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副腎状態-多嚢胞卵胞症候群の根本原因

Holly Giannatselis
HBSc, MSc, ND
https://www.drhollyg.com
16 5月 2016
日本語

副腎状態-多嚢胞卵胞症候群の根本原因

by Dr Holly Giannatselis, HSBC MSC ND

The Core Optimum Health
400 Matheson Blvd. E.
Mississauga, Ontario
L4Z 1N8




副腎状態-多嚢胞卵胞症候群の根本原因




ストレスを受けていますか?今日の世界では、副腎は重い負荷にあえぎ、最適な働きをしていないと良く聞きます。私たちはこれを通常、働き過ぎ、感情的重荷、人間関係の責任、あるいは金銭上の負担といった、外部のストレッサーのせいにします。しかし、あなたはこれが遺伝子異常のためかも知れないと考えたことがありますか?もしかしたら、副腎調節異常の本当の原因は私たちの遺伝子であり、これが従来の治療法が期待通りの結果をもたらさない事を説明するかも知れません。更に、実はホルモンのアンバランスは副腎の副次機能と関係していると考えたことはありますか?これは、月経周期の不順、多毛症、にきび、そして肥満のような多嚢胞卵巣症候群(PCOS: polycystic ovarian syndrome)の症状のある女性たちで最も顕著です。この記事は、副腎皮質過形成に光を当てる事を目的としていますが、この副腎皮質過形成というのは遺伝的疾患で、ステロイド生産経路内の酵素の活性に影響を与えます。議論の大半は特に遅発性の病態に関するものですが、この種類の病態は、コルチゾール(ストレスホルモン)の生産不足が原因で、アンドロゲン(男性ホルモン)値の過上昇を引き起こします。

古典的な副腎調節異常は、21-ヒドロキシラーゼ酵素の活性が遺伝子変化によって本質的に不活性化することが原因で起こる遺伝性の先天性疾患です。この酵素欠損は、劣性遺伝子染色体の突然変異が原因ですが、このうちの90-95%の場合で21-ヒドロキシラーゼの欠乏が起こります[1,2]。この酵素の変化によって、コレステロールからコルチゾールやその誘導体への転換が不十分になります。これが、コルチゾールのフィードバックに欠乏を引き起こし、アンドロゲンのようなコルチゾール前駆体を増加させます[2]。古典的な副腎調節異常では、一般に幼児期あるいは早い段階の小児期に、酵素活性の欠乏によって前駆体ステロイドが活性ステロイドに転換されず、これが原因で男性化(男性の特徴を女性が示すこと、あるいはその反対)の兆候が現れることで、異常が見付かります[2]。更に、古典的な病態は、副腎によるミネラルステロイド生産の欠乏の度合いに応じて、塩類喪失性あるいは鉄分喪失性と分類されます[2]。ミネラルコルチコイド(主にアルドステロン)は体内の塩と水との調節、ひいては腫れに関わっています。長期的なステロイドやミネラルコルチコイドの治療のお陰で、これらの患者さんたちは平均的な寿命を全うすることが可能ですが、この投薬治療により誘発される何らかの形のクッシング病を発症し、薬による骨の成長への影響で小人症や、あるいはホルモンの調節異常が原因で希発月経・不妊となります[2]。これらのリスクを最小限に抑えるために、現在の治療プランでは、抗アンドロゲンおよびアロマターゼ阻害薬を、低用量ステロイドに追加して用いることが薦められています[2]。古典的な副腎調節異常では、深刻な健康転帰や死亡を避けるために、診断時における即時の治療が必要です。

非古典的副腎調節異常(NCAD: nonclassical adrenal hyperplasia)あるいは、遅発性・成人発症と言われる副腎調節異常は、古典的なものほど重症ではありません。非古典的副腎調節異常では、21-ヒドロキシラーゼの酵素活性は50%に達しますが、一方、古典的な副腎調節異常の酵素活性は5%という低さにまで落ちる可能性があります[3]。このような酵素活性の顕著な違いが異なる症状をもたらします。ちょうどお話ししたように、古典的な副腎調節異常では、コルチゾール値の過上昇による症状が人生の早い時期に見られますが、遅発性疾患では、その背景にある酵素の活性レベルが原因で、コルチゾール欠乏はより少なく、高アンドロゲン血症の図式がより多くなります[4]。こが意味するのは、遅発性疾患はコルチゾールのバランス喪失による兆候を多く示すというよりは、ホルモンのアンバランスに関連する症状を示すということです。結果として、非古典的副腎調節異常の症状は、PCOSの女性たち、特に症状をコントロールするのが困難な患者さんたちの症状に近接したものとなります。非古典的副腎調節異常は、ヒスパニックあるいは東ヨーロッパユダヤ系の子孫 [4]、そして親に関連疾患のある女性たち[5] でより一般的でもあり、再度この疾患では遺伝が重要な役割を果たすことが示されています。男性は通常、アンドロゲン過剰はそのジェンダーによって隠され、目立った症状に現れないほどコルチゾール欠乏が軽度であることから、非古典的副腎調節異常の診断を受けることがありません。しかし、性別に関わらず非古典的副腎調節異常は、肥満、インスリン調節異常、そして脂質プロファイルのアンバランスとも関連があります。このことがら、糖尿病、体重増加、そして高コレステロール血症の治りにくい症例には、非古典的副腎調節異常が原因の可能性があり、副腎調節異常の徹底的なスクリーニングを行うのが良いかも知れません[6]。朗報は、非古典的副腎調節異常で言及された代謝の変化および高アンドロゲン血症は、副腎からの分泌活性が遅くなることから、年齢と共に改善する傾向にあることです.[6]

