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大腸ガンとヤドリギ

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大腸ガンとヤドリギ-レビュー
ベッキー・リー自然療法医師

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大腸ガンとヤドリギ-レビュー




大腸ガン

2015年には、男性14人のうち1人が、女性16人のうち1人が大腸ガンの診断を受けました。大腸ガンは、男性ではガンによる死因の第二位で、29人中1人が大腸ガンで死亡し、女性ではガンによる死因の第三位です[1]

これほど多くの人たちが大腸ガンの診断を受け、大腸ガンに悩まされていることから、この病気とより良く闘うのを助けるためには、従来の治療法からそうでないものまで、更に多くの治療法が必要とされています。ヤドリギ抽出物の注入療法は、大腸ガンを含む多くのガンに対するもう一つの武器となる可能性を秘めた治療法であることが証明されました。


ヤドリギとは何か? ヤドリギとは何か?

クリスマス期間中のそのロマンチックな外観は別にして、実はこの植物はもっとも良く研究されているガン補完療法の一つなのです。欧州でヤドリギ(あるいはViscum album)は、ガン患者に対して一番良く処方される薬のうちの一つです[2]。ヤドリギは、松、オーク、楓、リンゴ、そして樺といった幾つかの種類の木の上で育つ半寄生植物です[2]。ヤドリギは何十年もの間、頭痛、高血圧症、更年期障害の症状、不妊、関節炎、リウマチのような、他の複数の病態に利用されてきました。投薬治療のためのヤドリギは、Iscador、Helixor、Abnoba Viscum、Lektinol、そしてIscucinといった異なるブランド名で販売されています[2]。ヤドリギは通常、皮膚の下に注射(皮下注射)で投与しますが、経口あるいは(静脈の中への)静脈注射によっても投与可能で、更に腫瘍や胸腔に直接注入することもできます。反応の大きさや訓練を受けた医療専門家の判断によりますが、大半の場合、注入は最大で週三回行われます。


ヤドリギはどのように働くのか? ヤドリギはどのように働くのか?

何十年もの間、欧州ではヤドリギ(あるいはViscum album)の調合はガンの治療に利用されてきました。試験管実験によると、ヤドリギは複数の方法で効果を発揮するようですが、それらは腫瘍細胞の増殖・成長を阻害する、アポトーシス(プログラム細胞死)を誘発する、そして遺伝子発現特性といったものです[3]。とりわけ、ヤドリギ抽出物に含まれるレクチンには強力なアポトーシス誘発力および免疫刺激作用があり、ヤドリギの薬効の大半はレクチンによるもののようです[4]。レクチンの働きには、生体内および試験管内におけるマクロファージ、単核白血球、顆粒球、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、そして樹枝状細胞の活性化に加えて、様々なサイトカインの誘発といったものがあります[5]

ヤドリギは、全ての作用機構がまだ明らかにされていない一方で、その細胞毒性やガンを殺す性質を有するのに加えて、βエンドルフィン(“快楽“ホルモン)の生産も促すようです[6]。ヤドリギは、腫瘍が成長するのに必要とされる新しい血管の形成を防ぐことも示されましたが、更に白血球内にあるDNAを化学療法の影響のから保護するようです[2]


副作用

ヤドリギ抽出物の安全性については多数の文献があり、副作用は殆ど報告されていませんが、充血、ヒリヒリするような痛み、そして皮下注射の部位の炎症、頭痛、微熱、そして寒気といったものがあります。非常に希ではありますが、アレルギー反応も報告されています[7,8]


研究では何が示されているか? 研究では何が示されているか?

全く包括的なものではありませんが、ヤドリギを大腸ガン患者に利用できる幾つかのシナリオは次のものです。

予防
Viscum album 抽出物は多くの異なる状況で様々な種類の癌に、特に欧州で利用されてきました。それは、前ガン状態の病害が悪性に転じるのを防ぐためにすら使われてきたことが報告されています。ステージIIICの結腸癌で半結腸切除術を行ったあるコーカサス人男性の症例では、この利用法が際立っています[4]。ガン診断の5年後、この患者で結腸腺腫性ポリープが見つかりましたが、彼は外科的除去を拒絶しました。このような種類のポリープは大半の大腸ガンの原因ですが、腺腫様ポリープの高度の異形成はガン化リスクが最高です。Viscum album 抽出物の腫瘍内注射を2回行った8ヶ月後に、この前ガン状態の高度結腸線種性ポリープは完全に縮小しました[4]。これは単なる偶然でしょうか?多分そうかも知れませんが、しかし結腸ポリープの自然消失は、家族歴のある結腸腺腫様ポリープの患者さんでたまにあり、侵襲性大腸ガンの自然寛解の報告は存在する [9]一方で、それ以外での結腸ポリープの消失は普通ではありません[10]。この症例の良好な結果に関係なく、どんな時にも結腸腺腫性ポリープには外科的除去を行うことが賢明です。

免疫調整
免疫調整は、一般にガンについて語る際に重要ですが、外科的処置においても重要な役割を果たします。ガンは免疫を抑制する可能性がありますが、外科的処置(麻酔、ストレス反応、局所貧血・再かん流など)は更に免疫システムを押さえ込む可能性があります[11,12]。とりわけ大手術は、ナチュラルキラー(NK)細胞の細胞毒性あるいはガンを殺す働きを抑制しますが、このNK細胞は腫瘍細胞に対する細胞性免疫反応で重要な働きをすることから、これがガン患者さんに悪影響を及ぼす可能性があります。

