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間欠絶食

Crystal Ceh
HBSc, ND

17 July 2016
日本語

間欠絶食 - 最新の気まぐれなダイエットか、それとも減量と長生きの聖杯か?
by: クリスタル・セ名誉学士、自然療法医師

トロント、オンタリオ州
www.Crystalcehnd.com
http://www.coreessentialshealth.com



間欠絶食 - 最新の気まぐれなダイエットか、それとも減量と長生きの聖杯か?


周囲を見て下さい。肥満は人々の健康、ウェルビーイング、そして長寿に影響する世界的な健康問題で、現代における疫病と考えられています。世界保健機関(WHO: World Health Organization)の2014年の統計によると、成人の39%は太り過ぎで、13%は肥満と見なされています[1]。更に驚くべきことに、2014年現在で、太り過ぎあるいは肥満の5歳未満の子供は4200万人を超えています[1]。カナダでは、成人の54%が太り過ぎと考えられ、これらの大人4人のうち1人は肥満です[2,5]。そして肥満は、ほとんど全ての慢性疾患(糖尿病、心疾患、ガンなど)の罹患率およびリスク因子の上昇との相関があることから、人々だけでなく医療専門家たちも、この巨大な問題に立ち向かうのに役立つような最新のツール、ストラテジー、あるいはサプリメントを常に探し求めているのです。

私たちは、短期的および長期的の両方での体重管理の成功において、ライフスタイル介入(食事、運動、ストレス管理)が基本的な役割を果たすことは分かっており、一日当たりのカロリー制限(DCR: daily caloric restriction)は多分、減量のための最も行き渡っているストラテジーでしょう[4]。底炭水化物アトキンスダイエット(Atkins Diet)やよりバランスの取れたゾーンダイエット(Zone Diet)のように、主要栄養素の含有量を巧みにコントロールする多くの継続的な制限の多いダイエットが存在ますが、全てのものには二つの共通点があります。
1) カロリー摂取を減らす
2) 減量の活動期は一回のみにする[5] 一般にこのストラテジーを利用することにより、急速な短期減量を達成し代謝プロファイルを改善することが可能ですが、その一方で長期的な食事療法および体重減少は安静代謝率の減少とも関連があり、これは減量が停滞し、体重が再び増加するのに寄与するかも知れません[5]。その結果として、長期的減量の成功率は非常に悪いままで、私たちは減量およびプログラム維持の聖杯を更に探求することになるのです。

近年現れ、急速に人気のダイエットとなったもう一つの栄養ストラテジーは間欠絶食(IF: intermittent fasting)ですが、この幅広い用語は期間を延長して絶食する行為を言います。そして、特定の食事および絶食のプロトコルが存在する一方で、私たちは間欠絶食の何らかの形のもの-これを睡眠と呼んでいますが-を毎日欠かさず実行します。典型的な睡眠・覚醒のサイクルを想定すると、夜の最後の食事から朝の最初の食事までは“絶食時間帯”と見なされ、あなたの朝一番の食事から夜最後の食事までは“食事摂取時間帯”と見なされます。ですから、もしあなたがどのみちこれを毎日行うならば、この“新しい”ダイエットはこれほどもてはやされているのでしょうか?

まず、間欠絶食は今に始まったことではありません。人は歴史を通して、ハンガーストライキから食糧不足や飢饉、そして宗教的理由による断食まで、何らかの形でのカロリー摂取制限を経験してきました[6]。新しくエキサイティングなのは、健康および長寿に対する間欠絶食の数々の利益に、研究が光を当て始めているからです。進化の大きな構想においては、人間や大半の家畜は完結的に、また多くの種は、自分たちを食糧不足の開始に合わせて休止モードになるよう適応させました。興味深いことに、休止に関わる遺伝子の多くは寿命のコントロールにも携わっています。例えば、一日おきに24時間あるいは週二回24時間絶食している齧歯類は、減量および総食物摂取量とは独立して、彼らの寿命を30%延長しました[7]。彼らは更に、炎症および酸化性ストレス低下だけでなく細胞機能の高まりおよびストレス反応の改善といった他の健康改善も経験しました[7]。研究によって提案された利益は全て、”外見と気分が良くなる”および”長生きする”生理学的な変化のカテゴリーに該当しますが、これには次のようなものがあります。

