季節性感情障害
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季節性感情障害(SAD)は、冬にのみ存在するうつ病の一種です。季節に伴い変化することのない臨床的うつ病とは異なり、春が訪れると回復することが多いです。[1]
季節性感情障害を患うと、様々な面で非常に制限され、仕事や対人関係、日常生活に支障をきたす恐れがあります。
症状は以下です:[1]
- エネルギーの減少
- 集中力の低下
- 怠惰感
- 食欲の増加(食欲が減少する夏とは対象的です)
- 孤独を好む
- 睡眠時間の増加
- 体重の増加
従来の治療法:[2]
Conventional treatments [3]:
- 従来の抗うつ薬(主にブプロピオン)
- 朝日浴または光線療法
抗うつ薬療法、光線療法、心理療法は、最も一般的な季節性感情障害の従来の治療法です。自然療法には、食事療法、サプリメント、漢方薬など、補完療法と代替療法の両方があります。心身療法や漢方薬も冬の時期に有効です。
自然療法
L-トリプトファン、メラトニン、オトギリソウ(セイヨウオトギリソウ)は、睡眠-覚醒サイクルを調整する神経伝達物質セロトニンと相互作用するため、季節性感情障害に効果がある可能性があります。[1]
ある研究によると、L-トリプトファン、メラトニン、オトギリソウなどの天然物質により、症状が回復する可能性があるといわれています。注目すべき点は、オトギリソウには紫外線による影響を高める働きがあることです。通常、紫外線による影響は望ましくないかもしれませんが、季節性感情障害の治療においては、紫外線の吸収を高めた方がよいでしょう。[1]
ビタミンD
冬は、日光から得られるビタミンD量が夏よりも少なく、これが季節性感情障害の主な要因です。[1] ビタミンDまたは1,25‑ヒドロキシコレカルシフェロール(ソルトリオール)は、脳幹や脊髄の自律神経、感覚、運動成分の核内受容体細胞にかかわる分泌作用を媒介します。臨床試験によると、ビタミンD 400 IUおよび800 IUを補給すると、自己申告による影響が改善し、悪影響が軽減されるといわれています。[2] 他の研究においても同様の効果が示されています。
魚油
魚油とうつ病などの情緒障害との関係については、研究結果はまちまちですが、一部の研究では効果が示されています。[1]抑うつ障害を患った場合、脂肪酸代謝が変化して、オメガ6脂肪酸による炎症が増加します。理論上、オメガ3脂肪酸を補給すると、この反応が弱まって、炎症、つまり抑うつ症状が緩和します。また、ビタミンDと魚油には、セロトニンの生成を促す効果があり、気分障害に有効です。ビタミンDは、脳内のセロトニン生成において重要で、トリプトファン水酸化酵素を転写活性させる働きがあり、これによって、セロトニンの前駆体であるトリプトファンが生成されます。また、魚油に含まれるオメガ3脂肪酸には、細胞膜の流動性を高めてセロトニンの放出を促す効果があるといわれています。[2][3]
光線療法
朝日を浴びて概日リズムを強化することで、季節性感情障害の症状を容易に緩和でき、推奨されています。朝日浴の他に人工光への曝露もあります。一般に、光線療法には狭帯域青色光や10,000ルクスの可視光が用いられ、これによって、ハミルトンうつ病評価尺度17項目が改善されるといわれています(季節性感情障害の問診票より)。[1]
精密検査
季節性感情障害と同様の症状や関連した症状が生じる疾患もあるため、適切な対処が大切です。例えば、甲状腺機能低下症と副腎疲労には同様の症状があり、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺ホルモン(T3、T4)、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(抗TPO抗体)、血清コルチゾール値を含む自然療法による検査が必要です。こうした臨床検査に加え、ハミルトンうつ病評価尺度や季節パターン評価質問票(SPAQ)、ベックうつ病調査票などの問診票もあります。季節性感情障害に関連するその他の疾患は、うつ病、双極性障害、月経前症候群です。
ライフスタイル[1]
ライフスタイルの推奨事項には、食事、運動、生活習慣の変更があります。カフェインや単糖、アルコールは、うつ病の症状を悪化させる可能性があるため、制限しょう。カフェインは、時間の経過とともにセロトニン値を低下させ、単糖は血糖値を急上昇させるため、摂取することで気分が悪くなる恐れがあります。アルコールも身体機能を抑制するので、うつ病の場合はお勧めしません。
