脳の健康と神経細胞の成長を促す方法 - 証拠に基づく議論
神経細胞の成長については読んだことがあるでしょう!
神経系でタンパク質が生成されて用いられ、それによって脳の神経細胞が成長し、脳がより力強く迅速に機能できるようになります。
この記事では、このタンパク質を増加させるためにできることと、その根拠となる研究についてご紹介します。
運動:
脳の健康と認知機能は、学生や働きながら子育てをする親、老後を健康に過ごしたい退職間近の年配者など、あらゆる年齢層の人たちにとって重要です。認知能力は大切です!
認知機能の強化は、どんな世代でも、優先事項の一部であるべきです。
誰もが運動は健康状態にかかわりなく効果的であることを知っています。
誰もが運動によってより強く機敏になれることを知っています。
運動によって脳がより力強く迅速に機能できるようになることを知っていましたか?
運動は、一部の認知症の予防と治癒にも役立つことを知っていましたか?
では、それについてご説明します。
残念ながら、高齢者は認知症を発症するリスクが高いです。世界中で約3600万人が様々な認知症に苦しんでいて、この数は2050年までに8000万人に達すると予測されています(1)。
しかし、脳と身体の健康を保つためにできることがあります!
その一つは、文字通り行動、つまり運動です!
運動が脳に与える効果についてみていきましょう!
有酸素運動(ウォーキング、ランニング、水泳、サイクリング、インターバルトレーニングなど)により、神経系のタンパク質の生成が促され、脳が最大限に機能できるようになります。
このタンパク質は「脳由来神経栄養因子」(BDNF)と呼ばれます。
脳由来神経栄養因子は、神経細胞の成長を促して神経細胞の接続と可塑性を強化し、血管新生を促進するため、脳の健康と機能の改善に役立ちます(血管新生とは、新たな血管形成を示し、血管新生により脳の一部への血液供給が増加します)(2) 。血液は酸素を運び、脳組織に燃料を供給して脳機能を最大限に引き出すため、血液供給の増加は有益です。
脳由来神経栄養因子は、記憶力と認知力の向上に役立ちます(1)。脳由来神経栄養因子は、学習や記憶、より高い認知機能を司る脳領域で機能します(1)。また、記憶形成に役立ち、神経細胞の成長や機能を促進して、既存の神経細胞とその接続を強化することで、脳の働きを改善します(1)。
以下の場合、脳由来神経栄養因子が減少します(これは一例です):
- うつ病(3)
- パーキンソン病(3)
- アルツハイマー病(1)
- 慢性的な睡眠不足(1)
- ストレス(1)
- 座りがちな生活:ある動物実験で、運動不足と座りがちな生活の再現として、28日間足の使用を制限したところ、神経幹細胞の増殖が70%減少しました(4)。
健康な成人を対象とした研究では、有酸素運動により脳由来神経栄養因子が増加することが示されています(5)。
有酸素運動による脳由来神経栄養因子の増加は、神経障害がある場合も有効である可能性があるといわれています(5)。
特に重要なのは、脳由来神経栄養因子の増加が運動による効果に比例する点です。
つまり、運動量が増えると、脳由来神経栄養因子が増加して認知機能が改善します(6)。
要約すると、運動量が多い= より改善、運動量が少ない= わずかな改善(6)
この関係に関する研究では、週に2〜3回有酸素運動を行った場合、脳由来神経栄養因子の量はほぼ変化しませんが、週に4〜7回行うと、脳由来神経栄養因子が大幅に増加することが示されています(6)。
これは、運動を持続するうえで、素晴らしいモチベーションになります。
では、一休みして要約しましょう:
脳由来神経栄養因子は、特定の疾患を患うと減少し、運動などにより増加します。
また、脳由来神経栄養因子は、その体内における機能により、脳の健康と認知機能を向上させます。
これは健康な人にとって朗報です。さあ、体と脳を動かしましょう!