  • 血糖コントロールの改善-インスリン感受性の改善、これは食物からの栄養が(それらが利用される場所である)細胞に取り込まれ、II型糖尿病のリスク低下および保房となることを意味します。
  • 細胞機能の改善-この改善が起これば、DNAへの損傷が少なくなり、細胞の損傷の修復が改善します。
  • 脳機能の改善-記憶力および決断力だけでなくアルツハイマー病や痴呆のリスクの低下が含まれます。
  • 血圧およびコレステロール値の低下-心疾患および卒中のリスクが低下します。
  • 前立腺ガン、乳ガン、そして膵臓ガンの発生率が低下します。
  • 代謝および脂肪燃焼能力の増加-身体組成の改善および引き締まった体格[4, 6–10]

このデータ全ては感動的で説得力がありますが、齧歯類および猿による実験結果を人間の被験者へと延長することは難しいため、話半分に聞いておくべきでしょう。ですから、食事を抜かしたり丸一日食べなかったりし始める前に、人間を対象として研究および特別な間欠絶食のプロトコルについて見てゆきましょう。

人気のある間欠絶食プロトコルの大半は、隔日絶食、一日絶食、そして時間制限摂食の三つの分類に該当します。隔日絶食(ADF: alternate-day fasting)では、一日当たり必要なカロリーの25%のみの食事を一回のみ取る日と、何でも好きなものを好きなだけ食べるという意味のad libitumの日とを、一日交互で行います[4]。一日絶食(WDF: whole-day fasting)では、一週間で完全に絶食する日を1-2日選び、絶食に続き一週間のうちの5-6日をad libitumの日としますが、絶食の日に一日当たり必要なカロリーの25%まで(おおよそ男性で600kcalの摂取、女性で500kcalの摂取)の食物摂取を許すプログラムもあり、これは修正絶食となっています[4,6]。時間制限摂食(TRF: time-restricted feeding)では、一日当たり絶食を12-20時間の範囲、そして摂食を4-12時間の範囲として、特定の時間数を食事摂取時間帯および絶食時間帯に割り振り、毎日同じ様な食べ方をします[4]。更に、時間制限摂食プロトコルの多くは、摂取食物の種類および運動スケジュールに応じた主要栄養素のタイミングについて様々です。


隔日絶食

齧歯類の研究と同様に、人を対象とした短期間(2週間以内)の隔日絶食についての研究では、正常体重の被験者の体重への効果は何もないことが示されました[4]。しかし、この調査が3週間以上延長された際には、おおよそ2.5%の体重の減量があることが分かり、この効果は、被験者たちが再摂食日に体重を維持するために充分なカロリーを摂取できなかったことが原因であるかも知れないと研究者たちは提議しました[11]

隔日絶食

Barnoskyらによるあるレビュー調査では、隔日絶食の研究7つからの知見から、被験者たちは3-24週の治療後に3-8%の体重が減り、絶食日に食事を提供された被験者たちで最も著しい減量が起こるという結果となりました[12]。平均して、隔日絶食の研究では、他の間欠絶食法と比較して減量の速度がより速いことも示されており、減量の速さの平均は一週間0.25kgに対して0.75kgとなっています。減量が慢性疾患リスク因子と関係があるという理由でより重要なのは、隔日絶食の調査5つでは、6-24週の期間に渡って内臓脂肪(胴体中心部および内臓の周りの脂肪)が4-7%減少したことです[11]。残念なことに、これらの調査では、胴囲から間接的に内臓脂肪を測定し、MRIやDEXAスキャンで直接測定しませんでした。しかし、胴囲は、内臓脂肪症だけでなく心疾患、糖尿病、そして他の慢性疾患のリスク上昇と相関の高い客観的測定値として広く用いられているため、ここでさえも臨床上の洞察を提示します。とにかく、体重減少および脂肪量の減少は、隔日絶食プロトコルで一貫して示され、それは肥満、太り過ぎ、そして正常体重の人たちによって明らかとなりました[4]。幾つかの隔日絶食の調査でも、一貫性に欠けてはいるものの、総コレステロール、トリグリセリド、そしてLDLコレステロールの値の低下を伴う心血管疾患リスクの低下が示されました。

減量をゴールとした食事の変更および運動は、前糖尿病の人々のための一次治療とみなされており、集中した食事および運動の介入によって、リスクの高い前糖尿病の人々がII型糖尿病を完全に予防することが可能なことが臨床試験により一貫して示されました[12]。当然のことながら、これらの調査では、これらの被験者たちの空腹時血糖値およびインスリン値の減少も示されました。前糖尿病の人たちを対象とした幾つかの隔日絶食の調査では、これらのパラメターも評価しましたが、一貫性のある、しかし小さな(3-7%)減少が空腹時血糖値に、そして中程度(20-30%)の減少が空腹時インスリン値に、8-12週に渡って見られ、最大の減少はより長期間の調査で観察されることが示されました[12]。最後に、Barnoskyらのレビューは、隔日絶食を毎日のカロリー制限(DCR: daily caloric restriction)戦略と比較したところ、減量、内臓脂肪減少、空腹時インスリン値、そしてII型糖尿病リスク低下の全ての結果は有効性において同等であることが分かりました[12]