研究により、高炭水化物食によってセロトニンの異常を緩和できる可能性があるといわれています。 ある研究では、炭水化物を豊富に摂ることで、ハミルトンうつ病評価尺度が50〜76%減少することが示されています。キノア、玄米、全粒穀物などの複合炭水化物を摂りましょう。トリプトファンも効果があります。トリプトファンが含まれる食品は、七面鳥、カボチャの種、卵、チーズです。
筋力トレーニング、サイクリング、競歩、ジョギングなどの有酸素運動を30分以上、週3回行いましょう。食事療法や運動の他にも、ブラインドを開けっ放しにする、窓から外を見る、曇りの日には室内の照明を明るくするのも有効です。また別の研究では、認知行動療法は光線療法よりも効果があることが示されています。[1] 昨年の冬、認知行動療法により、それほど深刻な症状が現れませんでした。
ハーブ療法
オトギリソウ(セイヨウオトギリソウ)
オトギリソウは、うつ病の治療のために広く研究されていて、季節性感情障害に有効です。ある研究では、6〜12ヶ月間、オトギリソウを摂取することで抗うつ効果が観察されました。[1]これは、オトギリソウには、抗うつ効果のあるハイパーフォリンが含まれていて、ノルアドレナリンとドーパミンの再取り込みを阻害し、脳の興奮を抑えるGABA受容体や視床下部-下垂体-副腎系の機能を調整する働きがあるためです。[2][3]
ラベンダー[1]
ラベンダーと季節性感情障害との関係については、特に研究されていませんが、一般的なうつ病や不安症に関する研究は数多くあります。
ラベンダーは、ドライフラワーにしたり、煎じたり、入浴剤として用いたりできます。エッセンシャルオイルは、吸入オイルやマッサージオイルとして利用できるため、非常に便利です。油なので、辺縁系の嗅腺を介して感情を司る神経系に素早く届きます。
レビュー研究では、ティーツリーやローズマリーとともにラベンダーのアロマセラピーを行うことで、神経疾患の長期入院患者の精神的苦痛が緩和されることが示されています。こうした研究結果に加え、ラベンダー2%を用いたアロマセラピーを4週間行うことで、 エジンバラ産後うつ病自己評価票が大幅に改善するといわれています。また、ラベンダーのチンキ剤(ラベンダーとアルコール50%の比率が1:5、60滴/日)とイミプラミン抗うつ薬(100 mg /日)を併用した研究では、軽度から中程度のうつ病が改善され、口渇や尿閉などの副作用が減少しました。ラベンダーは、オトギリソウとは異なり抗うつ薬と相互作用しないため、非常に有効です。
心身医学と漢方医学 [1]
冬の間は、減速や後退、または休眠状態を伴います。漢方の世界では、こうした変化を認め、自然な周期的変化を尊重しながら健康維持に役立てています。自然界では、植物はゆっくりと成長し、春に花を咲かせます。これは、季節性感情障害を患った際に有効です。自然のゆっくりとしたペースを尊重しながら、回復に向かって励みましょう。
調理済みの食品を摂り、脾臓に栄養を与えましょう。消化を促す「気」がすでに低下しているため、冷たい生物を食べると「気」が損なわれ、さらに低下してしまいます。また、冬には腎臓、つまり要素「水」にも注意が必要です。腎臓にやさしい食品には、調理済みの食品、黒または濃い緑色の食品(黒豆、海藻、冬野菜)、全粒穀物、骨スープなどがあります。冬は1年で最も「陰」の時期なので、「陽」である腎臓を大切にしましょう。「陰」の時期である冬は、「陽」の時期である夏よりもエネルギーが減速し、不足します。そのため、身体機能の減速や気分の低下、無感動を経験するのは自然なことです。腎臓には「意志力」も備わっています。うつ病を患うと、一般に意志力が低下します。
不快な感情を完全に取り除こうとするのではなく、「陰」やその他の中国医学を用いて、こうしたペースを尊重しましょう。「陰」の行動には、より休息をとる、ゆっくりと歩く、早く寝る、ジャーナリング、瞑想、その他の癒しや栄養補給が含まれます。
結論
季節性感情障害には、様々な従来の治療法や自然療法があります。これには、抗うつ薬による薬物療法、光線療法、炎症を緩和してセロトニンの調節を改善するための魚油やビタミンDの補給、ハーブ療法(ラベンダーやオトギリソウ)、トリプトファンが豊富な食品の摂取、心身療法が含まれます。 また、うつ病を招く恐れのあるその他の健康障害についても、徹底的に精密検査を行う必要があります。これには、甲状腺機能低下症やコルチゾール機能障害があります(高コルチゾール血症はうつ病に見られ、低コルチゾール血症は副腎疲労や無気力症候群に見られます)。さらに、低テストステロン症により、男性のうつ病や女性のエストロゲン不均衡が生じる可能性があるため、ホルモン分泌機能の評価も役立つでしょう。
季節性感情障害では様々な面の管理が必要です。そのため、統合的な治療が最も有効です。
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