しかし、脳由来神経栄養因子の増加により認知症が改善するのでしょうか。文献によると改善するといわれています。
ある研究により、末梢神経の脳由来神経栄養因子が多いほど、アルツハイマー病を予防できることが示されています(1)。
別の研究では、うつ病を患った場合、パーキンソン病と同様に脳由来神経栄養因子が減少することが示されています(3)。また、運動によって、パーキンソン病患者の脳由来神経栄養因子が増加して運動機能が改善され(3)、運動は、抑うつや運動機能障害に効果がある可能性があることが示されています(3)。
有酸素運動により、神経疾患患者の歩行能力や身体機能、運動能力、心肺フィットネスが改善するといわれています(5)。
さらに別の研究では、運動による認知機能の改善は、脳由来神経栄養因子の増加によるもので、脳由来神経栄養因子の増加により、加齢に伴う認知機能の低下を防げることが示されています(7)。
これは朗報です。運動し続けることで、脳機能の改善など、様々な方向から健康を改善できます。
しかし、脳由来神経栄養因子のレベルと認知機能の改善に役立つライフスタイル要因は運動だけではありません。
様々なライフスタイル要因からキノコまで、他にも脳由来神経栄養因子を増加できるといわれているものがあります。
早速みてみましょう:
社交
人との交流により、脳由来神経栄養因子が増加して認知機能が改善し、認知症のリスクが減少するといわれています(7)。人付き合いが少ない、特に孤独感を抱えている場合、アルツハイマー型認知症の発症リスクが高いことが示されています(7)。
研究により、頻繁に人と交流することで認知機能が改善するといわれています(7)。
事実、マウスを用いた研究では、交流の増加に伴い脳由来神経栄養因子が増加することが示されています。これは記憶障害の改善につながります(7)。
ヤマブシタケ
ヤマブシタケには、脳由来神経栄養因子と神経成長因子(NGF)を増加させる物質が含まれています(8)。神経成長因子はミエリンの生成を促すため、脳の健康にとって重要です。ミエリンは、神経の周りにコーティングを構成し、神経の適切な通信を促します。
齧歯類を用いた研究では、ヤマブシタケエキスには、虚血性脳卒中やパーキンソン病、アルツハイマー病、うつ病のラットの神経細胞死を防ぐ効果があることが示されています(9)。神経因性疼痛のラットでは、ヤマブシタケエキスにより神経再生が促進され、機能の回復が促されました(9)。
人体実験(ランダム化二重盲検プラセボ対照試験)では、ヤマブシタケエキスにより認知機能が改善することが示されています(8)。
地元の健康食品店に駆け込みヤマブシタケを購入する前に、あらゆる自然食品がすべての人に適しているわけではないことを忘れてはいけません。また同様に、あらゆる製品が等しく製造されているわけではないので注意しましょう。
自然療法医に相談しましょう。自然療法医は、あなたに適した製品を選んで質の高い専門の製品やハーブを用いたり、少なくとも適した製品を特定できたりするので、効果がない製品や悪影響を及ぼす評判の悪い製品を避けられます。
一部の研究では、その他の脳由来神経栄養因子の増加を促す食品やサプリメントが示されています。自然療法医に相談してください。
瞑想
マントラを唱える超越瞑想を20分間、1日2回行うことで、脳由来神経栄養因子が増加してコルチゾールレベルが低下するのでしょうか?はい(1)
初めて瞑想する際、超越瞑想を行うでしょうか?たぶん行わないでしょう。
恐れることはありません。関連する研究で、超越瞑想によりコルチゾールレベルが低下するため、脳由来神経栄養因子が増加する可能性が高いことが示されています(1)。
これはどういうことでしょう?
