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妊娠の前に健康は始まる-受胎前の健康があなたの受胎能力に影響を及ぼす理由、妊娠と未来の世代の健康

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妊娠の前に健康は始まる
by: Dr. Elizabeth Cherevaty ND, RAc & Courtney Clayson MSc

Two Rivers Health Integrative Fertility & Family Care
18 Wilson St.,
Guelph ON N1H 4G5


はじめに

あなたの家庭医が“受胎前医療”―子供を授かるのに先がけて、あなたとあなたのパートナーとが可能な限り健康になるのを助けるための治療およびカウンセリングのことですが―の正当性を強く信じていることに疑問の余地はありません。実際、受胎前ケアは臨床家や世界的な保健医療当局によって、受胎能力や妊娠転帰、そして生まれた子供の成人時の健康に決定的であると、広く考えられています[1,2]。不妊、妊娠損失、そして子供の出生異常は、妊娠前の両親の健康状態に大きく寄与する世界的な健康問題です[3]。

この記事では、妊娠を成功させ、健康な子供を授かる確率をできるだけ高くするのに役立つ可能性のある、あなたが個人としてコントロール可能な範囲内の最重要分野の幾つかに焦点を当てましょう。

図1:妊娠と子供の健康転帰は妊娠前の健康と関係している:世界的統計 [3]

妊娠を期待するカップル数 4500 万
不妊のカップル数 2200 万
年間妊娠数 3億6000 万
年間妊娠喪失数 9000 万
年間先天性異常(出生異常)新生児数 1800 万
在胎週数に比べて小さい新生児数 4000 万

子供の健康は受胎よりも前に始まっている

受胎に先立つ女性の健康が彼女の受胎能力、妊娠中の健康、そして生まれた子供が大人になった際のウェルビーイングに影響することが、研究によって益々、示されています。受胎の瞬間に、精子および卵子は子供の生涯の健康の青写真の遺伝物質に50%ずつ寄与します。精子は、成熟するのに4ヶ月かかり、その成長期間中は環境(例えば精液)に対して非常に敏感であることから、もうじき父親になる人の健康は極めて重大ですが、しばしば健康な妊娠および健康な子供作りにおいて、その役割は正しく評価されません。実際、劣悪な食事、ビタミンおよびミネラルの欠如、精神的ストレスや毒素からくる酸化ストレスが原因のフリーラジカル過多は、男性不妊の主要な根本的原因であり、しばしばこれは食事と生活習慣の修正によって成功理に対処することが可能です[4]。男性患者のために臨床家が従わなければならない標準の数は女性のそれより少ないものの、男性側の受胎前治療は、女性のそれと同様に重要です[2]。


受胎前医療の将来

受胎前の5-6ヶ月に加えて妊娠の最初の10週間は、精子および卵子内のDNAの有意な組み替えは、子供の遺伝子の発現を変化させる可能性があります[5]。この概念は、エピジェネティクスとして知られる医学分野の基礎であり、受胎前医療の将来であると信じています。エピジェネティクスは、受胎に先立つ両親の健康状態、代謝、食事、そして生活習慣の選択と妊娠中の母体の健康との両方が、彼らの子供の健康転帰に影響をする理由です。

アデレード大学のロビンソン研究所は、臨床家、研究者、政府代表者による専門家委員会を“受胎能力促進と健康的な受胎:リプロダクティブ・ヘルスの認知をどのようにして高めるのか?”に焦点を当てたワークショップを召集しました。専門家33人によって、受胎前の健康は図2に纏められた3つの分類で網羅されなければならないことが確認されました。

  1. 生活習慣関連-個人的な責任を負うことでエンパワーする要素を含んでいます。
  2. 社会的-変化に対して個人レベルの抵抗がある分野を含んでいます。
  3. 生物学的-これは身体に関する内因性の問題で、患者ケアや患者教育へと十分に伝達されていない大きく複合的な科学的知見の集合を含んでいます[17]。

生活習慣に関する面を見ると、受胎前の運動習慣や体重管理、喫煙および飲酒まわりの選択、そして特定の薬を受胎前に服用することへの考慮に対して、あなたが能動的にコントロールする価値があるという十分な証拠があります。 将来の記事では、ご自身の生殖能力、妊娠中のあなたの健康、そして未来のあなたの子供の健康を支えるために行うことのできる栄養および食事ストラテジーについて示しましょう。

