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妊娠性糖尿病

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妊娠性糖尿病-食事と生活習慣の因子を通した予防と管理
アシュレー・ウェバー名誉理学士・自然療法医師

www.AshleyWeberND.com



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はじめに

妊娠糖尿病(GDM: gestational diabetes mellitus)は妊娠で始まる血糖調節の機能不全として定義されている妊娠合併症で、出産後には現れません。罹患率は様々ですが、CDCによる最近のある研究では、9.2%の妊婦が妊娠性糖尿病に冒されていることが報告されました[1]。妊娠性糖尿病の症状はII型糖尿病と類似しており、多渇症(過度の喉の渇き)、多尿症(過度の排尿)、空腹および疲労といったものがあります[2]。しかし、妊娠性糖尿病症例の大半は、24から28週の間に行われる出生前スクリーニングで発見されます[2]。妊娠糖尿病の診断基準には合致しない軽度の耐糖能異常(IGT: impaired glucose tolerance)は妊娠糖尿病にかかりやすいリスクがあるため、それを見付けることも重要です。

妊娠糖尿病発症リスク因子は、以前の妊娠中に妊娠性糖尿病であった、肥満(BMIが30kg/m2を超える)、前子の体重が4.5kgを超える、人種(アジア人、中東人およびアフリカ系アメリカ人)そして糖尿病の一等親血縁者があるといったものです[3]。それに加えて、新しい研究では、多くの妊娠糖尿病の女性たちは、受胎に先立ちブドウ糖代謝が変化していて、これが妊娠後期に姿を現すことが示されています[4]

妊娠性糖尿病は、妊娠中の潜在的合併症および新生児転帰に加えて母子両方の長期的健康リスクのために、発見し管理することが重要です。母親にとっては、妊娠糖尿病は子癇前症のリスクの増加(ですから出産中の発作や卒中)、帝王切開、そして後のII型糖尿病の発症が起こり易くなり[3]。赤ん坊にとってのリスクには、巨大児(出生時体重が大きい)、出生以後の低血糖症、そして後になってからの肥満および耐糖能異常のリスク上昇といったものがあります[5]

いったん診断が付いたら、一般的な治療計画は病態の重症度に応じて様々です。空腹時および食後1時間後および2時間後の(食後)血糖値が注意深く監視されます。ヘモグロビンA1Cも監視される場合がありますが、これは過去3か月間にわたる長期的な血糖コントロールのための測定です。

栄養および生活習慣の要素は、議論の余地がない治療の基礎であり、しばしば妊娠糖尿病の管理を行うのに十分である可能性がありますが、研究および特定の勧告は限定的です。この記事は、妊娠糖尿病の予防および治療のための食事および生活習慣の要素の詳細を明らかにすることを目的としています。


食事 食事

妊娠糖尿病のための様々な食事や特別の勧告について調査した研究は、矛盾しており、しばしば女性の健康問題の専門家による勧告とも食い違っています。専門家は一般に‘健康的な’食事は妊娠糖尿病に良いことで合意しているものの、これが正確に何を必要としているのかについては議論があり、血糖維持のための食事の必須条件は患者間で様々です。妊娠に加えて妊娠糖尿病は、本来変わり易く個人間で異なるため、各個人で血糖値および特別食対策の有効性を継続的に再評価することが重要です。

最近のある研究では、地中海式食事法の順守度に関連した妊娠糖尿病の発生率を調査しましたが、この地中海食事法というのは、野菜と果物の全体食、豆類およびマメ科の植物、食物繊維とオリーブ油のような健康的な脂肪に重点を置いたものです[6]。地中海式食事法を良く守る女性たちは、あまり守らない女性たちと比較して、妊娠糖尿病の発症率が38%低いことが分かりました。これは重要な研究で手引きとなるものの、特定の勧告は未だありません。

食品タンパクは、特に耐糖能異常の人たちにとって、血糖値を調節するための重要な要素ですが、妊娠糖尿病と関連する特定のタンパク質に焦点を当てた研究は現在非常に少数です。妊娠中の食事摂取に関する大規模なプロスペクティブ研究が、タンパク質摂取、特に摂取タンパク質の種類と妊娠糖尿病との間の関連性の強さを決めるために行われました[4]。妊娠前の動物性タンパク質、特に赤肉の摂取量が高いことは、後の妊娠中の妊娠糖尿病のリスクの有意な高さと関連がありました。1サービングの赤肉タンパク質を代替の健康的なタンパク質に置き換えることが、妊娠糖尿病リスクの有意な低下(家禽類で29%、マメ科の野菜で33%、ナッツ類で51%)と関連があるという結論が下されました。

