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ミオイノシトール

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ミオイノシトール-多嚢胞卵巣症候群における利用

アイシャ・クレシ自然療法医師




ミオイノシトール-多嚢胞卵巣症候群における利用

多嚢胞卵巣症候群の背景

多嚢胞卵巣症候群(PCOS: Polycystic Ovary Syndrome)は、生殖可能年齢の女性の5-10%を冒している無排卵性不妊症で最も一般的な原因です。無排卵は、排卵周期中に卵巣が卵母細胞(卵子)を放出することができないという卵巣機能の異常です[1,2]。多嚢胞卵巣症候群では、超音波検査で卵巣内にしばしば複数の嚢胞が見られ、ホルモンアンバラスの生化学的所見もあります。多嚢胞卵巣症候群では過剰のアンドロゲン(男性ホルモン)が認められ、これがテストステロン値を上昇させています[2]。過剰なテストステロンは、多毛症(顔や体の毛が異常なほど過剰になる)、ニキビや髪の毛が細くなる、あるいは脱毛するといった、多嚢胞卵巣症候群の幾つかの兆候や症状の原因となるものです[2,3]

他のホルモンのアンバランスも、多嚢胞卵巣症候群の女性たちでは歴然としています。黄体ホルモン(LH: Luteinizing Hormone)は脳下垂体前葉で生産されるホルモンで、黄体ホルモンの急上昇は女性の排卵の引き金となります。卵胞刺激ホルモン(FSH: Follicle Stimulating Hormone)は生殖に携わるホルモンで、卵胞を成熟させるための刺激を与えます。LH/FSHが3:1まで上昇するのは異常であると考えられていますが、この様な上昇は多嚢胞卵巣症候群の女性たちに見られます[2,6]。これらのホルモンのアンバランスは不妊の原因となる排卵不能に寄与し、多嚢胞卵巣症候群の女性たちの約75%が月経不順です[5]。彼女たちには高血圧、高コレステロール、糖尿病や心血管疾患のリスク上昇も見られます[2,3]。多嚢胞卵巣症候群の女性たちは、しばしば、糖尿病ではないのにインスリン抵抗性があり、ですから彼女たちの30-40%は耐糖能異常です。インスリンが上昇すると卵巣はアンドロゲンの生産を促す刺激を受け、これがテストステロン上昇による兆候や症状に寄与します。インスリン感受性が変わると、ホルモン関連のパラメターが影響を受け、排卵が妨げられる可能性があります[1]

この卵巣機能異常およびホルモンのアンバランスは、妊娠を試みている多嚢胞卵巣症候群の女性たちにとっては重い課題であることでしょう。米国では、生殖可能年齢の多嚢胞卵巣症候群の女性のための検査および治療の総費用は、およそ43.6億ドルと見積もられています[4]。初期の診断および介入は、そのような女性たちに病気の合併症を予防する費用効果の高い戦略を提供します。


診断 診断

ロッテルダム診断基準によると、排卵欠乏(不定期な排卵)あるいは無排卵、高アンドロゲン血症の臨床的あるいは生化学的徴候(アンドロゲン上昇)、そして超音波検査での多嚢胞性卵巣の検出、のうちの二つが見られる際に多嚢胞卵巣症候群の診断が下されます[5]。多嚢胞卵巣症候群の現れ方は女性一人一人で異なるというのを理解することが大切です。多毛症や月経不順の見られない女性たちも存在する可能性があります。ある患者さんが多嚢胞卵巣症候群であることを疑う際には一般的に、徹底的な理学検査、骨盤内診察、超音波および血液の検査が行われなければなりません。多嚢胞卵巣症候群にはホルモンのアンバランスが見られることから、テストステロン、LH、FSH、プロラクチンのホルモン検査が一般に行われます。多嚢胞卵巣症候群の女性には耐糖能異常も見られる可能性があるため、空腹時血糖、インスリンおよび脂質の評価・検討は当然のことながら行われます[5]