図2:あなたの担当医と一緒に受胎前に考慮すべき健康についての側面(モルガンら)

受胎前医療の分野: 例:
生活習慣関連 栄養および食事
運動
肥満
喫煙
アルコール摂取
交替制勤務
市販薬の利用
社会的 倫理的問題
社会経済的地位
政策および教育方針
生物学的 内因性身体要素
染色体および遺伝の問題
あなたの赤ちゃんのDNAを“プログラムする”:あなたの体重がどのように関係しているのか

疾病の胎児起源説によると、妊娠前および妊娠中の母体の体重および栄養状態は彼女の子供の将来の健康に”プログラミング”効果を及ぼします[6]。全体的な健康と体重とを改善しようとする際には非常にしばしば食事が重要視されますが、母親および父親の両方の健康状態を最善にするためには運動も欠かせません[7]。生殖の全ての段階の内では、受胎前の運動は妊娠中や妊娠後よりも、女性の体重増加の予防や最善の健康状態により決定的な影響を及ぼします[7]。次のようなものを改善する可能性があることから、妊娠を計画する際には毎日の運動アクティビティを組み込むことが大切です。

Health Begins Before Conception - Why Preconception Health Affects Your Fertility, Pregnancy and the Health of Future Generations
  1. 母親および父親の健康[7]
  2. 精子および卵子の受胎能力[7]
  3. 結果としての胎芽の健康[7]

妊娠前に定期的に行う運動は、身体および精神の両方の健康を高める可能性があり、更に妊娠中の活動レベルを維持するのに役立つような習慣的な運動を維持するのを助ける可能性があります[7,8]。


あなたの道に加わるのは何か?

運動しないと決めた女性は、その理由にモチベーションの欠如、認知コスト、時間制限を挙げるかも知れません[7,8]。女性たちは、自信がないために運動しないと決めたことも認めます[7,8]。その一方で、定期的な運動ルーチンを始めるのはあなたのエネルギー、自信、そして性欲ですら高める可能性があり、これら全てがあなたの生殖の成功に寄与するでしょう。担当の自然療法医やフィットネス専門家は、あなたが定期的に運動し、あなたにできるルーチンを確立するための個人的な障害を克服するのを助けてくれるでしょう。


肥満による生殖リスク

男性および女性の両方にとって肥満は益々多く見られる問題ですが、これは自然に、あるいはIVF(人工授精)で受胎する機会を損なう可能性があります[7,9]。女性では、肥満は次の原因になる可能性があります。

  1. 不規則な排卵
  2. 月経不順
  3. 受胎確率の低下

男性では、肥満は次の原因になるかも知れません。

  1. 精子数減少[9]
  2. テストステロン値低下[9]
  3. 精子の質の低下[9]

以下は、体重管理と運動とがあなたやあなたのパートナーの生殖能力、そして子供の健康にどのように影響を及ぼすかについての有効な統計のうちの幾つかです。

  1. 太り過ぎ20ポンド(約9kg)につき、男性不妊の確率は10%上昇します[8,10]。
  2. 一週間たった20分の運動は全体的な受胎能力を改善します[11]。
  3. 定期的な適度の身体活動は人工授精を行っている肥満の女性の受胎率を18%上昇させます[11,12]
  4. 45分の中強度のサイクリングを週3回、合計12週行うと、多嚢胞卵巣症候群の女性の60%で排卵頻度が改善しました[13,14]。

“社会毒”および受胎前 Health Begins Before Conception - Why Preconception Health Affects Your Fertility, Pregnancy and the Health of Future Generations

受胎に先がけて煙草、アルコールそしてレクレーショナル・ドラッグを除外することは、あなたの妊娠確率を上昇させるのに加えてあなたの赤ちゃんの健康と発育とを改善するでしょう。これらの物質はあなたの体には毒として受け取られ、健康的な生殖に携わる精子、卵子や他の組織に圧力をかけます。

