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プロバイオティクス

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人間の消化管は、バクテリア、古細菌、ウイルス、菌類からなる豊かで多様な微生物相で構成されたダイナミックな生態系です。1,2一人ひとりに独自のマイクロバイオータの構成があり、この共生関係のバランスは「代謝と免疫機能を最適な状態にし、発病を防ぐために大切にしなければなりません」。 この記事では、重要な定義と分類を確認し、免疫系と消化器系に焦点を当てた特定のプロバイオティクスの機能を簡単にご紹介しながらサプリメントの質について検討し、今後の研究分野について触れていきます。

定義

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微生物: 様々な種類の有機物質をエネルギー源として利用し、有毒なものを無害な副産物に変換する幅広い能力を備えた天然の分解者。 5

プロバイオティクス: 世界保健機関により「適切な量で投与されると、宿主に健康上の利益をもたらす生きた微生物」と定義されています。 6

プレバイオティクス: 微生物叢を調整する宿主に健康上の利益をもたらす、生存不能な食品成分。基本的にプロバイオティクス食品で、主にイヌリン、フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)などのオリゴ糖です。 7

シンバイオティクス: 腸内の有益な有機体の生存と活動を改善することによって宿主に有益に影響を与えるプロバイオティクスとプレバイオティクスの相乗的な組み合わせ。8,9

ポストバイオティクス: 宿主内で生物学的活性を有するプロバイオティクスからの生存不能な細菌産物または代謝副産物。 10

分類

ヒトの消化管細菌は、主にグラム陰性菌とグラム陽性菌の2つの主要な門に分類され、腸内細菌叢の約90%を占めています。  放線菌、プロテオバクテリア、フソバクテリア、ウェルコミクロビウムはそれほど多くありません。 ファーミキューテスには、ラクトバチルス、バチルス、クロストリジウム、エンテロコッカス、ルミノコッカスが含まれます。バクテロイデス門には特にバクテロイデス属が含まれていて、放線菌は主にビフィズス菌属で構成されています。 プロテオバクテリアには、大腸菌、赤痢菌、ピロリ菌、エルシニア、レジオネラリスなどの多くの病原菌が含まれますが、一部は非病原性です。

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バクテロイデス属とファーミキューテス属は、結腸細胞に栄養を与えて炎症を軽減し、細菌感染症と戦うのに役立つ短鎖脂肪酸を生成します。 ラクトバシラス属は、乳酸を生成する細菌のグループで、粘膜バリアを保護し、腸透過性を低下させます。一部のラクトバシラス属は殺菌性のある過酸化水素を生成し、病原菌の増殖を防ぎます。

ビフィズス菌はグラム陽性菌で、グルコース利用の副産物として乳酸と酢酸を生成します。

バチルス・コアグランスは、通常の正常細菌叢の構成要素ではありません。他のプロバイオティクスと同様に治療に用いられますが、腸粘膜にコロニーを形成するかどうかは不明です。乳酸を生成することから、誤って乳酸菌として分類されることが多くあり、胞子を形成することから、一部のサプリメントには誤ってラクトバチルス・スポロゲネスとして表記されています。バチルス・コアグランスは病原菌を減らし、免疫応答を高める可能性があります。 乾燥した状態で無期限に保管でき、高温と酸に耐性があるため、多くの利点があります。

サッカロミセス ・ボウラディと出芽酵母は非病原性酵母です。 サッカロミケス・ボウラディと出芽酵母は似ていますが、成長、温度耐性、耐酸性に違いがあります。 17

特定の健康状態のためのプロバイオティクス

免疫機能

長年にわたり、プロバイオティクスと免疫機能の関係が解明されてきました。21件のヒト試験のレビューでは、ラクトバチルス・ ヘルベティカス R0052とラクトバチルス・ラムノーススR0011は上皮細胞に付着し、バリア機能の維持に役立ち、抗炎症反応を引き起こす他(IL‑1β、IL‑8、およびTNF‑αのダウンレギュレーション)、病原体の付着をブロックし、腸から除去する働きがあることが示されています。 持久力を要するアスリートにおけるラクトバチルス・カゼイ・シロタ株の補給に関する研究では、プラセボ群と比較して、上気道感染症(URTI)の症例数が有意に少ない一方、症状の重度と期間に有意差はないことがわかりました。 個々の菌株については、ストレスのかかる学部の学生を対象に行われた研究では、B.ビフィズス菌のみが6週間の介入中に風邪/インフルエンザの発生率を減らすのに有意な結果をもたらし、ビフィドバクテリウム・インファンティスとラクトバチルス・ ヘルベティカスは、プラセボと比較して全く違いが示されませんでした。 子どもを対象とした研究では、ラクトバチルス・ ヘルベティカスR0052、ビフィドバクテリウム・インファンティスR0033、ビフィドバクテリウム・ビフィダムR0071、FOSで構成されるシンバイオティクスが、一般的な感染症の発症リスクを低下させる可能性があることが示されました。 21