従来療法 従来療法

多嚢胞卵巣症候群の従来療法には、ホルモンのアンバランスに取り組む、卵巣機能を改善する、インスリン抵抗性を軽減し、合併症のリスクを下げるといったものがあります。インスリン抵抗性を改善し、それが卵巣の反応異常に作用を及ぼすのを避けるために、メトホルミンやピオグリタゾンのようなインスリン増感剤がしばしば処方されます[7]。経口避妊薬も、妊娠を望まない患者さんたちのための治療の一部です。妊娠を望む患者さんたちには、排卵誘発を促し、卵巣の機能を改善するために、クエン酸クロミフェン(抗エストロゲン化合物)や卵胞刺激ホルモンが処方されるでしょう[2,7]


多嚢胞卵巣症候群のための自然療法的アプローチ

自然療法医として、病気の根因を治療し予防医学を実践することは、病気への取り組みの核心において不可欠です。自然療法的治療の治療目標は、ホルモン機能障害を正し、インスリン感受性を改善するという従来療法のそれと同様です。減量はインスリン感受性および卵巣機能を改善する可能性があります。定期的な運動および低糖食や無デンプン食のような食事の見直しがしばしば推奨されます。イタリアニンジンボクの実は、月経に関連する健康問題を修復し生殖力を改善する植物薬です[9]。研究によると、クロム、D-カイロ-イノシトールやミオイノシトールのような栄養サプリメントには、有望な作用があることが示されたことから、その治療上の効果について探求する価値があります。


ミオイノシトール

イノシトールは糖アルコール化合物の一つです。ミオイノシトールはイノシトールの異性体で、その構造はビタミンBと同様です。かつてミオイノシトールは、ビタミンB複合体群の一部であると考えられていましたが、体内でブドウ糖から生産される可能性があることから、必須栄養素とは見なされていません[8,9]。ミオイノシトールはD-カイロ-イノシトールの前駆物質です[6]。様々な生化学的形態のミオイノシトールが食事から一日約1g摂取されています[8]。インスリン感受性を改善するという目的で、ミオイノシトールおよびD-カイロ-イノシトールの二つについて調査が行われました。D-カイロ-イノシトールおよびミオイノシトールの両方を補給すると、インスリン感受性および卵巣機能の改善、アンドロゲン値、血圧およびトリグリセリドの減少に肯定的な作用があることが示されました[3]。ミオイノシトールは、D-カイロ-イノシトールおよび(D-カイロ-イノシトールに転換する)細胞内ミオイノシトールと比較して、ナトリウム依存性イノシトール共輸送に対する親和性が10倍あります[3,11]。多くの研究調査によると、ミオイノシトールは、体外受精を行っている女性たちの卵巣機能に良い影響を及ぼすだけでなく、卵母細胞の質も改善することが示されました。ミオイノシトールは、多嚢胞卵巣症候群の患者さんたちの乱れたホルモンパターンに著しい改善をもたらすことも示されました。LH値、LH/FSH比、テストステロンおよびインスリンパラメターの上昇は全て、ミオイノシトール補給で著しく低下しました[1,11]

毎日2gのミオイノシトールおよび200mcgの葉酸の補給を行ったある無作為対照試験では、200mcgの葉酸単独群と比較して、多嚢胞卵巣症候群の女性たちでLH、プロラクチン、LH/FSH比、インスリンが低下し、月経周期が改善したことが分かりました。両群とも体外受精の治療を受けており、ミオイノシトールのサプリメントの投与を受けた群では、葉酸単独の投与を受けた群と比較して、妊娠数が高いことが分かりました。一日最高4gのミオイノシトールおよび400mcgの葉酸についても、複数の臨床試験で調査が行われましたが、血圧、LH、テストステロン、プロラクチンを低下させ、糖パラメターを改善するという肯定的な作用が示されました[10]。卵胞液(卵子を取り巻く液体)中のミオイノシトール濃度が高いことは卵母細胞の質の良さに関連することも分かりました[11]。これは、ミオイノシトールを生殖可能年齢の妊娠を望む女性たちに対して用いるもう一つの利点となります。2-4gのミオイノシトールを用いた研究では何の副作用も報告されませんでした。ミオイノシトールのこれらの効能は、耐糖能異常およびホルモン機能障害に対する治療オプションとしての価値を証明しています。このように、ミオイノシトールは多嚢胞卵巣症候群の女性たちのための治療計画の一部であるべきでしょう。