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ターメリック-黄金のスパイス

Wendy Chiu
BMath, ND

3 January 2014
日本語

ターメリック-黄金のスパイス
By: Wendy Chiu BMath, ND

Doncrest Rehabilitation Centre
420 Hwy 7 East
Richmond Hill, Ontario L4B 3K2
www.drwchiu.com


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Turmeric The Golden Spice


パートI:前置き

ターメリックは、南東・中東料理で広く使われている黄金色のスパイスです。人気のスパイスであること以外にも、ターメリックは医学の多くの分野で使われている重要なハーブです。ターメリックの薬としての用途は、4000年前のインドにさかのぼります。ターメリックには、インディアン・サフラン、ハルディ、ウコン(姜黄)、テール・メリトといった多くの異なる名前があります。この植物の根茎(根)部分、ウコン、が黄色をしているため、ターメリックを黄根と呼ぶ人もいます。ターメリックはショウガと同じ科に属しています。ターメリックの主要成分は、クルクミンおよび揮発性油です[1]。この記事は、アーユルヴェーダ医療、漢方医学、西洋植物薬でのターメリックの果たす役割およびその安全性について考察します。

アーユルヴェーダ医療では、ターメリックは一般に体を強める性質を持ち、ゆえに多くの異なる病態に用いられます。ターメリックは一般に、肝障害や胆嚢障害、消化不良、過剰ガス、無食欲症や腸内寄生虫のような胃腸障害に対して使われます。また、切傷、日焼け、打撲、創傷のような肌の病態にも用いられます。他の用途には、関節炎、呼吸器疾患、月経不順や糖尿病といったものがあります[1]

漢方医学では、ウコン(姜黄)は脾臓、胃そして肝臓の経絡に作用します。ウコンは酸味、苦味そして温性を現しています。この植物の三大作用は、血にエネルギーを与え、気を動かし、そして胆汁分泌を刺激します。血にエネルギーを与える性質は、無月経(月経の欠如)および月経困難(痛みを伴う月経)を治療するのに用いられます。気を動かす性質は、過剰ガスを伴う消化不良および気の沈滞による関節痛を治療するのに用いられます。ウコンは胆汁分泌を刺激することから、胆嚢および肝臓障害を治療するのにも用いられます[2]

西洋植物薬では、ターメリックは抗ガン、抗炎症、抗酸化、抗細菌、抗ウィルスそしてコレステロール低下の諸作用で知られています[3]

安全性に関しては、ターメリックは何世紀もの間、スパイスそして家庭治療薬の両方として用いられてきました。米国食品医薬品局(FDA: U.S. Food and Drug Administration)は、ターメリックに関するモノグラフを発表し、その活性成分であるクルクミンを「一般に安全と見なされる(GRAS: Generally Regarded As Safe)」と格付けしました[1]。多数の臨床試験によると、クルクミンは一日8gの服用量までは非常に安全であるようです[4]。しかし、その胆汁刺激作用により、胆道閉塞症、胆石や胃潰瘍の患者たちはターメリックを避けるべきです。同様に、ターメリックは子宮を刺激するので、妊婦たちは避けるべきでしょう。抗凝血剤を服用している患者たちは、それが抗血小板作用および抗凝固作用を持つため、ターメリックの補給を避けるべきです[5]

ターメリックは広い範囲の薬効性があります。多くの研究では、ガン、関節炎や肌の老化に対するその作用について調査しました。次のパートでは、これらの病態の管理におけるターメリックの応用について詳細に見て行きましょう。



ターメリック-癌と闘う薬

パートII:抗ガンのメカニズム
By: Wendy Chiu BMath, ND

Doncrest Rehabilitation Centre
420 Hwy 7 East
Richmond Hill, Ontario L4B 3K2
www.drwchiu.com


ターメリック-癌と闘う薬

(化学名ジフェルロイルメタンとしても知られている)クルクミンはターメリックの主要成分で、腫瘍学では数々の興味深い薬理的作用を示します。この記事では、ターメリックが抑制するガンの種類、ガンと闘うメカニズム、従来のガン治療に及ぼす影響やそれをガン治療に利用する際の課題に焦点を当てます。

クルクミンは異なるタイプのガン細胞、特に白血病、肝臓ガン、結腸直腸ガン、すい臓ガン、胃ガン、前立腺ガン、乳ガンそして口腔ガンの成長や広がりを抑制します[1,2]。化学療法、多剤併用療法や放射線療法に耐性のあるガン細胞でさえ、クルクミンがプロトコルに加えられたときには、これらの療法に反応するようになります[2]

クルクミンがガンを抑制する方法の一つは、ガン細胞における正常な細胞死の情報伝達を復旧させることです。正常細胞は、細胞がダメージを受けたり、指定された機能を完了したりすると、細胞死の情報伝達を受けます。ガンはこの情報伝達に問題があるときに起こります。ダメージを受けた細胞は成長と増殖を続けます。正常な細胞死の情報伝達は、様々な細胞タンパク質による媒介を受けます。あるタンパク質は、細胞が生き延びるよう情報伝達を行い、他のタンパク質は細胞が死ぬよう情報伝達を行います。研究では、クルクミンが肝細胞ガンや胆管ガンのような異なるタイプのガンを、これらの情報伝達タンパク質に影響を及ぼすことにより抑制することが示されました[3, 4]

