康の身体面および精神面に個々に良い影響を及ぼします。現在、研究により、これらを一緒に行うと、身体的かつ精神的な健康に相乗作用があることが示されています。この組み合わせは“グリーン・エクササイズ”と呼ばれ、自然に触れることのない運動よりも効果的であることが証明されています[17]


    運動の利益を享受するのは誰か?

    有意で測定可能な上記の心理的作用が、臨床人口(不安神経症や抑うつ障害の診断を受けた人たち)および健康な人口の両方で見られ、運動は精神疾患にある人たちとそれを予防したい人たちの両方で効果的であることが指摘可能です[20]。この作用は全ての年齢で見られ、青年から高齢者までの調査で示されました[7][21]。特記すべき興味深い点は、メンタルヘルスのパラメターに及ぼされる運動の好影響は、経済状態、年齢、性別、そして身体的健康状態とは独立していることです。これは、-フィットだろうとそうでなかろうと、若くても歳を取っていても、何時でも運動を始められ、そして運動の心理面での利益を享受出来るという意味です[16]


    運動はどのようにメンタルヘルスを支えるか

    メンタルヘルスに対する運動の好ましい効果には様々なメカニズムが携わっています。運動中に起きる、最初のそして恐らく最も顕著な生理学的変化は、心拍数および呼吸数の上昇です。これにより、脳を含む全身に更に多くの酸素が運ばれます[22]。運動中に増加した脳の血流により、栄養素、エネルギー、その他脳細胞の働きを支えるのに好ましいものが、脳に運ばれます。運動後には、ニューロンの活動パターンでさえ変化します。例えば、運動で血流と脳の代謝が変化すると、双極性障害の成人および子供における症候性神経反応が変化することが示されました。幾つかの調査によって、この病態に対する新しい初期治療として運動が提案されています[13][23]

    脳への血流増加も、枯渇してしまった神経伝達物質を補充するための代謝経路を活性化します。神経伝達物質を使い切ってしまう状態というのは、多くのメンタルヘルス障害では一般的です。カリフォルニア大学デイビス校の精神医学と行動科学の学部の教授であるリチャード・マドック博士は、“代謝の観点から、積極的な運動は、エネルギー面で脳が遭遇する最も要求の厳しい活動で、微積分やチェスよりもずっと激しいものだが、この時に脳が(全てのエネルギーを用いて)行っている事の一つに、神経伝達物質の生産がある”と説明しています[24]。これは、多くのメンタルヘルスの問題に直接の好影響を及ぼします。例えば、大うつ病エピソードには、しばしばグルタミン酸やGABAの枯渇が特徴です。これらの神経伝達物質は二つとも、運動により代謝経路のスイッチが入ります[24]

    運動は血流だけでなく脳の代謝にも作用し、更に脳を物理的に変化させます。オルソンら(2006)により、定期的な有酸素運動は新しいニューロンを生成し、記憶および思考に関わる脳の一部の海馬の質量を増加させることが示されています[25]。それに加えて、運動によって体内の細胞にストレスがかかると、脳内では成長因子が放出され、これが更に新しい脳細胞の生存を改善します[26]。デスランデスら(2009)は、老化に関連する脳の物理的変化に対する運動の保護効果について検討し、長期的に見て最高の脳機能を得るためには運動が必要不可欠であり、最終的に老化に関連する認知の衰えが出る確率を低下させると結論を下しています[27]


    あなたに出来ること Exercise and Mental Health - Naturopathic Approaches

    今日から運動を始めて下さい。運動はそれほど大変ではなく、一晩でフィットになる必要もありません。しかし、心拍数を上げ、筋肉を使うために定期的な運動をするという目標を誓うことは、長期的にあなたのメンタルヘルスを支えるには十分でしょう。可能ならば、緑のある野外環境で運動して、更に大きな利益を享受して下さい。週三回の散歩で、副作用なく費用もかけずに十分変化を感じることが可能です。もしそれが役立てば、同じような考えの人たちのグループを見付けて一緒に運動して下さい。これは、あなたのメンタルヘルスをこの記事で議論されている様に改善するだけでなく、コミュニティ、交友、そして友情の感覚をもたらし、これらが気分に良い影響を及ぼします。私は、2008年の数ヶ月間、私に重くのしかかったうつ病を跳ね返すために、テニスをしました。友達の一人が一緒にテニスをしようと言って来たので、私たちは週に数回、夜にテニスを始めました。すると、私は友達との社会的な活動に携わり、新鮮な空気のある外に出て、日光・ビタミンDを浴び、そして食欲は運動によって刺激されました。この2ヵ月後、私はもう抑うつでなくなりました!

    メンタルヘルスの支援は、私たち個々の将来や未来の世代にとって、益々重要な目標になりつつあります。運動は安価で、効果が高く、そして安全な治療オプションであり、メンタルヘルスの問題のための包括的なウェルネス治療プランの一部に含まれるべきです。もし私たちが一つの国として、運動に参加し、関わるならば、現在および未来における社会のメンタルヘルスの問題に対処することが可能でしょう。


    参照文献

    略歴:クリスティーナ・ビョーンダル商学士、自然療法師。ブリティッシュコロンビア大学を1990年卒業、商学士(優等学位)。卒業生総代。CCNMにて自然療法医学の博士課程を2005年に修了。ビョーンダル医師は、うつ病、不安神経症、双極性障害、摂食障害、ADD/ADHD、OCDそして統合失調製感情障害といった精神疾患の治療を専門とするカナダで数少ない免許を持つ自然療法師の一人です。メンタルヘルス分野の多くの課題を克服したクリスティーナ医師は、人生の障害を乗り越える方法や、人が自分の持つ力を100%出すための方法についての、モチベーショナルな講演活動を行っている、とりわけ稀有な存在です。現在、メンタルヘルスについての本を執筆中。www.drchrisbjorndal.com