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骨粗しょう症

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骨粗しょう症-ナチュラルな取り組み
ティファニー・エバーハード名誉理学士、自然療法医師

2437 Main St.
London, ON N6P 1A3

www.tiffanyeberhardnd.com
tiffanyeberhardnd@gmail.com



骨粗しょう症-ナチュラルな取り組み

はじめに

骨粗しょう症は、骨組織の劣化および骨量減少を特徴とする骨格システムの病気です[1]。骨粗しょう症の原因は、栄養、運動、遺伝、内分泌そして環境の要因に続いて発生する骨格恒常性の長期的な崩壊状態です。骨量は骨の強度と相関しているため、骨量の減少は骨を脆くし、骨折リスクを上昇させます。高齢者は、骨量、筋力、筋肉運動の協調、固有受容が低下するため、より骨折し易い傾向にあります。それに加えて、投薬治療や老化関連の認知、視覚や聴覚の障害が、高齢者の骨折のリスクを上昇させます。骨粗しょう症は一般に無症状で、最小限の力で骨が折れる時、症状が初めて現れます。骨粗しょう症は一般に骨格全体に影響を及ぼし、骨折は全ての部位で起こる可能性があります。しかし、骨粗しょう症性骨折が最も起こりやすい部位は、橈骨遠位端(手首)、大腿近位部(腰)、そして脊椎(脊椎圧迫骨折による)です。腰部骨折には極めて高い罹患率および死亡率がある一方で、脊椎骨折では脊椎の彎曲が失われ身長が縮み、腰痛の原因となります。女性は骨粗しょう症のリスクが男性の4倍です。閉経期の女性たちのリスクが最も高く、これはこの時期にエストロゲンの生産量が減少することが原因です[2]。骨粗しょう症は、骨折を恐れ苦しむ人たちの生活の質を低下させます[3]。骨粗しょう症は、骨格の正常な恒常性を阻む障害が取り除かれれば、予防可能かつ治療が可能です[2]

骨量は生誕時から増加し、皮質骨は年齢30-35歳で、骨梁はそれよりも早く最高量に達します。このピーク骨量は遺伝子によりコントロールされていますが、その最大の可能性に到達するためには、骨密度に必要な栄養を適正量摂取することに加えて、骨密度を激減させるような要素を避けることが必要です。骨は、再形成と呼ばれるターンオーバーの状態に絶え間なくありますが、これは破骨細胞による吸収と骨芽細胞による骨形成とで構成されています。生涯で喪失する骨量は男性が20-30%、女性では最大40-50%に上ります。骨のターンオーバーは、身体的活動、栄養摂取、酸・アルカリのバランス、内分泌、そして局所ボーン・ファクターのような多くの要素に影響されます。骨の再形成の主要な制御因子は、血清カルシウムの最適値を維持する役割のある副甲状腺ホルモン(PTH: parathyroid hormone)、ビタミンD、そしてカルシトニンです。骨の再形成に影響を与える他のホルモン類には、エストロゲン、プロゲステロン、アンドロゲン、甲状腺ホルモン、そしてグルココルチコイドといったものがあります。エストロゲンは、カルシトニンの形成を増加させるため、破骨細胞を抑制します。更にエストロゲンは、腸でのカルシウム吸収を刺激してビタミンD合成を容易にします。甲状腺ホルモンは、甲状腺機能亢進症が骨吸収の増加と関連することから、破骨細胞を活性化します。副腎および脂肪組織は、閉経期以降もエストロゲンを供給し続けると考えられていますが、多くの女性たちは更年期に副腎疲労の状態で至ることから、骨を守るために十分なエストロゲンが供給されません[2]

骨粗しょう症は、気付かれにくいことから予防および早期介入が鍵となります。二重エネルギーX線吸収法(DEXA: Dual Energy X-ray Absorptiometry)は、腰椎、大腿近位部、そして前腕の骨密度を数量化します。これは迅速かつ非侵襲性の検査で、現時点での骨格密度を測定し、骨折のリスクを定め、更に治療効果をモニターするために用いられます[2]


