メインコンテンツに移動

旧石器時代食事法

日本語

旧石器時代食事法
ある考察

By: フィリップ・ルチョタス理学修士・自然療法医師
ボルトン自然療法クリニック
64 King St W, Bolton, ON L7E1C7
www.boltonnaturopathic.ca
info@boltonnaturopathic.ca


旧石器時代食事法




旧石器時代食事法とは何か?

今日の現代的食事は、II型糖尿病、肥満や心血管疾患といった多数の慢性病を引き起こす可能性があります。これらの病態は、物質的な豊かさと強く関連しています。旧石器時代食事法(または旧石器食事法)は、健康を重視する人々のコミュニティで極めて人気が高いものでした。旧石器食事法は着々と勢いを付け、今やテレビ、雑誌や様々なブログで特集されています。旧石器食事法周辺で行われたマーケティングのいくつかは時には極端な可能性があることから、大きな変化に踏み出す前に少し注意する価値があります。ある人気のウェブサイトは“旧石器食事法は、あなたがスリムで強くエネルギッシュでいるのを助けるために、遺伝子に働きかける唯一の栄養上のアプローチであるため、最も健康的な食事法です”と言っています。旧石器食事法は原始時代食事法あるいは“原始人食事法“としても知られています。旧石器食事法では、農業が完全に発展する前に人間が食べていた食物を摂取します。旧石器時代はおおよそ2,500万年前に始まり、おおよそ1万年前に終わりました。この食事法の背後ある理論の一部は、”農業および動物の家畜化が始まったのがたった1万年前で、それに伴って起きた食事の変化に対して人間が相応しく進化するために十分な時間がなかった“というものです。代謝および生理学的な核となるプロセスは、この比較的新しい食物粒子に十分に反応していません。言い換えると、今日の人間の体は現代的な食事ではなく、依然として旧石器時代のような食事に適応しているのです。

旧石器食事法では、赤肉、魚、野菜、果物、根菜、卵およびナッツといった野生の動物源および未耕作の植物源から成る食物を摂取します[1]。この食事法では、穀物、マメ科植物、乳製品、塩、精製糖および加工油のような品目は除外されます。除外された品目は、人間が農耕し家畜を育て始める前には手に入らなかったものです。旧石器食事法には、飴類、清涼飲料水、ビールや加塩を避けるというような他の一般に受け入れられている健康上の推奨事項も含まれます。今までほんのいくつかの研究でしか、旧石器食事法の病気や病気のリスク因子に対する効果が調査されていませんが、より多くの研究が進行中でもあります。この記事でこれから検討するように、II型糖尿病での改善や心血管リスク因子の減少についてのエビデンスがあります。これらは、より詳細に調査された研究結果のうちのいくつかに過ぎませんが、しかし旧石器食事法は他の慢性変性疾患のための治療としてあるいは、平均的な人のための健康的な基本食事法として応用可能かも知れません。旧石器食事法に含まれる食品のプラスの健康上の転帰を奨励している研究があるのと同時に、除外食物摂取によるマイナスの建康上の転帰を強調する研究があります。


旧石器食事法はどのように機能するか? 旧石器食事法はどのように機能するか?

旧石器食事法が有効であることを示唆する数々の異なる理由が存在します。旧石器食事法の主要栄養素量は、(エネルギー換算で)ほぼ40%がタンパク質、40%が脂肪そして20%が炭水化物です。これは現代的食事からかなりかけ離れていますが、現代的な食事では主要エネルギー源として炭水化物により重点が置かれています。旧石器食事法は、現代的な食事と比較してカロリーがより少なく血糖指数がより低い可能性があります。もしそうならば、旧石器食事法は減量を達成し血糖を安定化するのにより良いかも知れません。旧石器食事法は同様により大きな飽満感をもたらす可能性があります。言い換えると、旧石器食事法は人々により早く満腹感をもたらすのです。これはより大量の食物摂取を防ぎますが、それ自体が減量をもたらし胴囲を減少させる可能性があり、それら両方による健康効果も伴われます。水分含有が高いため、果物や野菜の摂取量が高いほど、満腹感がより早くおとずれます。旧石器食事法は現代的な食事と比較してタンパク質も高含有です。通常、タンパク質がより大量に含まれる食事は、身体組成の好ましい変化、コレステロール値の改善そして血糖調整の改善と関連があります。

旧石器食事法は、ビタミン・ミネラル組成という観点から研究されてきました[2]。全体として、旧石器食事法は、健康的なビタミン、ミネラルそして抗酸化物質がより大量に含まれるという議論がありました。例えば、旧石器食事法は、著しく塩分が少なく、著しくカリウムが多かったのです。カリウムが多く塩分の少ない食事は、高血圧、卒中、腎結石や骨粗しょう症のような病態に有効であることが証明されています。例外があります。旧石器食事法は、一部に乳製品が除外されているという理由のため、他の食事法よりもカルシウムが少ししか含まれません。これは、弱い骨が原因で骨粗しょう症および骨減少症リスクの理論的な増加につながる可能性があります。しかし、旧石器時代の先祖たちは活動レベルがより大きく日光への曝露もより大きかったため、カルシウム吸収もより良かったことでしょう。もう一つの懸念事項は、肉の高摂取が理由でカルシウムが失われるかも知れない(これは腎臓で起きるプロセスによるものです)ことですが、これも果物および野菜の高摂取により相殺されます。提案されているこれらのメカニズムは含有食物に重点を置いていますが、旧石器食事法が有効なのは除外食物のお陰かも知れません。穀物、マメ科植物そして乳製品は全て、軽度からより重度の幅で健康上のマイナスの転帰と関連があるとされています。これらの災いとなるかも知れない食物を除外することは、健康を改善するのを直接助けるのかも知れません。


旧石器食事法がII型糖尿病に及ぼす効果とは? 旧石器食事法がII型糖尿病に及ぼす効果とは?

