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プリオン病-リスクについての背景および知識

NPC COLLABORATOR
ND

22 December 2015
日本語

 

プリオン病というのは、脳に問題を引き起こす伝染性を有する異常な病原体のことです。伝染性のある海綿状脳症は、プロアテーゼ耐性タンパク質(PrP: protease-resistant protein)に関連する疾患の一群です。プロアテーゼ耐性タンパク質の正確な機能は不明ですが、細胞への銅の輸送、神経防護やニューロンの情報伝達に携わると考えられています[1]。プロアテーゼ耐性タンパク質の遺伝子情報を保持するPRNP遺伝子は染色体20p13に位置し、プリオン病の10-15%はこの遺伝子の変異と関連していると見積もられています[1]。プリオン病の残りの80-90%は、散発性あるいは後天性プリオン病が占めると考えられています[1]Prion Diseases - Background and Information on Risks散発型には、散発性クロイツフェルト・ヤコブ病(sCJD: sporadic Creutzfeldt-Jakob disease)や散発性致死性不眠症(sFI: sporadic fatal insomnia)といったものがある一方で、後天型には変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(感染した牛肉の摂取が原因)やクールー(感染した人間の遺体の摂取が原因)といった、外部の病原体への曝露により引き起こされるものがあります[1]。感染経路にかかわらず、全てのプリオン病は伝染する可能性があります。この記事では、異なる型の病気やその症状といった前述の疾病についての詳細な情報を提供しましょう。この病気は医学では比較的良く分かっていない分野であるという注意と併せて、病気管理についての情報を提供しましょう。

構造異常

伝染性プリオンタンパク質は、健康なプリオンタンパク質とは、その折りたたみ構造が異なっており、この構造異常は溶解性を低下させプロテーゼや正常なタンパク質分解に対する耐性を増加させます[2]。異常なプリオンタンパク質がどのようにして広がり病気を引き起こすのかについては二つの理論があります。

一つ目の理論は、「プリオンタンパク質が複数の形態で存在し、異常な折りたたみ構造のプリオンタンパク質は通常のプリオンタンパク質よりも不安定で、プリオンタンパク質の一般的な構造へと迅速に折り返す」と提唱する種まき理論です[3]Abnormal Structure種まき理論では、異常な折りたたみ構造のタンパク質は、他の異常な折りたたみ構造のタンパク質と結合して、より安定な二量体(これは更に多くの異常な折りたたみ構造のタンパク質と結合することが可能)を形成する際にのみ病気をもたらします[3]。二番目の理論は、「正常な折りたたみ構造のプリオンと結合して異常な折りたたみ構造へと変換をすることのできる、異常な折りたたみ構造のタンパク質の導入」を提唱する折り返し構想モデルです[3]

どうやって生成されたかに関わらず、折りたたみ構造が異常なプリオンは結合してより安定な構造を形成し、体はこれらの異常な折りたたみ構造のタンパク質をその生成と同じ速さで分解することが出来ないということは、一般に受け入れられています[4]。結合プリオンタンパク質は、酸化性ストレスのレベルを上昇させ、正常なタンパク質の機能の喪失と組み合わさった際に、病原性プリオンを取り込もうと試み、その結果神経変性を誘発させます[4]

種類と症状

プリオン病は、脳の異なる部位における数々の異なる疾病となって現れます。クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD: Creutzfeldt-Jakob Disease)は、人では最も罹患率の高い海綿状疾病です[5]。クロイツフェルト・ヤコブ病は、痴呆や、ぎくしゃくした筋肉収縮や体の動きの制御喪失として現れます[5]。症状が現れ始めてから6ヶ月から2年の間に死に至りますが、潜伏期間はかなり長いものと考えられています。クロイツフェルト・ヤコブ病は、変異型および古典型の二つの可能性がありますが、これら二つの現れ方は異なります。変異型クロイツフェルト・ヤコブ病は、より若い人たちが冒され、精神科的症状あるいは行動上の症状が主で、罹患期間は比較的長期ですが、その一方で古典型クロイツフェルト・ヤコブ病は、より高齢の人たちに現れ、大脳皮質が冒され、痴呆および初期神経兆候が主な症状です[5]。医原性のクロイツフェルト・ヤコブ病(iCJD: iatrogenic Creutzfeldt-Jakob Disease)は医学的治療が原因のプリオン病です。汚染されたヒトの遺体の下垂体に由来する成長ホルモンの投与を受けた200人が医原性クロイツフェルト・ヤコブ病を発症したことから最初に発見されましたが、医原性クロイツフェルト・ヤコブ病は硬膜移植や角膜移植からも伝染したと考えられています[1]。更に、輸血により伝染したと考えられる医原性クロイツフェルト・ヤコブ病の症例の報告もされています。

