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瞑想と祈り いかに長寿に役立つか

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5-3405 South Millway

Mississauga, ON L5L 3R1

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絶えず発展し続ける現代社会では、最もシンプルな物事が忘れられがちです。多くの文化は、生きる術を伝える特定の食事や宗教観に基づいています。こうした文化では、宗教観を実践することで、コミュニティー意識が生まれ、人々が繋がり、さらに文化が強調されます。しかし、人々が他の街や国に移住するにつれて、宗教を含め、こうした文化教育がますます困難になります。

 

不安や心配、ストレスはあらゆる文化や国々に存在していて、免れられる人は誰もいません。しかし、北米では、ストレスがより明確に認知され、忙しい生活の中でコミュニティーや文化に費やす時間が減っています。それでも、より宗教教育を受けた人は、ストレスに対処するために祈ります。祈ることで身体のストレス反応を和らげられるのでしょうか?もしそうなら、定期的に祈っている人は、慢性疾患や早期老化、その他のストレスに関連する病気のリスクが低いのでしょうか?

 

 

meditationコルチゾールは、体内の副腎から放出されるストレスホルモンで、通常、朝一番に上昇し、その日の活動に十分なエネルギーを生み出します。その後、コルチゾールは減少し続け、夕方にはそのレベルが低くなります。この時点で、メラトニンが上昇し始め、眠りにつくだけの十分な疲れを感じます。メラトニンとコルチゾールは互いに逆の働きをし、一方のレベルが高い場合、もう一方のレベルは低くなります。ストレスに上手に対処できなかったり、夜遅くまで仕事をしていたりすると、コルチゾールのレベルが、必要以上に高いままになります。つまり、メラトニンを徐々に増やす時間が減少し、睡眠の質に大きな影響を与えます。

 

コルチゾールは、人体の生理機能のほぼあらゆる面に影響を与えます。コルチゾールにより、血糖値のバランスが崩れてインスリン抵抗性や2型糖尿病のリスクが高まり、頑固な腹部脂肪が増えて体重が増加します。エネルギーが枯渇し、深夜に不健康な食べ物を欲するようになり、免疫系の機能が弱まります。長期間にわたってコルチゾールのレベルが高い場合、高血圧や心血管疾患、うつ病などが生じます。この3つの慢性疾患は、カナダにおいて医療費の大部分を占めており、ストレスが原因であることはほぼありません。

 

コルチゾールのレベルが高い場合、脳機能に影響を及ぼします。神経系が絶えず「攻撃・逃避反応」し続け、知的処理速度が高まりますが、特定の物事に集中できなくなります。201811月に発表された研究では、頭部MRIを用いて中年者の脳を評価したところ、コルチゾールのレベルが高い場合、微細構造の変化が示されました。また、記憶力や視力の低下も確認され、これは特に女性に顕著にみられました(1)

 

祈りと瞑想の短い歴史

スピリチュアル実践は、世界中に様々存在し、客観的に測定するのが非常に困難です。祈りは、時間の経過とともに特定の地域で発展し、他の地域では全く発展してきませんでした。瞑想は、ある文化においては一種の祈りで、その他の文化では主に非宗教的な活動として取り入れられてきました。宗教的な慣習が異なるため、「祈り」と「瞑想」とは何かを定義することが大切です。この記事においては、祈りと瞑想は沈黙と静寂をもたらすものをいいます。

 

 

宗教と脳の研究

祈りの人体と脳への正確な効果は、長年にわたって科学や研究の分野において関心を持たれてきました。神経神学とは、精神的宗教的信条の科学研究とその神経系への影響をいいます。基本的に宗教と脳の関係を示し、心理学、人類学、神経学、神学、認知神経科学を組み合わせたものです。神経神学では、テクニックを適用しながら、様々な宗教的慣習を評価しています。

Andrew Newberg医師は、20年以上にわたって患者に瞑想や祈りを実践させながら、脳スキャンを行ってきた結果、同じ物事に繰り返し集中することで、脳の活動が変化し、注意力や行動、言語表現力に大きく関与する前頭葉の活動が活発になることを発見しました。瞑想や祈りを実践することで、不安、抑うつ、ストレスが軽減することが報告されています(2)

 

また、ユタ州のモルモン教に関する研究では、機能的MRIスキャンによって、性的活動やギャンブル、薬物摂取と同じ報酬処理回路が示されています(2)。この研究は、祈りの間に幸福ホルモンと呼ばれるセロトニンやエンドルフィンのレベルの上昇が示された別の研究に基づき行われ、参加者は、これを平和、暖かさ、安全として感じました。

 

 