このような研究の一つでは、腫瘍切除を受けた大腸ガン患者さんたちが無作為に、ヤドリギの浸出液あるいは付加療法なしのどちらかに割り振られました[13]。研究期間中、ヤドリギ抽出物の治療を受けた患者さんたちのNK細胞活性には有意な変化がありませんでした(手術24時間後で7.9%低下)。(無ヤドリギの)対照群の患者さんたちでは、手術後にNK細胞活性は有意に低下しました(24時間後の時点で44.4%低下)。手術前後のヤドリギ抽出物浸出液を利用することによって、ガン患者さんたちのNK細胞活性の抑制を防ぐことができるかも知れません[13]

手術とガンの免疫抑制効果が組み合わさると、術後の感染およびガンの広がるリスクが上昇します[14]。手術前後で免疫療法を行うことにより、免疫システムの働きを改善し、ガン自体への耐性、特に循環している腫瘍細胞の転移の防止が上昇するかも知れません。この治療法の強みは、正常細胞に対してではなく、相対的にガン細胞に対する選択的毒性や[15]、例えばリンパ球の細胞毒性を刺激することによる免疫調節作用があることです[16]

化学療法および放射線療法のサポート
ガンに関連した疲労(CRF: Cancer-related fatigue)の症状は、何も出来ない状態になることで、これは患者さんが診断を受けてから治療を経てガンを克服し人生が終わるまでに良く見られます。定義は“人を感情的に圧倒するようなしつこい疲労“で、身体的および精神的な活動能力が低下しますが、これは休息により緩和します[17]。ある研究では、化学療法あるいは放射線療法のプロトコルを初めて受ける2つのグループの疲労レベルを調査しました。一つのグループはヤドリギ調合の支持療法を受け(Iscador® Qu—患者181人)、もう一つはこのような支持療法を受けない対照群(患者143人)です[18]。全ての患者さんは大腸ガンのI-IIIのステージで、Iscador® Quの支持療法を受けるのに好ましい候補者は、術後のアジュバント化学療法あるいは化学放射線療法の期間中に非常に気分が悪くなる患者さんでした。週一回あたり合計平均投与量16-20mgの水溶性の注入可能なヤドリギ抽出物の調合を、皮下注射しました。中央値8.6ヶ月の治療期間の終了時には、ヤドリギ群で8.8%あるいは181人中16人の患者さんたちがガンに関連した疲労の診断を受け、ヤドリギの支持療法のなかった群では60.1%あるいは143人中86人が診断を受けました[18]。更に励みになることに、この支持療法による毒性は全く見られませんでした[18]

ガンに関連した疲労では、抗炎症性を持つヤドリギの抽出物質が、ガン関連疲労を引き起こし長引かせる持続性非特異的炎症反応を打ち消すようです[19]。これらの抗炎症プロセスが、大腸ガン患者さんの化学療法あるいは化学放射線療法のプロトコル内で、ガン関連疲労症状を減らし生活の質を改善するための支持療法としてヤドリギ抽出物質を利用することの、科学的および臨床的な論理的根拠となっています[20]

欧州では、生活の質および生存率を改善するために、大腸ガン患者さんたちは頻繁にヤドリギ抽出物の投与を受けます。これを際立たせたある研究では、ステージI-IIIの大腸ガンの外科的治療の後、支持療法あるいは従来のアフターケアを受けた患者さんたちを調査しました[20]。指標となったのは、支持療法に関連する副作用(AT-ADRs: adjuvant therapy–related adverse reactions)、症状、そして無病内生存(DFS: disease-free survival)です。26つのセンターから804人(ヤドリギ429人 v.s. 対照群375人)のガン関連疲労患者さんを、中央値58ヶ月 v.s. 51ヶ月の期間、観察しました。ヤドリギ療法の中央値は52ヶ月でした。これらの患者さんたちでは、支持療法に関連する副作用が少なく(19%対48%)、そして継続する症状が少ないことが示されました。ヤドリギ患者さんたちは対象に対して生存利益があるようです。ヤドリギは耐性良好で、命を脅かすような有害な薬物反応や腫瘍促進性がありません[20]

最近の臨床試験では、術後にヤドリギと化学療法とを組み合わせると、進行大腸ガン患者さんの生存率が上がることが示されました[21]

他のベネフィット
生活の質の改善は、多くの研究を通して文献となっています[22]。対照群の患者さんたちに対してヤドリギの治療を受けた患者さんたちの全員で、生活の質および感情的な状態の両方での改善があるということは、複数の臨床試験で一致しています[23]。研究によって、進行ガンにおける生存率の上昇と、ガン再発の減少とに関してのベネフィットが示されています[14,23]

それに加えてヤドリギは、鎮痛効果のある内因性オピオイド薬かつ気分や食欲を高める作用のあるβエンドルフィンの生産を刺激するため[6]、生活の質の問題の領域で患者さんたちを助けることができるでしょう。

私たちが未だにガンの治癒方法を手にしていないこの時代にとって、ヤドリギあるいはViscum album抽出物のような治療法は、ガン患者さんたちの健康の最適化に役立つ利用可能なツールを提供します。何十年もの間繰り返された広範囲に及ぶ前臨床データおよび臨床研究によって、ヤドリギの抽出物はガンの支持療法において最も魅力的なアプローチの一つであることが提示され、現在では国立がん研究所や国立衛生研究所でも認知されています[14]。欧州における広範な利用は、とりわけこの治療法の有効性とベネフィットとを語っており、カナダ人患者さんたちにも潜在的ベネフィットがあることを強調しておく価値があるでしょう。