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脂肪について知っておくべきこと

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脂肪について知っておくべきこと
良い点、悪い点そして醜い点
By: フィリップ・ルチョタス理学士・自然療法医師

ボルトン自然療法クリニック
64 King St W, Bolton, ON L7E1C7
www.boltonnaturopathic.ca
info@boltonnaturopathic.ca



脂肪について知っておくべきこと


はじめに

世の中は、脂肪が健康に対して及ぼす有害そして良い作用に関する混乱で満ちています。低脂肪、無脂肪、善玉脂肪…。これら全部の中で真実はどれでしょうか?お気付きかも知れませんが、その答えは無脂肪・低脂肪支持者によって信じさせられているよりも複雑です。脂肪は体内の一つ一つの細胞を取り巻く脂質膜を形成し、その膜内に含まれる異なる脂肪の相対比率が正常な細胞機能において不可欠な役割を果たします。この記事では、異なる種類の食事脂肪、脂肪に関連する一般的な迷信、そして食事・サプリメントで摂取するのに理想的な脂肪について探求します。

話を始める前に、脂肪の名称について簡単に注記を差し入れましょう。脂肪酸は、炭素の長鎖(最長25炭素原子)とそれに結合する水素とで構成されています。飽和脂肪では炭素原子間は単結合しか見られません。その一方で、不飽和脂肪あるいは多価不飽和脂肪酸(PUFAs: poly-unsaturated fatty acids)では、少なくとも一つの二重結合が存在し、ゆえにその脂肪は完全に飽和していません。この種類の結合は単結合よりも不安定で、そのため不飽和脂肪は室温で液体である傾向にあります。たとえば、バターは飽和脂肪ですが、オリーブオイルは不飽和脂肪です。

What You Need to Know About Fats不飽和脂肪はオメガ3、オメガ6、オメガ9脂肪酸に細分されます。これらの数は単に二重結合の位置を示します。たとえば、オメガ3脂肪酸は最初の二重結合が末端のメチル基から3番目の炭素にあり、オメガ6は最初の二重結合が6番目の炭素に、という具合です。図はこの分類の図解です。

植物由来のオメガ3 植物由来のオメガ3

最も潤沢な植物由来のオメガ3源は亜麻仁油ですが、亜麻仁油はαリノレン酸(ALA: alpha-linolenic acid)と呼ばれる脂肪を含んでいます。αリノレン酸には、コレステロールや血圧を低くする特定の健康効果があります。例えば、末梢血管障害の患者110人を対象として亜麻仁の効果を調査した2013年の研究では、血圧に対する影響を評価しました[1]。参加者たちは無作為に、30gの亜麻仁あるいはプラセボの投与を6か月間受けました。その結果、プラセボと比較して亜麻仁群では収縮期血圧(測定血圧の最高値)が10ポイント、拡張期血圧(最低値)が7ポイント低いことが6か月後に示されました。この効果は、調査開始時に高血圧だった患者たちの間でのみで見られ、正常血圧の患者たちの間では見られませんでした。

もう一つの研究では、メタボリック症候群による心疾患リスクのより高い患者たちで、αリノレン酸が豊富な油を高摂取することにより、コレステロールプロファイルのトリグリセリド比が有意に減少することが示されました[2]。中程度の血圧低下も見られました。

しかし、オメガ3の摂取には亜麻仁油で十分であり、魚由来のオメガ3を摂取を望まない人たちにとって亜麻仁油は良い選択肢であるという誤解が普及しています。残念ながら、αリノレン酸に独自の健康効果が備わっているのは確かではあるものの、αリノレン酸の効果は、エイコサペンタエン酸(EPA: eicosapentaenoic acid)やドコサヘキサエン酸(DHA: docosahexaenoic acid)といった魚由来のオメガ3とは、範囲も程度も比較になりません。

多くの人々は、αリノレン酸はEPAやDHAの有効な前駆体で、必要に応じて転換されるものだと思い込んでいます。残念ながら、膨大な科学的研究によるとαリノレン酸のEPAやDHAへの転換は、主要酵素であるδ5不飽和化酵素が無能であるため極めて制約があることが示されています[3]。ALAをEPAとDHAとにそれぞれ転換するδ5不飽和化酵素とδ6不飽和化酵素とは極めて遅く、実際に生成されるEPAとDHAとの量を大幅に制限します。この話題の卓越したレビューで、栄養学者のLeah Gillinghamは“人間はオメガ3長鎖不飽和脂肪酸(PUFA: long-chain polyunsaturated fatty acids)を生化学合成するのに必要な酵素を持っているが、数々の研究では…高々5%のALAしかエイコサペンタエン酸(EPA)に変換されず、0.5%未満のALAしかドコサヘキサエン酸(DHA)に変換されることはない”と書きました[3]。人間の被験者に大量の亜麻仁油由来のALAを与えた研究では、生体内のEPAやDHAの実際のレベルに非常に小さな変化しか示されませんでした[3]。ですから、EPAとDHAとに関連する特定の健康効果を得るためには、魚や海洋性オメガ3脂肪酸の直接摂取が必要です。

