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子宮内膜症-自然療法的取り組み

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子宮内膜症-自然療法的取り組み

by Dr. Sarah King ND

Upper Beach Health and Wellness
1937 Gerrard St E
Toronto, ON
416 627-5006
upperbeachhealth.com



子宮内膜症-自然療法的取り組み


はじめに

子宮内膜症は、子宮の外側に子宮内膜組織が存在するという特徴のある疾患です。この組織病変は、エストロゲンのようなホルモン刺激への反応であり、かつ多くの女性が経験する非常に激しい骨盤痛の原因です。この病態には、多くの異なるステージおよび重症度がありますが、患者さんたちには通常、周期的な月経困難症(痛みを伴う月経あるいは月経痛)、性交疼痛(性交に伴う痛み)、排便障害(痛みを伴う排便)や不規則な慢性骨盤痛などが見られます。他方で、子宮内膜の病変の大きさや位置、そして深さによっては、殆どあるいは全く症状が見られない可能性もあります。

子宮内膜症の正確な病態生理学はまだ確定していませんが、この疾患の進行を説明可能な多くの理論および炎症のメカニズムが存在します。私たちは子宮内膜細胞の移動に加えて、その生存や増殖に関する幾つかのメカニズムを確認しました。

サンプソンの理論は、子宮内膜組織がどのようにして子宮から離れて周辺部位に移動する事が出来るのかを説明する、最も古くて最も受け入れられている理論のうちの一つです。彼は、逆行性月経がどのようにして子宮内膜細胞の移動を引き起こす事が出来るのかを、「月経中に剥がれ落ちた子宮内膜組織が卵管を通って移動し、卵巣の表面、あるいは骨盤腔の別の場所に移植する」と説明しています。大半の女性たちで一定量の逆流が見られるため、これには関連性があります。しかし、およそ10%しか子宮内膜症を発症することはありません[1]。ですから、この異組織の生存および増殖を確定するような他の要因が携わっているはずです。

逆行性月経理論に対する支持は、中国伝統医学(TCM: traditional Chinese medicine)ですら見られます。中国伝統医学の理論が提議するのは、流れは下方に動くものであり、月経中の性交はそのような動きを妨げ、剥がれ落ちた組織の”上方”の流れに影響を与えるというものです[2]。中国伝統医学では、子宮内膜症は血流の停滞であることから、これが主要な寄与因子です。

メイヤーの理論が提議するのは、過剰なエストロゲンの誘導によって体腔細胞を子宮内膜細胞へ化生するというものです。子宮内膜、卵巣表面、そして腹膜は全てこの同一の胎生的前駆細胞を共有しているため、異常な細胞分化が行われることで、これらの体の異なる部位に子宮内膜細胞が見られるのでしょう。 三つ目の理論、ハルバンの理論は、子宮内膜細胞が脈管あるいはリンパ管を経由して拡散することができるため、子宮内膜組織が子宮から離れた複数の部位へと広がるというものです。

転所性子宮内膜細胞の移動は、子宮内膜症の進行の最初のステップの一つに過ぎません。細胞は新しい環境で生き残り、定着し、増殖する必要があります。幾つかのメカニズムについての研究が行われましたが、免疫システムおよび炎症の両方が重要な役割を演じているようです。

月経で剥がれ落ちた子宮内膜組織の細胞は、通常アポトーシスを経て死に至ります。しかし、子宮内膜症の転所性細胞はこのプロセスを避けているように見えます[3]。子宮内膜症の女性の腹水には、増殖因子、サイトカイン、そして異常に大量の制御性T細胞が含まれていることが示されました。これらのそれぞれが細胞の生存を高め、炎症プロセスを促進する可能性があります[3]。ですから、子宮内膜細胞が免疫システムによる破壊から逃れるだけでなく、周囲の構造に付着するこのプロセスも骨盤痛に関連する炎症に寄与しているのかも知れません[1,4]


一般的治療
一般的治療

痛みは子宮内膜症の最も一般的で良く見られる症状であることから、痛みの管理が治療における第一の目標です。西洋医学では異なる幾つかの方法でこれに取り組みます。一般的には、ナプロキセンのような非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs: nonsteroidal anti-inflammatory drugs)が急性の痛みに対して処方されます。これは短期的には有用ですが、非ステロイド抗炎症薬の常用は、心臓発作、卒中、そして死亡のリスクを高めることから、薦められません[5]

この理由から、多くの医師は、病変のサイズを減少させ、痛みを減らし、新たに病変が育つのを予防するためのホルモン療法を始めるよう、患者さんたちにアドバイスするでしょう[4]。ホルモン療法には、プロゲスチンのみの経口避妊薬、子宮内レボノルゲストレル放出システム(LRIS: levonorgestrel-releasing intrauterine systems)、そして酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA: medroxyprogesterone acetate)注射といったものがあります。