煙草の使用

もしあなたが喫煙しているならば、煙草をやめることがあなたの生殖能力およびあなたの子供の未来のウェルビーイングのためにできる受胎前の最も重要な選択です[8,15]。女性の煙草の利用は、排卵可能な卵子数を減少させ、卵子に遺伝的損失をもたらし、必然的に生殖能力を低下させます[16]。喫煙者と暮らす女性は自分が禁煙する確率が低いことが分かっているため、受胎前の喫煙にチームとして取り組むことがパートナー同志にとって必須です[8]。更に、たとえパートナーが直接家の中で煙草を吸わなくても、彼女は二次喫煙による毒素に曝され続けるでしょう。あなたの今日の健康上の選択は、選択した“環境”によって起きる遺伝子変化が実際に遺伝する可能性があることから、あなたの家族の複数世代に影響を及ぼすかも知れないことを認識するのは重要です。例えば、祖母が煙草を吸っていた子供では、その母親が一回も喫煙したことがなくても、喘息リスクが上昇します[17]。

アルコール摂取

大半の女性は妊娠中飲酒を控えるという一般的な合意があるかも知れませんが、複数の調査によって、アルコールの嗜みは家庭医との定期検診に加えて、受胎前および妊娠中に産婦人科医と話し合われるのが希であることが分かりました[18]。アルコール摂取は女性だけでなく男性でも受胎能力に弊害をもたらす可能性があります。複数の調査によって、男性が一日二杯を越えるアルコールを摂取する際の精子DNAへの損傷が示されました。これらの男性は精子数が低下し、精子の運動性および形態が変化しました[8]。しかし、他の研究では、特定のアルコールの抗酸化作用によりDNA損傷に対する保護効果があり得ることが示されました[8,19]。受胎前段階でのアルコール摂取は、卵子および精子の健康および受胎能力に弊害を及ぼす可能性があるため、妊娠前に医療専門家と話し合うべきでしょう。


何故患者さんたちは受胎前ケアを求めないか? Health Begins Before Conception - Why Preconception Health Affects Your Fertility, Pregnancy and the Health of Future Generations

カップルの受胎前の健康状態は直接、彼らの受胎能力、流産リスク、そして子供の出生異常リスクに影響を及ぼします[3]。産婦人科医のある調査では、葉酸サプリメントが受胎前に患者さんたちが行う一番のライフスタイルの選択でした[18]が、女性の50%未満しか受胎に先がけて摂取する葉酸の重要性を認識していませんでした[20]。産婦人科医の約半分によって、受胎前のケアを求める患者さんが非常に少ないことが報告されています[18]。現在の医療システムが抱える時間的財政的な課題が原因で、家族を作り始める前のあなたのために医療専門家が受胎前ケアやカウンセリングに必要な時間を割くのが妨げられているのかも知れません[18]。自然療法医、鍼師、そしてホリスティック栄養子のような医療専門家は、あなたのこの非常に重要な受胎前の段階における医療の選択を補完することが可能です。 受胎前の健康に関する教育がオンライン上の媒体で利用可能となりつつあります。あるパイロットプロジェクトでは、妊娠を計画している、あるいは既に妊娠している女性やカップルが関連する生活習慣の要素のスコアを改善するのに役立つよう設計されたウェブベースのプラットフォーム“より賢い妊娠”をテストしました。このプログラムを利用した6ヶ月後、果物摂取、野菜摂取、禁煙やアルコール摂取、そして葉酸サプリメントの摂取といった様々な生活習慣に26.3-56.3%の改善がもたらされました[3]。これらの改善は、このアプリケーションに一人だけで取り組んだ人よりも、一緒に取り組んだカップルで最も大きかったのです[3]。

次世代の子供たちの人生のスタートで、より良い健康を与えることほど大切なことはありません。将来、親となる者として、あなたはあなた自身の健康やウェルビーイングを最高にするだけでなく、将来の子供の健康の可能性に対してあなたの手の内にある変化のための選択を行うことによって、あなたは極めて重要な投資をする信じられないチャンスも手にしているのです。受胎前医療についての会話をあなたの自然療法医や家庭医と始めることで、あなたは、受胎、健康な妊娠、そして未来の子供に健康を贈る力に著しく大きな良い影響を及ぼすかも知れません。