種類と症状他のプリオン病には、致死性家族性不眠症、クールーそしてゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病といったものがあります。致死性家族性不眠症は視床を冒し、眠りに落ちるのが困難になり、体の動きのコントロールを失い、最終的には眠ることが不可能になります[6,7]。クールーはパプアニューギニアの高地に住むフォレ族に関連するもので、フォレ族では食人が埋葬の儀式の一部となっています。最初にクールーは、脳や神経細胞の部位を食べた可能性がより大きい女性たちと子供たちに現れました[6,8]。クールー、これは“震える”という意味ですが、は最初に小脳を冒し協調運動の失調、歩行困難そして身震いに似た震えの兆候が現れます[8]。ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病は、協調運動の喪失やぎこちなさを伴いますが、一般に他のプリオン病よりも痙攣は多くありません[9]。ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病の一般的な症状は、クロイツフェルト・ヤコブ病よりも早く始まり、そして進行はずっとゆっくりとしています。

動物も、スクレイピー病や、一般に狂牛病と言われている牛海綿状脳症(BSE: Bovine Spongiform Encephalopathy)といったプリオン病の影響を受ける可能性があります[6]。これは、以下で議論する食物摂取によっては、人のリスク上昇の原因となります。伝染性BSEは一般に動物の脳幹に存在します。スクレイピー病は羊や山羊を冒し、臨床症状は大人の動物でしか見られません。スクレイピー病は、汚染食物への曝露からというよりはむしろ、遺伝的感受性として起こると考えられています。畜牛のBSEは、天然のBSEに由来するBSEに汚染された原料を含む骨肉飼料あるいは汚染された羊の飼料の投与から始まったと考えられており、英国で1992年にピークを迎えました[6]。更に別の動物の海綿状脳症には、ラバ、鹿やヘラジカでの慢性消耗病や、BSEで汚染された食糧に関連した感染である猫海綿状脳症や伝染性ミンク脳症といったものがあります[6]危険因子

全体として、もしこのようなもの以外で説明できないような記憶障害、行動の変化、または動きのコントロールの変化を含む症状が現れたら、プリオン病のリスクを調べる価値があるでしょう。これらの変化の多くは痴呆や認知の衰えと似ていることに注意して下さい。これらは、長い期間をかけて発症する可能性がありますが、これらの病態はまだ今のところ完全には理解されていません。

危険因子

伝染性海綿状脳症の危険因子には、遺伝、汚染食品の摂取や感染製品の投与といったものがあります。プリオンタンパク質には、他よりもプリオン病のリスクが高くなると考えられている幾つかの遺伝子変化があります。これらのうちの一つは、プリオンタンパク質のコドン129のメチオニン・メチオニン遺伝子型で、これは変異型クロイツフェルト・ヤコブ病のより高いリスクと関連しています。医原性のクロイツフェルト・ヤコブ病が発見されて以来、米国赤十字は、1980年1月から1996年12月の期間(BSE発生のピーク前後)に3ヶ月以上英国に居住した人たちからの寄付を制限しています。米国赤十字は更に、硬膜移植やヒト下垂体由来の成長ホルモンの投与を受けたことのある人たちを制限しています。

予防と治療 予防と治療

感染した動物に関しては、プリオン病に感染した動物のための厳密な‘駆除’政策があり、それには感染した全ての動物の安楽死や、感染の可能性があったりリスクの高かったりする動物の追跡、検疫および輸送のコントロールが含まれます。無感染ゾーンに対する感染ゾーン分けは、動物のプリオン病が広がるのを限定された範囲内に収めるために行われます。人に関しては、現在の殺菌処理ではプリオンタンパク質を破壊することはできないため、医療処置中の拡散を防ぐための最善策は、汚染の可能性のある全ての手術器具を破棄することです。

先に述べた病気に特定の従来療法がないのは残念なことです。大部分で、症状は可能な限り良く管理されています。自然療法的な視点からは、全体的な健康を確実に維持するために、食事および生活習慣を最適化することが可能です。自然療法医は、十分なビタミン、ミネラル、そして栄養素の摂取を確実にすることで、最適な栄養面での推奨事項を提供することができます。これにより栄養不足を防ぐでしょう。更に、痴呆の際と同様に、最適な脳機能を改善するために治療を個別化することが可能です。症状管理のために鍼を利用することは、鍼が神経および筋肉の問題に極めて効果的であることから、有望なオプションです。バコパ・ディッフスムやイチョウのようなハーブは、何らかの認知症状が改善するかを見るために、試験的に利用することができるでしょう。最後に、あなたの食べる肉の原産地を知ることは、いつでも重要です。出所の確かな餌で育てられたオーガニックミートを摂取することが推奨されます。プリオン病は、難しく謎めいた一連の病態です。もしご質問があればあなたの自然療法医に尋ねて下さい。