コルチゾールは主なストレスホルモンであるため、ストレス管理がいかに重要であるかを示しています。また、マインドフルネス瞑想などの初心者向けの瞑想にもコルチゾールレベルを低下させる効果があります(10)。
医薬品
最後に、一部の認知症やうつ病の治療のための医薬品は、特に脳由来神経栄養因子を増加させることで効果をもたらします。
まとめ-この記事の概要
- 運動は心身の健康に良いことが証明されています。
- 脳由来神経栄養因子は、神経細胞と脳の健康と成長を促す神経系にあるタンパク質で、その多くが認知機能の改善を促します。
- 脳由来神経栄養因子が増加することで、認知機能を改善できるだけではなく、脳の疾患や機能障害を防げます。
- 運動(理想的には週に4〜7回)、社交、ストレス管理は、脳由来神経栄養因子レベルを維持および増加させ、脳の健康を保つうえで大切です。
- ヤマブシタケエキスには、脳由来神経栄養因子と神経成長因子を増加させて、認知機能を改善する効果があります。ただし、まず自然療法医に相談しましょう。
References:
(1) Ng TKS, Ho CSH, Tam WWS, Kua EH, Ho RC. Decreased Serum Brain-Derived Neurotrophic Factor (BDNF) Levels in Patients with Alzheimer's Disease (AD): A Systematic Review and Meta-Analysis. Int J Mol Sci. 2019;20(2):257. Published 2019 Jan 10. doi:10.3390/ijms20020257
(2) de Azevedo KPM, de Oliveira Segundo VH, de Medeiros GCBS, et al. Effects of exercise on the levels of BDNF and executive function in adolescents: A protocol for systematic review and meta-analysis. Medicine (Baltimore). 2019;98(28):e16445. doi:10.1097/MD.0000000000016445
(3) Farzaneh Rahmani, Amene Saghazadeh, Maryam Rahmani, Antonio L. Teixeira, Nima Rezaei, Vajiheh Aghamollaii, Hassan Eftekhar Ardebili. Plasma levels of brain-derived neurotrophic factor in patients with Parkinson disease: A systematic review and meta-analysis. Brain Research.Volume 1704.2019.Pages 127-136.ISSN 0006-8993.https://doi.org/10.1016/j.brainres.2018.10.006.
(4) Deborah, Chiaramonte Raffaella, Bottinelli Roberto, Canepari Monica, Bottai Daniele. Reduction of Movement in Neurological Diseases: Effects on Neural Stem Cells Characteristics.Frontiers in Neuroscience. 12(336). 2018. DOI=10.3389/fnins.2018.00336 https://www.frontiersin.org/article/10.3389/fnins.2018.00336
(5) Mackay , C.P., Kuys, S.S., Brauer, S.G. The Effect of Aerobic Exercise on Brain-Derived Neurotrophic Factor in People with Neurological Disorders: A Systematic Review and Meta-Analysis. Hindawi. Neural Plasticity.Volume 2017, Article ID 4716197, 9 pages . https://doi.org/10.1155/2017/4716197
(6) K. Knaepen, M. Goekint, E. M. Heyman, and R. Meeusen, “Neuroplasticity – exercise-induced response of peripheral brain-derived neurotrophic factor: a systematic review of experimental studies in human subjects,” Sports Medicine, vol. 40, no. 9, pp. 765–801, 2010
(7) Miranda M, Morici JF, Zanoni MB, Bekinschtein P. Brain-Derived Neurotrophic Factor: A Key Molecule for Memory in the Healthy and the Pathological Brain. Front Cell Neurosci. 2019;13:363. Published 2019 Aug 7. doi:10.3389/fncel.2019.00363
(8) Chiu, C.-H.; Chyau, C.-C.; Chen, C.-C.; Lee, L.-Y.; Chen, W.-P.; Liu, J.-L.; Lin, W.-H.; Mong, M.-C. Erinacine A-Enriched Hericium erinaceus Mycelium Produces Antidepressant-Like Effects through Modulating BDNF/PI3K/Akt/GSK-3β Signaling in Mice. Int. J. Mol. Sci. 2018, 19, 341.
(9) Li IC, Lee LY, Tzeng TT, et al. Neurohealth Properties of Hericium erinaceusMycelia Enriched with Erinacines. Behav Neurol. 2018;2018:5802634. Published 2018 May 21. doi:10.1155/2018/5802634
(10) Turakitwanakan W, Mekseepralard C, Busarakumtragul P.
Effects of mindfulness meditation on serum cortisol of medical students.J Med Assoc Thai. 2013 Jan;96 Suppl 1:S90-5.