クルクミンがガンを抑えるもう一つの方法は、その抗炎症性および抗酸化性によります。ガンは、炎症およびフリーラジカルにより促進されます。クルクミンは、炎症性酵素を減らしフリーラジカルを捕集するあいだ中、肝臓の解毒化経路を支え、体の免疫を増強することにより、このダメージから体を守ります。これらの抗炎症および抗酸化作用は、イニシエーション、プロモーションそしてプログレションといったガンの様々な段階を通して見られます[1]

その抗炎症および抗酸化作用により、クルクミンは従来のガン治療の良いアジュバント(補佐剤)となるかも知れません。抗酸化物質は非ガン細胞を化学療法の毒性から保護し、ガンの成長および治療へのフリーラジカルによるダメージを防ぎます。ある研究では、黒色腫(皮膚ガンの最悪の形態)の治療でクルクミンをタモキシフェンと共に用いたところ、この組み合わせ治療により非ガン細胞が保持されつつ選択的にガン細胞が殺されることが示されました[5]。別の研究では、クルクミンは結腸ガンの抗ガン剤であるBM ANF1の有効性を著しく増加させたことが示されています[6]。同様にクルクミンは、合併症と化学療法や放射線療法の副作用(疲労、痛み、下痢、吐き気、嘔吐、呼吸気道感染症、肝臓毒性そして体重減少など)とを軽減させることから、レンゲソウやチョウセンニンジンのような他のハーブと共に用いられるかも知れません[2]。有望ではあるものの、クルクミンは化学療法薬の代謝を変える可能性があり、この理由から、マイナスの相互作用のリスクを最小限に抑えるために、ガンの人たちはクルクミンを使う前に自然療法医に相談することが勧められます。

これらの励みになる数々の発見にも関わらず、クルクミンは胃腸管での吸収が悪いために、その治療効果に関する論争があります。いったん吸収されると、クルクミンは迅速に他の化合物に分解され、肝臓で変化し、排泄されます[1]。この理由により、さらに高度な技術を使って、吸収と溶解性とを高めたクルクミン製品が製造されています。

結論として、クルクミンは異なるタイプおよび異なる段階のガンを治療する大きな可能性を示しています。副作用および合併症を抑えつつその化学療法および放射線療法の有効性を増加させる能力は非常に有望です。治療結果を出すために、クルクミンの吸収を改善することについては、さらに調査が必要です。それに加えて、化学療法薬との潜在的な相互作用に関するもっと良い評価が必要とされています。もしあなたが薬を処方されているならば、クルクミンを使う前にヘルスケア提供者に相談して下さい。



ターメリック-関節炎治療に光を当てる

パートIII:関節炎
By: Wendy Chiu BMath, ND

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ターメリック-関節炎治療に光を当てる

ターメリックは長い間、アーユルヴェーダ医療や漢方医学で関節炎を治療するのに使われてきました。およそ40%の関節炎患者たちは、その病態を管理するための代替療法を求めています。この傾向は、米国食品医薬局が抗炎症剤に対する健康被害警告を発表して以来、増加してきました[1]。この記事では、リウマチ性関節炎(RA: Rheumatoid Arthritis)の治療において、病気の異なる段階で異なる投薬経路を用いたクルクミンの有効性を、他の調合薬と比較することで評価します。リウマチ性関節炎の治療におけるクルクミンの推奨服用量も検討しましょう。

急性と慢性との両段階を含む病気全過程を通して、クルクミンはリウマチ性関節炎に有効であるようです。研究では、クルクミンが遺伝子発現を変更し、炎症促進性タンパク質であるNF-κBを制御することで炎症を抑制して関節の腫れを軽減したり、骨の分解に関係する細胞である骨芽細胞の活性を低下させ関節の破壊を遅くしたりすることが示されました[2]。動物実験では、4mg/kg/日のクルクミノイドが関節の腫れを急性期で75%、慢性期で68%、軽減することが示されました[3]

リウマチ性関節炎治療におけるクルクミンの有効性は、投薬経路に応じて様々です。ある動物実験では、腹腔内注射(体腔への注射)によるクルクミン投与により関節炎が経口経路よりも顕著に改善される(それぞれ75%、48%)ことが示されました[3]。これはクルクミンの腸内吸収が悪いことを反映しているのかも知れませんが、腸内吸収の悪さは体へ直接注射することにより回避されます。

いくつかの研究では、リウマチ性関節炎治療におけるクルクミンと処方薬との効能を比較しました。ジクロフェナックはリウマチ性関節炎の治療に使われる抗炎症剤の一つです。ある研究では、リウマチ性関節炎の進行中の患者たちを対象として、ジクロフェナックをクルクミン500mgと比較しました[4]。クルクミンは安全でかつ有害事象との関連がありませんでした[4]。別の研究では、クルクミンは骨関節炎(消耗が原因の関節炎)の治療において、体内でIL 1やIL 6といった一連の炎症性化学物質を減少させ、こわばり、痛みや可動域といった症状を対照群と比較して改善することから、効果的であることが分かりました[5]。[5]