自然療法的アプローチ 自然療法的アプローチ

野菜、果物、そして十分量のタンパク質を含むバランスの取れた食事は、骨粗しょう症等の病気の予防では最も重要です。十分なカルシウムに加えて、骨の形成に必要とされる他の重要なミネラル類やビタミン類を、食事で摂取することが大切です。煙草の喫煙およびアルコール摂取は、骨粗しょう症と関連があります。煙草の喫煙は、体からアスコルビン酸を奪い去り、体を様々な毒物へと曝しますが、これは直接骨に損傷を与え、カルシウム吸収を妨げます。アルコールは、カルシウム、マグネシウム、アスコルビン酸、銅、そして亜鉛の吸収を妨げ、その排出を高めます。複数の研究では、カフェインを含む飲料を一日2-3杯飲むと、カルシウム摂取が一日800mg未満の女性では、脊椎および体全体の骨量の減少が加速されることが明らかになりました[2]。もう一つの研究では、一日300mg以上のカフェイン摂取は、閉経期以降の高齢者女性たちの、ほぼ全ての骨格部位での骨量減少の速度の増加と関連し、最も顕著な骨量減少が見られる部位は脊椎であることが分かりました[4]。清涼飲料水に含まれる過剰量のリン酸塩および高タンパク食の組み合わせは、カルシウム摂取が不十分な場合に、骨量減少に寄与する可能性があります[2]

運動 運動

運動は骨粗しょう症の予防と治療とに不可欠です。身体的活動は骨維持を調節し骨形成を促します[3]。最大骨量は、十分量の骨を作る元になる栄養素を摂取し、機械的に骨に負荷をかけることで達成されます。運動は、骨量および筋量を増大し、筋肉運動の協調、柔軟性、そして固有受容を高めます。効果を得るために、運動は生涯を通して継続すべきです。ある研究では、週2回以上積極的な運動をしている、あるいは運動時間の合計が週4時間以上である女性たちは、週2回未満あるいは4時間未満の身体的活動の女性たちよりも、極めて高い骨密度であることが分かりました[2]。運動とカルシウム補給とを組み合わせると、骨ミネラル量が減少する速度を停止させることが示されました。8ヶ月の期間に渡り、週3回、最大の力の90%以上の強度で、30分間ウォーキングをした女性たちでは、腰椎の骨ミネラル密度(BMD: bone mineral density)が1.1%増加しました[8]。より激しい運動および普段とは異なる負荷のかけ方が、骨ミネラル密度の増加をもたらします。ある研究では、55歳の閉経期の女性たちを対象として、2年間、週4日、衝撃の大きい筋力トレーニングおよび持久トレーニングを行うことについて調査しました。骨密度は、運動群でベースラインから1.3%上昇した一方で、対照群では1.2%減少しました。普段とは異なる負荷のかけ方の軽い断続的な運動は、適応性のある骨反応を促します。更に、適応性のある骨反応には、動的で機械的な刺激と限界以上の激しさとを兼ね備えた運動が必要です。ですから、予想の範囲を超えない強度である従来の屈伸運動によっては、骨の増殖はほとんどもたらされません[3]

カルシウム

カルシウムは、骨粗しょう症の全てのアプローチで欠くことができません。幼児期および青年期におけるカルシウム摂取は、最大骨量を達成するのを助けます。人口の大部分が、カルシウムの推奨摂取量を満たしておらず、ですから、しばしば補給が必要になります[2]。十分量のカルシウム摂取は、骨量減少がより著しくなる年齢40歳以降の女性たちで、より重要です。骨量減少は、閉経期後期には年1%の割合で進みます。この時、エストロゲンの衰えと、それに引き続いて腸や腎臓でのカルシウム吸収に対してエストロゲンが与える影響の促進とが原因で、カルシウム補給が必要となります[3]。カルシウム補給は、閉経前および閉経周辺期の女性たちでは腰椎の著しい骨量減少を軽減し、更年期開始後5年間の皮質骨の減少を軽減します。それに加えて、カルシウム補給は、更年期障害開始3年以降の女性たちの全身骨量の減少速度を持続的に遅くしますが、これは更年期開始後数年間の骨梁での急速な減少を遅くすることはないようです[2]