祈りとメンタルヘルスの影響

気分やメンタルヘルスの研究は、脳の研究とは異なり、はるかに主観的です。多くの研究において、不安やうつ病のスコアを改善するうえで祈りが重要な要素であることが示されています。確かに、祈りはメンタルヘルスに非常に有益で、研究者たちは精神医学によるケアに宗教的実践を含めることを提案しています。宗教の信仰と実践により、人生に意義を見出し、より大きな希望を抱き、自尊心や楽観思考が高まります。精神医学によるケアにおいて注目すべき点は、深い信仰心が心の健康をもたらすことです。

 

成人のキリスト教徒330人を対象とした研究では、祈りが心や体の健康に与える影響は、信仰心の強さに関連することが示されています。信仰心が強いほど、不安やうつ病が和らぐ傾向がみられました(3)

 

70件のコホート研究のうちの39件において、宗教的または精神的な繋がりが強いほどうつ病のレベルが低いことが示されました。また、そのうちの7件で、うつ病の症状の悪化が示されたことに注目することが大切です。悪化した人たちは、宗教と否定的な関係を持っていて、神に対する罪悪感や失望感を抱いていることがわかっています(4)。現時点において、メンタルヘルス分野における宗教に関する研究の大半が、キリスト教とその実践に焦点が当てられてきました。他の宗教を考慮した際に、こうした結果がどのように変化するかを知ることは興味深いでしょう。

 

prayer祈りがストレス反応にもたらす影響

 

前述したように、ストレスとコルチゾールのレベルの高さは、北米社会において非常にリアルな問題です。祈りと瞑想によって、血流中のコルチゾールの量を効果的に減少できます。

 

ある医学生を対象とした研究では、4日間のマインドフルネス瞑想プログラムの前後に血中コルチゾール値が検査されました。その結果、ストレスの主観的スコアと血中コルチゾール値の客観的スコアがともに減少し、マインドフルネス瞑想により「精神障害、消化性潰瘍、片頭痛などのストレスにより生じる疾患のリスクが減少する可能性がある」ことが示されました(5)

 

コルチゾールが低下すると、神経系が落ち着き、闘争・逃走反応が低下します。矢継ぎ早の思考処理速度が減速すると、不安などの症状は数分以内に収まります。身体においては、心拍数が正常に戻って血圧が低下し、呼吸がより深くゆっくりします。

 

コルチゾールによって脳に炎症が生じ、こうした有毒な環境では不安症が非常に悪化しやすいです。体内においては、関節炎や湿疹、消化不良として炎症が現れます。炎症は、シグナル伝達分子IL-6TNF-aのレベルが上昇することで判別できます。試験やプレゼンテーション、慢性疾患などのストレスが生じる状況では、体内の炎症細胞のレベルが上昇します。瞑想によって脳の炎症が緩和され、不安が和らぐ可能性があるのなら、身体の他の部分の炎症の症状が改善される可能性もあります。最新の研究では、自己申告による瞑想後のストレスレベルの改善が報告されています。しかし、瞑想によりこうした体内の炎症マーカーが低下することを示唆する客観的なデータはありません。

 

祈りの効果

祈りと瞑想は何世紀にもわたり実践されてきていて、文化やコミュニティーのイベントの基盤となってきました。マインドフルネス瞑想は、自己申告によるストレスの軽減や、職場における生産性の向上効果が報告されていることから、職場で人気が高まっています。科学的な面では、祈りと宗教的実践により、脳の特定部分、特に前頭前野の活動が高まります。祈りにはエンドルフィンを増加させ、幸福感をもたらす効果があります。宗教的な視点からみれば、祈りは不安やうつ病のスコアを下げることが示されていますが、信仰心が強いほどより効果がみられています。

 

神経神学は魅力的な研究トピックで、明確な答えが見い出されることは決してないでしょう。祈りの効果は沈黙と静けさに起因するのでしょうか?それとも、祈りに効果をもたらすのは、神への信仰心でしょうか?世界中の宗教慣習は非常に異なるため、依然として数多くの疑問が残されています。

 

 

 

 

 

References:

 

1. Echouffo-Tcheugui, J. et al. (2018) Circulating Cortisol and cognitive and structural brain measures. The Framingham Heart Study. American Academy of Neurology. Retrieved from: https://n.neurology.org/content/91/21/e1961

 

2. Blumberg, Lynne. (2014) What happens to the brain during spiritual experiences? The Atlantic. Health. Retrieved from: https://www.theatlantic.com/health/archive/2014/06/what-happens-to-brains-during-spiritual-experiences/361882/

 

3. Jeppsen, B. (2015) Closeness and control: Exploring the relationship between prayer and mental health. https://doi.org/10.1002/cvj.12012

 

4. Dein, Simon. (2018). Against the stream: religion and mental health – the case for the inclusion of religion and spirituality into psychiatric care. BJPsych Bull. 2018 Jun; 42(3): 127–129.doi: 10.1192/bjb.2017.13

 

5. Turakitwanakan, W et al. (2013). Effects of mindfulness meditation on serum cortisol in medical students. J Med Assoc Thai. 2013 Jan;96 Suppl 1:S90-5.