2009年に発表されたある研究では、旧石器食事法がII型糖尿病に及ぼす影響について調査を行いました。これは患者13人(女性3人および男性10人)を対象とした無作為交差研究でした[3]。参加者たちは、赤肉、魚、果物、野菜、根菜そしてナッツを基本とする旧石器食そしてガイドラインに従うよう作られた糖尿病食を、二期間(一期間3ヶ月)連続で、取るよう指示されました。参加者全員が両方の食事で介入を行ったことから、この研究は交差研究と見なされます。研究者たちは、体重、胴囲、血清脂質、(炎症を測る)C反応性タンパク、血圧そして糖化ヘモグロビンに加えて他のインスリン尺度の変化を測定しました。研究者たちは、食事記録を用いて食事摂取を評価しました。調査の結果、患者たちが糖尿病を平均9年患っており通常は投薬治療(一般にメトホルミン)を受けていることが示されました。糖尿病食と比較して、旧石器食は糖化ヘモグロビン、拡張期血圧、BMIそして胴囲が減少する結果(全てが一般に健康的である結果)となりました。旧石器食事法は(保護的な)HDLコレステロールが上昇する結果ともなりました。旧石器食事法では、総エネルギー、エネルギー密度、炭水化物、食事の血糖負荷そして他の食事パラメーターの値が低くなりました。血糖負荷というのは、食物が食後にその人の血糖をどれくらい増加させるかを示す数値で、基本的には食事に炭水化物が占める割合です。旧石器食事法は血糖負荷が低かったために、この食事法は糖尿病食よりも血糖を上昇させませんでしたが、これはプラスの結果です。

この研究はその規模の小ささによる制限があります、つまり強い説得力を持たせるのに十分な参加者を募らなかったのです。もう一つの懸念事項は、参加者たちがどちらの食事を摂取しているのかを知らされていたことですが、これは時には摂取した食事に直接関連のない付加的なプラスの効果の原因となる可能性があります。さらに、この研究では、血糖の低下が統計的な有意性に達することはなく、インスリン尺度の結果に差異が示されなかったため、批判される可能性があります。全体としては、この結果は確実に見込みがあることを示し、旧石器食事法は安全であることを証明しています。残念ながら、これは旧石器食事法が糖尿病に与える影響について調査した唯一の入手可能な試験であり、ですからより多くの参加者を対象としてさらに研究が行われるべきでしょう。


旧石器食事法が心臓に及ぼす効果とは? 旧石器食事法が心臓に及ぼす効果とは?

糖尿病研究と同様に、旧石器食事法の心血管に及ぼす影響について行われた研究は多くありません。ある研究では、虚血性心疾患で、かつそれに加えて糖尿病あるいは前糖尿病のいずれかの診断を受けた参加者29人を対象に調査を行いました[29]。参加者たちは、旧石器食事法あるいは(全粒穀物、低脂肪乳製品、野菜、果物、魚、油そしてマーガリンを基本とする)地中海式食事法のいずれかに割り振られました。両群で血糖調整に改善がありましたが、旧石器食の人たちの方がより良く改善しました。もう一つの対照試験では、健康な参加者14人を対象に旧石器食事法について調査しました。これらの研究者たちは、体重、BMI、胴囲、収縮期血圧そして血液凝固マーカーが改善したことを発見しました。血圧、動脈硬度の改善そして(LDLやトリグリセリドのような)有害なコレステロール値の低下による改善を伴う同様の結果が、別の試験で見られました。短期的に旧石器食を摂取しただけでもこれらパラメーターの多くを改善しました。全体として、旧石器食事法はマイナスの結果を生むことなく心臓の健康を促進するようです。

旧石器食事法は、一万年以上昔の旧石器時代に私たちの先祖がかつて食べていた食物を重要視しています。これらの食物には、果物、野菜、赤肉、シーフード、ナッツ類、種子類そして健康的な脂肪といったものがあります。この食事法はまた、人間の消化システム(そして一般に人間) が相応しく適応していないという議論の対象である数々の異なる食物を除外しています。これらには、乳製品、穀物、加工食品そして豆科植物といったものがあります。旧石器食事法は、数々の理由により有効である可能性があります。私たちは、炭水化物よりはむしろタンパク質や脂肪により重点を置いた旧石器食事法の主要栄養素について論じました。旧石器食事法はより低カロリーで、より早く満腹感をもたらし、その結果として人々の食物摂取総量を減少させる可能性があります(これは一般に慢性変性疾患に良いことです)。旧石器食事法はビタミンおよびミネラルの組成が高いとうたわれています。一般に研究はこういった考えを支持していますが、いくつかの例外があります。旧石器食事法でビタミンあるいはミネラルの量がより少ない(例えばカルシウムが少ない)時に、しばしば全体的に健康にプラスの影響があるような他の要因により均衡が保たれることを確認しました。旧石器食から支障となる可能性の食物を除外することも、健康の改善を助けるのかも知れません。旧石器食事法をII型糖尿病に対して用いることを支持するエビデンスは多くはないと言うよりも、むしろ現在確認できる研究は、参加者が限られサンプル数が小さいために有力ではありません。しかしこの研究は、旧石器食事法は安全で、糖尿病や心血管の健康に関しての両方で、数々の転帰を助けるのに極めて効果的でありそうなことを示しています。