食品脂肪の摂取に関する研究は議論の的でしたが、これは主に多くの研究では、脂肪の種類を差別化しないまま総脂肪摂取の効果が調査されたためです。重要な区別を行った研究では、多価不飽和脂肪(多くの人たちが‘良い脂肪’として知っているナッツや種子類、オリーブ油や魚)を含む食品の高摂取が、妊娠糖尿病リスクを低下させることが示されました[7]。一方で、飽和脂肪(肉の脂身、乳製品、バターのような‘悪い脂肪’)を含む食品は耐糖能を損ない、妊娠糖尿病発症との因果関係が認められました。これは、総脂肪摂取量が等しい時にも正しいことが示されましたが、一番大切なのは脂肪の量ではなく質であることを示しています。

食物繊維は、全種類の糖尿病の管理のために重要な要素で、妊娠糖尿病にも違いはありません。食物繊維源には、果物および野菜、マメ科野菜や玄米やキノアのような全粒穀物があり、一日およそ30gの食物繊維が勧められています。妊娠に先立つ食物繊維の高摂取には、妊娠糖尿病の発症リスクの低下との有意な関連があります[8]。実際、果物の繊維を5g/日(およそ中くらいの大きさの皮つきリンゴの量)増加させると、妊娠糖尿病リスクに26%の低下をもたらします。


運動 運動

全ての種類の血糖調節障害において、身体活動は非常に重要であることは良く知られていますが、特定の勧告で妊娠は、以前の活動レベル、運動の種類や安全性に関する独自の課題があります。米国産婦人科学会は現在、健康な妊婦に対して30分の中程度から激しい有酸素運動および筋肉トレーニングの両方を含む運動を週5回、勧めています[9]。妊娠前に座りがちだった女性たちは、段階的にこのガイドラインに近づくよう勧められます。これらの勧告は、合併症のない健康な妊娠のためのもので、ガイドラインは特に妊娠糖尿病でない人たちに対するものです。

妊娠中の母体の身体的活動の全体的な効果を評価したある対照試験が、妊娠6-8週を開始時期として行われました[10]。運動介入は、週3回30分の中程度の有酸素運動に加えてウォームアップとクールダウンで構成されていました。対照群は定期的な運動に参加しませんでした。運動群における妊娠糖尿病発症の頻度は1.8%であるのに対して、運動をしなかった対照群では8.3%と、統計的に有意な差異でした。それに加えて、妊娠糖尿病の重大な合併症である巨大児は、対照群に対して運動群では半分の減少が測定されました。

最近のある対象試験では、妊娠糖尿病の女性たちが、一日20分のきびきびしたウォーキングをするように指示されました[11]。毎日運動しなかった女性たちと比較した際に、このシンプルな運動プログラムは、食後血糖、HbA1cおよびトリグリセリドのような他の要素が有意に減少するという結果をもたらしました。この研究では、特別のガイドラインや勧告が未だ確立していなくとも、非常に簡単でやり易い運動によって著しい結果が生じることが明らかとなりました。


生活習慣の他の要素 生活習慣の他の要素

妊娠糖尿病で重要な生活習慣の他の要素には、体格指数(BMI: Body Mass Index)で表された妊娠前の体重、そして妊娠中の喫煙です。数々の修正可能なリスク因子の影響の組み合わせを調べるために、2014年に発表されたある大規模な研究では4つの要素およびそれらの妊娠糖尿病との関係が調査されました[12]。調査対象となったリスク因子には、体重、健康的な食事、定期的な運動、そして喫煙がありました。妊娠に先立つ健康的な体重は、BMI<25として分類されましたが、この値は一般に最適な健康のために全ての人たちに推奨されています。健康的な食事については、果物や野菜の摂取、総飽和脂肪に加えて食事の多様さといった健康的な食事の12要素を考慮したAlternate Healthy Eating Indexという指標を用いて評価されました[13]。定期的な運動は、一日30分の中程度から激しい運動を週5日として定義されました。全ての要素が有意かつ独立して、妊娠糖尿病発症リスクと関連していました。非喫煙者であること、健康的な食生活を送ること、そして所要の運動を行うことにより、妊娠糖尿病のリスクが他の妊婦たちと比較して41%低下しました。しかし、(健康的な体重を加えた)4つ全てのリスク因子が組み合わさった際には、妊娠糖尿病に対してさらに防護的であることが認められ、これらを何も実行していない人たちと比較して、妊娠糖尿病発症率が80%低下しました。

妊娠糖尿病における食事や生活習慣に関して、より多くの研究が必要であることは明らかであると同時に、この病態の予防および管理の両方で著しい結果を生む数々の勧告が存在します。一般的に野菜および果物、菜食者のためのタンパク質や魚、食物繊維および健康的な脂肪が多く含まれる地中海的食事を摂取することで、妊娠糖尿病発症リスクが著しく低下し、いったん診断された病態を改善します。妊娠中に行う全ての種類の運動は利益がありますが、中程度の強度の有酸素運動および筋肉運動の両方を30分、週3-5回、行うことが理想的です。妊娠に先立ち健康的な体重を確立することに加えて、喫煙しないことの両方が妊娠糖尿病のリスクを低下させます。