腹腔鏡検査は子宮内膜症の疑いのある女性たちのための定期的な処置です。検査および組織生検の目的として、これは子宮内膜症の診断における究極の判断基準となっています。2回目の腹腔鏡検査を直ちに行うことを避けるために、外科医はしばしば、腹腔鏡検査中に見つかった安全に分離することが可能な病変については、全て取り除くことでしょう。病変の切除は周期的および非周期的な骨盤痛を減少させ、子宮内膜の病変の再発率を低下させるでしょう[3]。


自然療法的治療

子宮内膜症は複雑であるため、治療では多分野的取り組みが必要となります。婦人科的治療に加えて、患者さんたちは、不妊治療専門医、ガン専門医、免疫学者や自然療法医のような他の医療関係者によるカウンセリングやマネジメントを求めるかも知れません。自然療法医学における私たちの目標は、炎症に取り組み、免疫システムを調節し、肝臓による適当な解毒を確実にして、健康的なエストロゲンの代謝を促進することです。これらの代替治療は、重い副作用が理由でホルモン療法を利用できなかったり、近い将来に妊娠を望んでいたりする患者さんに非常に大きな役割を果たします。

エストロゲン調節とクリアランス

子宮内膜症はエストロゲンに非常に大きく依存することから、エストロゲンの代謝産物のクリアランスが治療の一部として必要とされます。健康な肝臓機能を促すことで、子宮内膜の病変の退行および予防に大きな影響を与えることが可能です。

インドール-3カルビノール(I3C: indole-3 carbinol)は、ブロッコリーのような野菜の多くに含まれる植生化学物質で、これは抗ガン性をもつだけでなく抗エストロゲン反応を促進します。その誘導体の一つである、I3Cおよび3,3’-ジインドリルメタン(DIM: diindolymethane)は両方とも、肝臓内でのフェーズIおよびフェーズIIの解毒経路を促進し、エストロゲン値を調節するのを助けます。

環境の影響

私たちの体内の毒素を分解、結合し、取り除くのは肝臓の仕事です。化学物質や毒物へ晒されることは避けられませんが、環境エストロゲンや他の内分泌かく乱物質を避けることによって、それらが私たちのホルモンバランスに影響を及ぼすのを防ぐことが可能です。これらの合成化学物質や合成化合物はプラスチックやボディケア製品、シャンプー、化粧品、食品、プラスチックや溶媒に含まれています。

ダイオキシンへの暴露と子宮内膜症、血漿ビスフェノールAおよびビスフェノールB(BPA: bisphenol)上昇との相関が多く存在します[6]。エストロゲンは、子宮内膜症の生体病理およびその症状全体に相当の影響を及ぼすため、女性の皆さんはこれらの相関を過小評価すべきではありません。

そのような暴露を減らすことで、ホルモンアンバランスのリスクの多くを低下させることが可能です。以下の化学物質を避けるために、常にラベルを読み、注意することが重要です。

   ボディケアおよび衛生:

  • ♦ パラベン(メチパラベン、エチパラベン、プロピルパラベンおよびブチルパラベンを含む)
  • ♦  エッセンシャルオイルではない香料やパルファム
  • ♦ マニキュアおよび除光液
  • ♦ 従来のタンポン。タンポンには、ホルモン機能をかく乱する可能性のある特定のダイオキシンが含まれることが分かりました。そのような商品の代わりに、オーガニック綿衛生用品や再利用・選択可能な綿パッドを選んで下さい。
  • ♦ プラスチック製品
  • ♦ ビスフェノールA(BPA)。ビスフェノールAは、缶入り食品の内側のプラスチック製内貼り内にも含まれています。
  • ♦ フタル酸エステル類
  • ♦ プラスチック容器で電子レンジを使うのは必ず避けて下さい。
  • ♦ プラスチックの水筒を使うのを避けて下さい。熱に晒される(自宅だけでなく倉庫や輸送中にもその様な可能性があります)と、毒物のプラスチックから水の中への浸出が促されます。
Endometriosis - Naturopathic Approaches

     食品

  • ♦ 連邦食品・医薬品・化粧品法の赤色 #3のような着色料。
  • ♦ ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA: butylated hydroxyanisole)、しばしばパッケージ食品や調味料のブレンドに含まれています。
  • ♦ 乳製品を制限あるいは除外し、手に入る際にはホルモンの含まれていない動物製品を選択して下さい。
  • ♦ 可能な際には、有機製品を選び、殺虫剤や除草剤を制限し、食べる前には果物や野菜を良く洗うようにして下さい。