魚由来のオメガ3 魚由来のオメガ3

二つの主要な魚由来のオメガ3はEPAおよびDHAです。これらの脂肪は、文字通り数十万の心血管の健康(コレステロール、血圧や血糖、脳機能、情緒、炎症、慢性痛、免疫機能やガンなど)に及ぼす作用を探求する研究の対象でした。これらの領域全てでEPAやDHAによる特定の効果を示す十分な証拠が存在します[4-9]。ですから、これら特定の脂肪から派生する健康効果の範囲は、植物由来のオメガ3のそれよりもずっと広大です。体内では十分量のEPAやDHAを合成できないことも見てきましたが、前もって作られたEPAおよびDHAの摂取は、食事やサプリメントについての極めて重要な検討事項です。

公衆衛生の観点から、魚油について最も重要な領域は心血管疾患です。非常に大規模な試験では、魚油補給により心臓発作および卒中のリスク、特に突然の致命的心臓発作のリスクを減少させることが示されました。GISSI-Prevenzione試験と呼ばれる有名な調査では、過去三か月間で既に心臓発作が一回ありかつその治療のための標準的な投薬を受けている11,000人を超える患者たちが無作為に、1) ビタミンE, 2) 一日1gのEPA+DPA, 3) 両方, 4) なし(対照群)の4つの追加治療群に3.5年の期間振り分けられました[4]。この調査結果によると、プラセボと比較して魚油での栄養補給は死亡全体のリスクを14%、心血管疾患による死亡のリスクを17%減少させました[4]。同様に、非致死的心臓発作および卒中にも有意な減少がありました[5]

心臓発作や卒中のような病気の転帰に加えて、魚油はコレステロールや血圧のような既知の心血管リスク因子を減少させることが分かりました。最近のある調査では、高コレステロールの患者24人が無作為に一日1800mgのEPAあるいは10mgのプラバスタチン(コレステロールの薬)のいずれかの投与を3カ月間受けました[7]。EPAを受けた患者たちでは、収縮期血圧に8.7%の低下があり、そして上肢収縮期血圧(上腕での血圧検査)に8%の低下がありました。The American Journal of Clinical Nutritionに発表されたもう一つの研究では、魚油のコレステロール成分に対する効果を詳細に調査しました[8]。一日3.4gのEPAを8週間補給することにより、総コレステロールの有害成分の一つであるトリグリセリドが、プラセボに比較して27%減少することが示されました[8]。1gのEPA+DHAの組み合わせでさえ効果がある心疾患の予防とは違って、最低2gのEPA+DHAがこのコレステロール成分を減らすために必要です。魚油は“悪玉コレステロール”として知られるLDLに影響を与えることはありませんが、“善玉コレステロール”の HDLを増加させます。

魚油は、それが情緒に与える影響についても手広く研究されてきました。EPA成分は魚油の抗うつ作用および精神安定作用に必要不可欠です。多くの研究が、EPAが豊富な油はこの領域での有効性に不可欠であることを示しています[10]。例えば、ある916人の患者を対象とした15の無作為対照試験のメタ・アナリシスでは、標準化されたうつ評価尺度により評価したところ、EPAを60%以上含有する魚油を使用したこれらの研究が、うつ症状の軽減に有効性を示すことが分かりました[11]。EPA含有が60%以下のサプリメントは効果がありません。魚油は脳内で数々のメカニズムを持つと考えられており、主要なメカニズムの1つは抗炎症作用を通したもの、また別のものは細胞膜の構成と流動性との変化による細胞間情報伝達の交互変化によるものです[12]。魚油は、心拍と平滑筋収縮とにおけるストレス誘導性の変化も減少させることが示されました[6]

最後に、魚由来のオメガ3sは最も万能の天然抗炎症薬の一つで[13]、ぜんそく、リウマチ性関節炎や炎症性大腸疾患のような病態に有益です。EPAとDHAとは、プロスタグランジンE2やロイコトリエンのような炎症性サイトカインの生産を競合的に抑制することが示されました。ここで、EPAとDHAはレゾルビンと呼ばれる分子の生産に関わっていることを示唆するさらに新しいエビデンスも存在します[13]。これは他の食用脂肪については述べられていない独特の機能です。

オメガ6脂肪酸 オメガ6脂肪酸

オメガ6脂肪酸は、コーン油、ひまわり油、ベニバナ油のような植物油に含まれています。主要なオメガ6の一つは、αリノレイン酸で、亜麻のαリノレン酸と混同してはなりません。今日ではオメガ6油は至る所にあります。伝統的にはかつて人間の食事でオメガ6がオメガ3に占める割はずっと低かったのです。これに基づくと、北米の大部分の人々は既に過剰のオメガ6を摂取しているために、オメガ6を補給したり食事を通して摂取する最低量を義務付けたりするのは、勧められません。それよりもオメガ6に対するオメガ3摂取量を増やす方が重要です[14]