喘息を持つ子どもに関する研究では、ラクトバチルス・ガセリにより、喘息とアレルギー性鼻炎を持つ子どもの臨床症状と免疫調節が改善されました。 ラクトバチルス・パラカセイとラクトバチルス・ ファーメンタムを別々に投与すると、どちらも喘息の重症度が低くなりましたが、一緒に投与すると、最大呼気流量(PEFR)が増加し、IgEレベルが低下しました。 ラクトバチルス・アシドフィルスNCFMを単独で投与した場合と、ビフィドバクテリウム・アニマリスsspと組み合わせて投与し、ラクティス群とプラセボ群を比較したところ、プロバイオティクスにより、発熱、鼻漏、咳の発生率と持続時間や、抗生物質の必要性が減少しましたが、組み合わせた場合に明らかに効果がありました。 ビフィズス菌を組み合わせた場合、IgEによるアレルギーと喘息にさらに効果があるようです。 3ヶ月間の使用に関する研究が数多くあります。プロバイオティクスの使用期間に関するある研究では、喘鳴のある子どもにラクトバチルス・アシドフィルス、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダムを含むシンバイオティクスを3ヶ月間投与した場合、呼吸器感染症にかかることはめったにないことが示されました。 「喘鳴の頻度のコントロールを確立する」ためには、6ヶ月間投与する必要がありました。 invitroおよびマウスを用いた研究では、ラクトバチルス・プランタルムにより、アレルギー症状が有意に軽減し、IgEのレベルが低下することが示されています。 全体として、プロバイオティクスを組み合わせることで、個々に投与した場合よりも改善が見られ、より幅広く作用するようです。

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多くの場合、呼吸器疾患を伴うアトピー性湿疹/皮膚炎症候群の子どもにラクトバチルス・サケイを補給すると、実質的な臨床的改善とケモカインレベルの有意な低下が示されます。 同様に、プレバイオティクスの摂取により、アレルギー性皮膚疾患の重度と発症リスクが低下することが示されました。
高齢者にラクトバチルス・プランタルムの2つの菌株(CECT 7315および7316)を投与した場合、高用量と低用量で免疫増強効果が異なり、こうした効果は、プロバイオティクスの投与を中止した後12週間残っていました。
もう1つの魅力的な研究分野はワクチン接種後の免疫調節で、プロバイオティクスとプレバイオティクスの両方が免疫応答の上昇に効果があることが示されています。 感染症の子どもとロタウイルスのワクチン接種中に子どもにラクトバチルス・カゼイを投与したところ、分泌型IgAレベルが上昇しました。 33

関節リウマチ

プロバイオティクスの免疫調節効果について、自己免疫疾患に関する研究が行われています。関節リウマチ(RA)を持つ被験者にラクトバチルス・カゼイを補給したところ、炎症性サイトカイン(TNF、IL-6、IL-12)が大幅に減少し、抑制性サイトカイン(IL-10)が増加することが示されています。 ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ビフィドバクテリウム・ビフィダムを組み合わせた研究と、 バチルス・コアグランス に関する研究では、 活動レベルと疼痛スコアが改善され、CRP、血清インスリン、B細胞機能に有益な変化が見られました。

炎症性腸疾患と過敏性腸症候群

過敏性腸症候群(IBS)の患者は、対照と比較して、ラクトバチルス種が有意に減少し、プロテオバクテリアおよび他のファーミキューテスが増加し、放線菌(ビフィズス菌)とバクテロイデスが減少することが研究により示されています。 潰瘍性大腸炎(UC)やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)では、短鎖脂肪酸(SCFA)の全体的な障害があるようです。短鎖脂肪酸(SCFA)は抗炎症作用や機能促進の改善など、結腸の恒常性に重要な役割を果たしています。 潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病の違いは、潰瘍性大腸炎(UC)では酪酸菌を産生する細菌が減少しますが、クローン病ではこうした細菌が増加する可能性があります。 プロバイオティクスは、クローン病には何の影響もありませんが、潰瘍性大腸炎(UC)を寛解に導くことが示されています。 セリアック病(CD)では、ラクトバシラス属とビフィズス菌の両方の種が減少し、グルテンを含まない食事で症状を改善できたとしても、腸内毒素症が残る可能性があります。 プレバイオティクスサプリメントのみを用いた研究の結果では矛盾が示されていて、IBS患者に高用量のFOS(20 g / 日)を投与した場合、症状が悪化することが報告されています。 GOS を3.5 g / 日を投与した場合、症状の改善が認められましたが、7 g / 日では悪化しました。 おそらく、こうした結果が出たのは、IBSとIBDには様々な種類があり、互いに全く異なっているためでしょう。全体として、IBSとIBDでは微生物が減少するため、プレバイオティクスを注意深く投与しながら、様々なプロバイオティクス菌株を補給する必要があります。