クルクミンのもう一つの利点は、その素晴らしい安全性プロファイルです。抗炎症剤やコルチコステロイドとは異なり、クルクミンはむくみや膨満、高血圧、腸出血、消化性潰瘍や糖尿病および骨粗しょう症のリスク増加といった副作用がありません。[4, 5]

関節炎の治療におけるクルクミンの服用量については、ある研究者が一日3回の生のターメリックの根茎8-60gを推奨する[3]一方で、他の研究者は一日3回のクルクミン活性抽出物400mgを勧めています[6]。吸収に問題があると考えると、高い生物学的利用能を持つと示されたサプリメントを用いることが賢明です。

結論として、人間を対象とした研究では、クルクミンは貴重な抗関節炎薬であることが示されました。クルクミンは関節炎症状、組織炎症そして骨破壊を軽減します。クルクミンが、コルチコステロイドや抗炎症剤のような従来の処方薬にある、望まれない副作用プロファイルと関連がないことは重要です。このハーブの最大の可能性を解明するために、治療服用量および異なる投薬経路を用いたクルクミンの効果についてさらに研究がなされるべきです。



ターメリック-肌の老化に対する鎧

パートIV
By: Wendy Chiu BMath, ND

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ターメリック-肌の老化に対する鎧

老化は、全ての人が通り抜けなければならない不可避の過程です。肌は老化の兆候を最も良く示します。肌は内的および外的な要因の結果として老化します。血流減少やホルモンレベルの変化のような内的要因は肌の体積と弾性とを失わせ、たるみや皺の原因となります。紫外線(UV: ultraviolet radiation)や毒のような外的要因も、肌の細胞を破壊し、赤み、変色、黄ばみ、異常増殖や悪質感の原因となります[1]。これらの兆候は、酸化性ストレス、線維芽細胞の減少やコラーゲンの減少の結果として現れます[2]。この記事では、肌の老化との戦いにおいてクルクミンがこれらの変化や障害にどのように影響するかを詳細に見てゆきます。

紫外線への曝露やその他の環境毒は、肌への酸化性ストレスの原因となります。酸化性ストレスは、活性酸素種(ROS: reactive oxygen species)が体内の様々な物質と反応してフリーラジカルと呼ばれる不安定な化合物を作り出すときに起こります。これらのフリーラジカルは、カスケードで細胞にダメージを与えます[3]。損傷を受けた肌の細胞は細かい皺、失われた弾性や過度の色素沈着となって現れます。抗酸化物質は、フリーラジカルを除去し、連鎖反応を停止させます。ある研究では、クルクミンの抗酸化能力を化学的構造が類似した15の化合物と比較しました。クルクミンは最強のフリーラジカル抑制剤であることが分かりました[4]

コラーゲン、特にI型コラーゲンは人間の結合組織の主要タンパク成分です。線維芽細胞はコラーゲンを作る細胞です。本来の肌はコラーゲンと線維芽細胞との両方に大きく依存します。ですから、これらの成分をしっかりと維持することは、肌の老化と戦うのを助けます。ある研究調査では、47の薬用および食用植物のスキンケアにおける治療効果の可能性を調査・評価しました。これら47の植物の中で、6つの植物のみが対照群と比較した際に線維芽細胞を10%以上増加させましたが、クルクミンはそれらのうちの一つであることが示されました。この研究調査はさらにこれらの6つの植物のコラーゲンを作り出す能力をテストしました。I型コラーゲンの生成率はクルクミンが最高であることが分かりました。クルクミンは、I型コラーゲン効能促進剤として良く知られているアスコルビン酸(訳者注:ビタミンC)よりも高いコラーゲン生成率すら示したのです。このテストは、クルクミンがコラーゲン生成、肌細胞の増殖や肌細胞の再生を増加させる成長因子の一つであるTFG B1を増加させることも示しました[5]

ある研究では、日光と酸-塩基加水分解(化学反応の一つ)によりクルクミンが容易く分解され、ゆえにその治療効果を減少させることが分かりました。しかし、異なる薬物送達システム、固体脂質ナノ粒子(SLN: solid lipid nanoparticles)を用いてクルクミンを投与すると、クルクミンの安定性を改善し放出時間を長くし、肌への浸透をより良くします。従来のクリームと比較すると、固体脂質ナノ粒子クルクミンは、肌の湿潤および弾性をより効果的に改善します[3]

結論として、クルクミンは万能の抗酸化作用を示し、線維芽細胞の成長を支え、I型コラーゲン生成を刺激します。これらの性質によりクルクミンは、肌のアンチエージング療法の素晴らしい候補となっているのです。固体脂質ナノ粒子としてのクルクミン塗布の安全性に関する研究は多くありません。この分野でのより多くの研究により、アンチエージング肌療法の新しい時代が開かれるかも知れません。