月見草油、カシス油、ルリヂサ油のようなサプリメントとして入手可能なオメガ6油もいくつか存在しますが、これらの油は全てγリノレン酸(GLA: gamma-linolenic acid)を含んでいます。予備的研究によるとこの脂肪には、周期性乳房痛(月経前の乳房の痛み)のようなきわめて特定の状況で何らかの役割を果たす可能性が示唆されており、この周期性乳房痛においてγリノレン酸はほぼ抗炎症剤(NSAIDS: anti-inflammatory medications)に匹敵する痛みの軽減をもたらすことが示されました[15, 16]

神話を破壊する“オメガ7”

現在、オメガ7脂肪の重要性に関するかなりのマーケティング誇大広告があり、この方向に向かって用意された多数の新製品が存在します。他のオメガ油のように、オメガ7は、二重結合が炭素7の位置にある不飽和脂肪です。残念なことに、メディアや業界の注目にもかかわらず、オメガ7の効果について人間やその他を対象としたデータは殆どありません。北米最大の科学データベースであるPubmedデータベースを一回検索すると、オメガ7についての存在する臨床試験は一つも示されません。この薬剤は今のところ良く立証されておらず、主要な医学的役割があるとするには時期尚早であるようです。どう少なく見積もっても、魚由来オメガ3に見られる種類の科学的突出を成するようには見えません。差し当たり、オメガ7への注目の大部分は非常に極小のエビデンスに基づくマーケティング戦術であるようです。

オメガ9

最後に、重要な食用油の一つ、エクストラバージンオリーブ油に注目します。エクストラバージンオリーブ油はオメガ9脂肪酸とりわけオレイン酸の最も豊富な源ですが、これは一価不飽和脂肪酸(MUFA: mono-unsaturated fatty acid)です。その脂肪分に加えて、オリーブ油はポリフェノール抗酸化剤が豊富ですが、これはオリーブ油の治療効果の起因の一部になっています。オリーブ油は、現在評価されている地中海式食事法の“秘密の”成分です。

オリーブ油は自然療法医師には“処方食品”であると見なされています。血圧、血糖やコレステロールといった様々な代謝パラメターに恩恵をもたらすために、オリーブ油は薬として一日大さじ2-4の服用量で処方されます。オリーブ油は炎症を軽減させることも示されていますが、これはそのポリフェノール成分による作用のようです。オリーブオイルのポリフェノールは、非加熱エクストラバージンオリーブ油で最高量含まれます。ですから、非加熱エクストラバージンオリーブ油は治療目的に使われるべき唯一の種類のオリーブ油です。

研究では、エクストラバージンオリーブ油(略EVOO: extra virgin olive oil)の健康効果が確認されました。前糖尿病の女性たちを対象としたある研究では、オリーブ油を料理に使用すると食後のインスリンレベルの急上昇が減少し、より良好な血糖調節を示すことが分かりました[17]。別の研究では、エクストラバージンオリーブ油摂取により、健康な高齢の成人たちでHDLコレステロール(善玉コレステロール)の抗炎症活性が増加することが分かりました[18]。三番目の研究では、一日4gエクストラバージンオリーブ油の摂取により、アポリポたんぱく質Bで示される肝臓でのコレステロール合成に有意な減少をもたらすことが示されました[19]。最後に、もう一つの研究では、エクストラバージンオリーブ油が豊富に含まれる食事により、高血圧症患者たちの収縮期血圧に7.9ポイントの低下をもたらすことが示されました[20]。酸化LDLコレステロールや炎症マーカーの一つであるC反応性たんぱく質にも減少が見られました。

エクストラバージンオリーブ油に関する新しい興味の一領域は、認知機能です。たとえば、心血管疾患リスクの高い285人を対象とした2013年のある研究では、6年以上にわたるオリーブ油の補給により、認知の領域全てで有意に良好な実行得点、そして流暢さおよび記憶の課題では有意に良好な成績という結果となることが分かりました。特に、調査期間を通してエクストラバージンオリーブ油群では、軽度の認知障害発症の確率が、低脂肪食を摂取した患者たちと比較して、60%以上少なかったのです[21]。[21]

下の表は、エビデンスに基づいた脂肪摂取の勧告についての概略を示しています。

カテゴリー 服用量
飽和脂肪 動物油 一日あたり摂取カロリーの10%未満
不飽和脂肪酸:
オメガ3 植物由来:亜麻仁油、キャノーラ油など
魚由来: EPA+DHA
大さじ2-4杯(30-60g)
EPA+DHA合わせて1-2g
オメガ6 植物油:トウモロコシ、ヒマワリ、ベニバナ、大豆など 該当なし(偏在)
オメガ9 エクストラバージンオリーブ油 大さじ2-4杯(30-60g)