栄養および肝臓による解毒

主要栄養素、酵素、そしてタンパク質を供給するような食物を体に供給することは、毒物を分解し排出する能力に大きく影響を及ぼします。芽キャベツ、ブロッコリー、キャベツ、そしてケールのような野菜は全て、肝臓内のフェーズIおよびフェーズIIの解毒経路を高めるのに役立ちます。

肝臓だけでなく、エストロゲン代謝も腸微生物叢によって調整されています。これらのバクテリアは、毒物が再度体内に放出されるのを防ぐのに一役買っているだけでなく、免疫システムおよび炎症の調節に影響を与えます。プロバイオティクスおよび食物繊維の豊富な食事を補給することは共に、健康的な腸内細菌叢を促進するでしょう。

リンゴやグレープフルーツのような果物に本来含まれるDグルカル酸カルシウムは、毒物の結合が切れて体内に再放出されるのを防ぐのに重要な役割を果たしています。これらの果物は、上記のアブラナ科の野菜と結合して、食物を介した健康的なホルモン代謝を支える多数の手段のうちの幾つかです。

鎮痛のための抗炎症および抗酸化

食物脂肪はホルモンの生産および炎症プロセスの調節に寄与するのに役立ちます。オメガ3脂肪酸(FAs: fatty acids)のオメガ6脂肪酸に対する比を高くシフトさせることにより、抗炎症反応を促進することが可能です。オメガ3脂肪酸は、子宮内膜細胞の生存を抑制することが示されました[7]。それとは反対に、オメガ6のオメガ3に対する比が増加すると、子宮内膜症に関連する骨盤痛が増加することが示されました[8]。オメガ3脂肪酸の補給は、確実に効果があるかも知れませんが、より多くオメガ3の豊富な食品を食事に取り入れ、オメガ6の豊富な食品の過剰な摂取を避けることで、健康的な脂肪酸のバランスを促すことも出来るでしょう。オメガ6含有の高いオイルには、コーン油、グレープシード油、大豆油、ひまわり油、そして“ベジタブル油“がありますが、これはしばしばコーンが原料です。食事中の健康的な脂肪は以下のもので構成されるべきでしょう。

  • ♦ アボガドおよびアボガド油
  • ♦ くるみやアーモンドのような木の実類
  • ♦ 亜麻仁やカボチャの種といった種子類
  • ♦ 鮭、イワシ、マス、そしてサバのような魚
  • ♦ オリーブ油、ヘンプシード油、そしてベニバナ油
  • ♦ ココナッツ油やココナッツミルク

クルクミンは万能抗炎症剤で、近年、子宮内膜の病変の退縮を促進することが示されました。ある研究では、クルクミンは子宮内膜細胞内のエストロゲン値を低下させ、その増殖を抑制する可能性のあることが分かりました[9]。更に、クルクミンは細胞密着分子を下方制御し、炎症性サイトカインの放出を抑えます[10]

子宮内膜症の女性の腹水に含まれる抗酸化物質は少なく、酸化性ストレスのマーカーは多いことが示されました[11]。ビタミンCおよびビタミンEの補給により、炎症性サイトカインの低下を抗酸化物質によって支えることが可能であり、これは慢性骨盤痛を軽減することが示されています[11]

子宮内膜の痛みおよびサイクルの調節のための鍼

鍼は中国伝統医学で何千年もの間、利用されてきました。鍼による治療は、自律神経システム、血圧調節や免疫システムに影響を及ぼすだけでなく、その鎮痛効果により痛みもコントロール可能なことが示されました[10]。治療としての鍼に関する複数の研究では、子宮内膜症に関連する骨盤痛軽減に対する鍼の有効性が示されました[12]。薬の禁忌や副作用は、患者さんがある特定の治療を継続するための能力に影響を及ぼす可能性があり、ですから鍼は、軽度から中程度の骨盤痛の患者さんのための、存続可能な治療オプションとなる可能性があります。

更に、鍼治療は神経を鎮め、ストレス軽減のための利用にも役立ちます。通常“心を鎮める”ために用いられる多くのツボが治療プロトコルに含まれていますが、これは患者さんの経験および病気管理に一役買っている可能性があります。


結論

全体として、痛みの管理および子宮内膜の病変の退縮を支援する多くの異なる選択肢および治療法が存在します。多因子疾患である子宮内膜症の治療計画では、不妊、エストロゲンのバランス、痛みの管理、病変の退縮、そして新たな病変の予防といった関連する複数領域に取り組まなければなりません。子宮内膜症には多数のステージおよび異なる重症度があることから、各症例は様々であり、ですから治療の選択肢を複数の異なる専門家と一緒に再検討することが重要です。治療とは別に、野菜の摂取を高め、乳製品や赤肉の摂取量を減らし、内分泌かく乱物質を避けることによって体を支えることが不可欠です。