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感染性胃腸炎

invitroおよびマウスを用いた研究では、ヒトマイクロバイオームに見られる特定のラクトバチルス菌株に殺菌作用が多くあることが示されています。ラクトバチルス・ラムノーススGG、ラクトバチルス・ジョンソニー、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・アシドフィルス LB、ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株にはすべて、ヘリコバクター・ピロリ菌、赤痢菌、サルモネラ菌、カンピロバクター菌に対する殺菌効果があります。 「ラクトバチルス・ラムノースス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ロイテリ、熱処理されたラクトバチルス・アシドフィルス LBは、乳幼児のロタウイルスと細菌性腸炎の治療に役立ちました。」 サッカロマイセス・ブラウディにより、急性の水様性下痢の治療の頻度が減り、 様々なプロバイオティクスに抗生物質の摂取による下痢を改善する効果があるといわれています。メタアナリシスでは、サッカロマイセス・ブラウディ、ラクトバチルス・ラムノーサス GG、プロバイオティクスを組み合わせることで、抗生物質の摂取による下痢の発症が有意に減少することが示されている一方、一部の研究では、サッカロマイセス・ブラウディのみがクロストリジウム感染症に効果があることが示されました。 47

小腸細菌異常増殖(SIBO)では、pHと排便に変化が生じ、悪循環する可能性があります。SIBOを伴うIBSと伴わないIBSに関する研究では、サッカロミセス・ブラウディ、ビフィズス菌、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・プランタルムの補給により、SIBOを伴うIBS患者の総IBSスコアが71.3%減少したのに対し、SIBOを伴わない患者では10.6%減少しました。 SIBOの予防に対するプロバイオティクの効果については実証されていません。 メタアナリシスでは、プロバイオティクスにより、特に抗生物質の摂取によるSIBOにおけるクリアランスが大幅に増加したことが報告されていますが、SIBOではいつの間にか小腸にコロニーが形成されることから、こうした結果については多少議論の余地があります。 やはり、SIBOでは、抗生物質とプロバイオティクスを組み合わせた治療が個々の治療と同様に必要でしょう。

プレバイオティクス

プレバイオティクスは、胃酸に耐性のある便利な食品またはサプリメントで、体内で酵素により分解されることも、胃腸管から吸収されることもありません。 特定の微生物により発酵され、腸内環境を変化させてpHを低下させ、微生物の組成と個体数を変化させます。 プレバイオティクスには様々ありますが、こうした効果は主にビフィズス菌にあります。  GOSはビフィズス菌とラクトバシラス菌を非常に刺激します。 FOSは乳酸菌を選択的に刺激し、フルクタンの長さは、どの細菌が乳酸菌を発酵するかを見極めるために重要です。プレバイオティクスを含む食品には、タマネギ、ネギ、アスパラガス、チコリ、エルサレムアーティチョーク、ニンニク、オート麦、バナナ、オオバコ、ワイルドヤム、味噌、蜂蜜、レンズ豆、ひよこ豆、リマ豆、インゲンマメ、竹などがあります。

ポストバイオティクス

この生存不能な細菌産物または微生物からの代謝副産物には、プロバイオティクスと同様の働きがあり、バクテリオシン、エタノール、ジアセチル、アセトアルデヒド、過酸化水素、熱殺菌された細菌からの重要な構造が含まれます。 57

胃の過酷な環境において、プロバイオティクスの効果を保つために、様々なカプセル化の方法が用いられています。ある 研究で使用されたマイクロカプセル化技術では、菌株の胃酸耐性が大幅に改善されてプロバイオティクス活性が高まり、5分の1の用量で効果が得られました。 別の研究では、ラクトバチルス・ロイテリは胃液によく耐え、生存率が大幅に低下することはない一方、ラクトバチルス・サケイは死滅することが示されています。 接着能力の改善は、ラクトバチルス・プランタルム(MF129828および299v8)、ラクトバチルス・ロイテリの3つの菌株、 ラクトバチルス・ラムノーサスGG に他の菌株に比べてありました。もう1つの重要な考慮事項は、プロバイオティクスの生産と保管における温度です。4°Cで保存した場合、室温で保存するよりもはるかに生存率が高まり、 特に熱に敏感なビフィズス菌は生存率が上昇するといわれています。 63

まとめ

プロバイオティクスには幅広い用途があり、体内には複数の機能があります。プロバイオティクスは、種特異的および株特異的に作用します。プロバイオティクス菌株は、インキュベートすると互いに阻害しますが、全体として、プロバイオティクスとシンバイオティクスを組み合わせることで、病原体により大きな打撃を与え、IBS、IBD、腸機能、アトピー性疾患、免疫機能、気道感染症、微生物叢の調節に効果があるといわれています。 耐熱性と耐酸性がある種はごくわずかで、プロバイオティクスが小腸と結腸に到達するための生存率と腸溶性フィルムコーティングを確保するために、冷蔵保存する必要があります。生涯にわたり、微生物相が様々変化し、食事、ストレス、抗生物質の服用、病気などによって共生バランスが影響を受けます。腸内細菌叢は、3つの主要なエンテロタイプ(腸内細菌叢の型)分類できます。 一人ひとりにエンテロタイプがあり、成人期に安定しますが、最も重要なのは、プロバイオティクスの補給により、修正/回復できることです。エンテロタイプの概念は、今後、研究やプロバイオティクスの特定の使用において、興味深いトピックになるでしょう。通常、「微生物叢が豊富かつ多様であるほど、外部からの脅威に耐えることができます。」