骨粗しょう症の予防治療として50歳以上の人たちの、カルシウム、あるいはビタミンDと組み合わせたカルシウムのサプリメントの利用は、エビデンスにより支持されています。カルシウムおよびビタミンDとカルシウムの組み合わせは、全ての種類の骨折のリスクの12%の低下と、骨量減少については腰椎で0.54%の軽減、脊椎で1.19%の軽減と関連があります。あるメタ分析の著者らは、同様の人たちを対象として一日必要最低量として1200mgのカルシウムと、800IUのビタミンDを推奨しています[7]。ビタミンDと同時に投与されないカルシウムのサプリメントは、心筋梗塞のリスク上昇と関連があります。カルシウムのサプリメントは、心筋梗塞の発生率のおおよそ30%の上昇と、卒中のリスクおよび死亡率のわずかな有意でない上昇とに関連することが分かりました。複数の研究によると、食事から多くカルシウムを摂取することは、心血管リスクを上昇させないことが示されました。ですから、高いカルシウム摂取による心血管リスクは、カルシウムのサプリメントに限定されているようです。カルシウムのサプリメントは、急速に血清カルシウム値を上昇させますが、血清カルシウム値は心筋梗塞の発生率上昇と正の相関があります。血管石灰化は、心血管疾患では定評のあるリスク因子で、カルシウムのサプリメントはこの石灰化を増加させるのかも知れません[8]

ビタミンD

ビタミンは腸および腎臓でのカルシウム吸収を調節し、副甲状腺ホルモンと連動してカルシウム吸収を増加させます。ビタミンD欠乏症は非常に一般的で、腰部骨折の高齢患者のおよそ25%に見られます。ビタミンD欠乏症は、吸収力の低下、肝臓および腎臓での1,25(OH)-2Dへの転換障害や日光への曝露が十分でないといったことが原因です[2]。あるレビューでは、カルシウムを伴わないビタミンD補給が骨粗しょう症の予防や治療に良いということは確認されませんでした。しかし、血清ビタミンD値が低い人たちにとっては、ビタミンD補給は利益があるかも知れません[9]。ビタミンD補給には、心筋梗塞でわずかな予防効果があることが明らかにされ、ですからカルシウム補給の際にビタミンDを摂取することは重要です[10]

ビタミンK2

ビタミンKは骨の健康を維持するのに重要です。骨粗しょう症の女性たちでビタミンK欠乏症が認められました。閉経期の女性のビタミンK補給は、尿中カルシウムを減少し、オステオカルシンのヒドロキシアパタイトへの結合を増加します。ビタミンKの大部分は、腸内細菌叢で生産されるため、頻繁な、あるいは長期間の抗生物質治療は、ビタミンKステータスを損なう可能性があります[2]。ビタミンK1は食事から得られる種類の主要なビタミンKである一方で、ビタミンK2は骨を含む組織内に含まれる主なビタミンKの形です。ビタミンK2は腸内のバクテリアによって合成されますが、チーズや発酵大豆のような特定の食物にも含まれます[11]

マグネシウム、ホウ素、そして微量元素 マグネシウム、ホウ素、そして微量元素

マグネシウム欠乏症は、腎臓および骨格の副甲状腺ホルモンへの感受性を低下させ、更にビタミンDの活性を低下させることによって、ミネラルの恒常性を損ないます。マグネシウム補給は著しく骨密度を増加させ、骨折の発生率を低下させるようです。カルシウム対マグネシウムの比は、2:1を推奨する人もあれば、1:1を推奨する人もあり、相変わらず議論の多いところです。ホウ素は他の栄養素と相互に作用して、骨の代謝において調整的な役割を果たしています。ホウ素の補給は、尿によるカルシウムおよびマグネシウムの排出を減少させる一方で、17-βエストラジオールおよびテストステロンの血中濃度を上昇させます。銅、亜鉛、そしてマンガンのような骨の代謝に欠かせない幾つかの微量元素が存在しますが、それらは、類骨の成長および鉱化に必要な酵素反応の共同因子としての役割を果たします[2]


結論

骨粗しょう症は、予防可能かつ治療可能な病態です。貧弱な食事、不十分なカルシウム摂取、運動不足などのような骨量減少の原因となる様々な要素が存在します。骨粗しょう症の従来アプローチの幾つかには関連するリスクがあることから、多くの人々はナチュラルな代替を求めています。カルシウムは、骨粗しょう症の予防および治療に良いという定評があります。カルシウムは、可能ならば食事から摂取し、必要な際にサプリメントで補給するべきでしょう。カルシウムをビタミンD、ビタミンK2、マグネシウム、そしてこの記事で言及された他の栄養素と共に補給することは有望であると示されていますが、現時点では更に多くの研究が必要とされています。