全日絶食

隔日絶食の試験と同様に、全日絶食(WDF: whole-day fasting)の研究では一貫して、体重および体脂肪の減少が示されました[4]。しかし興味深いことに、これらの調査の全てが、1-2日の絶食(あるいは、絶食日に被験者たちが少量の食物を摂取する絶食を緩和したもの)あるいは全体的なカロリー制限を組み合わせていました。つまり、一週間の総カロリー摂取量は低く設定され、全日絶食の本来の定義がほのめかす通りad libitum(何でも好きなものを好きなだけ食べること)はありません。毎日のカロリー制限(DCR: daily caloric restriction)と比較すると、体重および体脂肪の減少にグループ間の違いはなく、すなわちこれらは同等に効果的でした[4]。そして通常の摂食パターンを踏襲している対照群の被験者たちと比較すると、全日絶食では体重および体脂肪の著しい減少が示されました[4]

Alternate-Day Fasting

全日絶食の調査は、結果は様々ではあったものの、太り過ぎおよび肥満の女性たちで冠動脈性心疾患のリスクを低下させるのを助けることも示されました。これらの調査の多くでは、血圧、空腹時トリグリセリド値、総コレステロール、LDLコレステロール、血圧、そして高感度C反応性たんぱく質に著しい減少が報告され、その結果は毎日のカロリー制限を行っている対照群の被験者と同等であることが報告されました[4,5,8,13]。全ての調査で、一週間あたりの絶食日数が同じであった訳ではないことに注意することが大切です。一週間あたり二日の絶食日を必要とした研究では、これらの絶食日が連続していたかそうでないかで違いがあり、全ての被験者たちで血中資質や血圧の変化が報告されたわけではありませんでしたが、これが複数の調査を全体として比較する可能性を制限します[4]


隔日絶食

今までに、時間制限摂食が体重へ及ぼす効果を評価した11の調査が完了しましたが、2つは4時間の時間制限摂食の効果を詳細に調査し、3つは7-8時間の時間制限摂食をテストし、6つは10-12時間の時間制限について調査しました[14]。4時間の時間制限摂食を評価したこれらの調査では、被験者たちは体重を維持するためにad libitum(何でも好きなものを好きなだけ食べること)の指示を受けたために、の体重には何の変化も示されませんでした[14]。7-8時間の時間制限摂食を吟味した3つ調査のうちでは、同様の研究デザインであったにも関わらず、たった一つのみが4週間の介入の後、体重に5%の減少を示しました[14]。このうちの1つの調査は他の2つと比較してエネルギー摂取が低かった可能性がありますが、エネルギー摂取は他の調査のうちの1つでしか測定されなかったために、それを確かめることは出来ません[14]。10-12時間の時間制限摂取について詳細に調査した試験では、一貫して1-3%の体重の減少が明らかとなりました[14]が、これらの試験の大半は、食事摂取時間帯が夜となるラマダンにおける試験であり、通常7-8時間が睡眠に使われることから、実際の食事摂取に制限があり得ることに注意すべきでしょう[14]

Time-Restricted Feeding

Stoteらは、4時間の時間制限絶食を用いたパイロット試験を行いましたが、これはTinsleyとLa Bountyの2015年のレビューの対象のたった一つの調査で、それはこの調査がラマダン試験であってはならないという試験対象患者基準を満たしていたことが理由です。この研究では無作為交差試験計画が採用され、8週間の間一日1食あるいは一日3食かのいずれかを11週のウオッシュ・アウト期間を挟んで摂取します。被験者たちには、試験の一日1食のフェーズには夕方4時間の時間制限絶食時間帯与えられました。一日1食のフェーズの後、結果は肯定的および否定的なものの混ざった転帰が示されました。被験者たちは一日1食フェーズの後、体重および脂肪量が減少し徐脂肪量が増加しました[15]。しかし、彼らの総コレステロール、LDLコレステロール、そして血圧も上昇しましたが、これは心血管疾患のリスク因子として知られています[15]。時間制限絶食についてのデータが限られており、更に健康マーカーに関する結果が混在しているため、この絶食法の有効性や安全性について確固とした結論を下すことは出来ません。