Nonclassical adrenal hyperplasia

さて、もうあなたは副腎調節異常の背景が分かり、多嚢胞卵巣症候群の症例への潜在的重要性についても気付いているかも知れません。非古典的副腎調節異常と多嚢胞卵巣症候群との間の類似性は、既に申し上げた通り、コルチゾール経路内の酵素欠損の結果として、アンドロゲンホルモンが蓄積されることです。女性におけるアンドロゲンが過剰は、希発・無月経、多毛症、にきび、男性パターンの禿げ、肥満、そして説明の付かない不眠症の原因となりますが、これらは全て多嚢胞卵巣症候群で見られます[4,7]。症状の類似性から、そして高アンドロゲン血症(テストステロン、DHEA、SHBGの上昇)の女性の3-9%が21-ヒドロキシラーゼの欠損であることから、多嚢胞卵巣症候群の症状の原因として、遺伝性の酵素欠損を考慮することは重要です[6,7]。非古典的副腎調節異常では、プロゲステロン・アンドロゲン・ステロイドが常時高くなり、視床下部-下垂体-卵巣軸が調節異常となることから、多嚢胞卵巣症候群の様な症状がもたらされます。この軸は、脳、副腎、そして生殖腺(女性では卵巣、男性では精巣)から分泌されるホルモンを連結する経路です[6]。非古典的副腎調節異常で上昇したアンドロゲンは、プロゲステロンに対する視床下部(脳の一部位)の感受性を低下させますが、それによってより多くの刺激をGnRH(性腺刺激ホルモン)に与え、黄体ホルモン(LH: leutinizing hormone)の分泌を促し、その結果として卵巣アンドロゲンおよび副腎アンドロゲンの両方が増加します[6]。このように、アンドロゲン上昇の原因には複雑なシステムが存在することは明白です。それでもなお、女性たちにアンドロゲン症状から解放された人生を生きてもらうために、これらのホルモンのバランスを取り戻さなければなりません。

非古典的副腎調節異常の患者さんの50%が不妊であることから、非古典的副腎調節異常を考慮すべき女性の健康に関するもう一つの分野は、生殖能力に関する懸念です。[6]

非古典的副腎調節異常で見られるプロゲステロン上昇は、卵胞期に頸管粘膜を厚くするので、精子はこのバリアーを突き抜けることができません[6]。プロゲステロン上昇は、子宮内膜が適切に厚くなるのも妨げるため、胚着床および受精を減少させます[6]。非古典的副腎調節異常における妊娠成功率は67%で、妊娠したもののそのうちの25%は自然流産という結果に終わります[3]。有り難いことに、ホルモンのアンバランスを正すためにグルココルチコイド治療を行うことで流産率は6.5%へと押さえる事が可能です[3]

adrenal hyperplasia

あなたに副腎調節異常が原因の症状があるかどうかを発見するための最初のステップは、医療専門家に理学検査をお願いすることです。ベースラインステロイド値の検査は、非古典的副腎調節異常で通常は正常であることから、役に立ちません[5]。代表的な検査には、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH: adrenocorticotropic hormone)刺激検査-17-ヒドロキシプロゲステロンおよびコルチゾール摂取、副腎皮質刺激ホルモンボーラス投与、次いで60分後の血液摂取および17-ヒドロキシプロゲステロン(プロゲステロンの一形態)およびコルチゾールの再測定です[3,4]。プロゲステロン上昇は非古典的副腎調節異常の兆候です。コルチゾール値は、症状の全体像は説明するためではなく、副腎の制限に関する兆候を得るために検査します[3]。ミネラルコルチゾール分泌は、遅発性の副腎調節異常では正常のままであることから、検査は行いません。[6]

いったん非古典的副腎調節異常であることが分かったら、グルココルチコイド、抗アンドロゲン薬、そして経口避妊薬から成る治療法で、嚢胞性卵巣を予防して下さい[2]。自然療法的な治療では、甘草、ウコギ、そして朝鮮人参のようなコルチゾール分泌ハーブが対象になります。抗アンドロゲンおよび多嚢胞卵巣症候群の治療法には、ハマビシ、緑茶、N-アセチルシステイン(NAC: N-acetylcysteine)、そしてイノシトールといったものがあります。長期的なステロイド治療は深刻なリスクが付きものであることから、非古典的副腎調節異常を治療するために自然療法的アプローチを考慮する価値があります。ステロイドは、骨芽細胞(骨を作る細胞)を抑制し、破骨細胞(骨を分解する細胞)の活性を上昇させ、腸内でのカルシウム吸収を損なうことから、骨密度に関する障害とも関連性があります[6]。もし従来のステロイドが治療の選択肢ならば、骨の健康をモニターするために定期的なDEXAスキャンが必要です[6]。しかし、どちらのルートを治療に選んでも、アンドロゲンホルモン高値が患者さんの健康に関する最も懸念すべき症状であることから、アンドロゲンホルモンの調節を目標とするべきです[6]。妊娠を望む女性は、卵巣刺激剤およびコルチゾールを利用して、妊娠の可能性を改善し、粒剤率を低下させるのが良いでしょう。[6]

全体として、非古典的副腎調節異常は、アンドロゲンホルモンに有害な作用を及ぼす可能性のある病態ですが、これはヒスパニックやユダヤのルーツを持ち、親がこの病態の遺伝子を有する女性たちで最も顕著です。もし現在の多嚢胞卵巣症候群に類似した症状が適切にコントロールされていないならば、副腎皮質刺激ホルモン検査を依頼する価値があります。あなたの副腎を労れば、得るものがあるでしょう!