間欠絶食についての研究は有望ですが、明らかに多くの制限があります。全体として見れば、プロトコルの種類、期間、被験者のサンプル数、そして測定結果に大きなばらつきがあります。その結果として、間欠絶食のプロトコル間の比較を行うことが難しくなっています。更に、一つの栄養ストラテジーが長期的な減量を成功させるために効果的であるかどうかを評価することには、減量に続き体重が維持されなければならないために、非常に長期に渡る臨床試験が必要ですが、これはしばしば実行が困難です。寿命を延ばすと言われる全ての方法も同様に、大規模な集団に長期に渡ってこの栄養上の戦略に従ってもらい、追跡調査を行う必要があり、これはまだ人を対象として行われたことがありません。しかし、間欠絶食についての予備的なエビデンスは、少なくとも毎日のカロリー制限と同じ程度に減量、脂肪の減少、そして数多くの他の健康マーカーに効果的であることが示されました。ですから、従来の毎日のカロリー制限の方により困難さを感じる人たちは、間欠絶食は減量および健康改善のための代替のアプローチとして考慮されるかも知れません。そして科学的研究を超えたところでは、減量成功の事例報告、印象的な減量前後の写真や最近のソーシャルメディアでの間欠絶食にまつわる噂により、この栄養戦略は主流の市場で信じがたいほど魅力的になっています。さあ、思い切って間欠絶食を試すべきであることに納得しましたか?それは時期尚早です(冗談失礼!)…。あと幾つか考慮すべき重要な点があります。第一に、長期的な減量の作成ということになれば、コンプライアンスの問題が出てきます。もし食事法を守ることが出来なければ、どんなに良いプログラムと言われていようとも、山のようなエビデンスによって支持されていようとも、実際関係ありません。断食や長期のエネルギー制限は、空腹と満腹との信号をテストすることになり、人はエネルギー欠乏から来る多くの望まない副作用を経験し、長期間の食事法の順守が困難あるいは不可能となるかも知れません。また、短期的減量は間欠絶食により達成可能である一方で、単に多くの人々はこの種の長期的食事テクニックに向いていないかも知れません。

考慮すべきもう一つの事柄は、間欠絶食は、特に絶食日以外にad libitum(何でも好きなものを好きなだけ食べること)スタイルでの食事をするならば、間接的および全体的に悪い食事習慣を育てる結果となる可能性があります。プロトコルの大半では被験者たちはカロリー制限と平行して間欠断食を行うため、一週間ベースで摂取する全部のカロリーはより少なくなることが、研究レビューにより示されました。そして、これはコントロールされた環境では結構なことであり素晴らしいことでありますが、そこから一歩出た現実世界では、人々は間欠絶食の絶食日以外は制約がなく、栄養的には無のジャンクフードを無茶食いするものと解釈する可能性があり、これは健康的な食物との関係を徐々に身に付けるのを助けることはなく、更に摂食障害の経験のある人に考慮すべきでないストラテジーであることは確かです。

間欠絶食を試す前に考慮すべき最後の事柄は、この種類のストラテジーは、短期的および長期的の両方において安全かどうかということです。減量を目的としてカロリーを著しく制限する際にはいつでも、あなたが何を食べているのかも考慮する必要があります。1000カロリーのドーナツ、ポテトチップス、そしてビールは野菜、果物、健康的な脂肪、そして脂身の少ないタンパク質の1000カロリーとは別の物です。勿論、これらの両方で減量することでしょうが、恐らくあなたは各プロトコルでは、あなたは非常に違ったように感じ、機能することでしょう。効果の高い短長期の減量への分別のあるアプローチは、栄養失調や栄養不足を起すことのないカロリー制限を考慮しなければなりません。コントロールされた環境においては、通常は研究者たちが被験者のために食事あるいは少なくとも食事の手引きを提供するため、これは説明することができます。あなたが減量ストラテジーとしての間欠絶食を試す間あなたをモニターできるような登録栄養療法士、ホリスティック栄養士、経験のある栄養コーチ、あるいは自然療法医のような訓練を受けた専門家の助けを求めることが、特にあなたに影響を受ける可能性のある何らかの内科的疾患があるならば、強く推奨されます。私たちの大半は急激な減量および極端な体形の変化の魅力に誘惑されますが、最も成功する長期的減量はしばしば、栄養、運動、そして生活習慣に対する小さな徐々に増加する変化によるものです。ですから、もしあなたが絶食をしようとするならば、快くゆっくりとして下さい! 参照文献