薬物乱用の治療オプション

年齢65歳以上の5人に1人は、薬物やアルコール乱用の問題を何らかの時点で抱えたことがあります[1]。これは最も一般的な健康問題の一つであり、社会の財政を最も大きく圧迫する病態の一つです。アルコールとタバコはリストのトップにある問題です。物理的外傷や転倒といった救急外来での診療は、多数が物質乱用に関連しているのが分かっています。国立薬物乱用研究所が行った調査では、6-7%前後のアメリカ人がアルコール依存症であると推定されました。これは1700万人を超える人数です^[2]。

何故、人々は様々な物質を利用するのでしょうか？人々は、タバコはパフォーマンスだけでなく気分を改善し、体重管理に役立つと言います。タバコで最も依存性の高い物質はニコチンなのは良く知られています。他の化学物質も多数存在しますが、それらが多くの異なる体組織で健康問題を引き起こします。例えば、タバコ消費は心疾患のリスクを高め、肺にダメージを与えます。更に、不安、睡眠の問題、気分障害といった離脱症状をもたらします。喫煙は主死因の一つで、医療費の負担は莫大です。

人々はアルコールを飲むことで気分が良くなると言いますが、アルコールは脳の抑制剤です。アルコールは抑止力を弱め、筋肉のコントロールを低下させます。その依存症は、不安および心血管の問題である可能性がありますが、発作や幻覚のように更に深刻な問題がもたらされるかも知れません。アルコールは精神錯乱の場合に命に関わることさえあります。アルコールは、肝臓およびすい臓にダメージを与え、様々なガンのリスクを上昇させます[3]。更に、考慮すべき重要なのは、アルコールを摂取すると自動車事故のような間接的な健康への著しい影響があることで、交通事故は社会的にも財政的にも大きな重荷です。

増加が最も激しい物質乱用問題の一つは、特に若者の間の、処方薬乱用です[4]。十代の子供たちの体や精神は成長途中であることから、これはとりわけ青少年の健康に有害です。精神活性薬は、アルコールとマリワナに次いで三番目に多い乱用物質です。オピオイドは痛みを軽減する種類の薬です。オピオイド、特にフェンタニルの過量服用の報告が急増しています。フェンタニルはモルフィネよりも100倍毒性の強い薬です。

この記事では、心理療法、投薬治療、そして自然療法といった、様々な種類の物質乱用治療の取り組みについて外観しましょう。

心理療法

患者さん、地域のリソース、そして物質乱用の種類に応じた複数の心理療法を利用することが可能です。多数の種類のトークセラピーは、物質への渇望および不安を抑制するのを助け、新しくより機能的な挙動を教え、離脱症状を軽減すのに役立ちます。若い人たちには、家族療法や認知行動療法が効果的であるというエビデンスがあります。アルコール中毒者更正会や匿名禁薬会は、物質の使用を避けるために会員がお互いに支え合うのを支援する組織です。これは実際、多くの物質使用者の社会スキル研修となる可能性もあるでしょう。これは、物質（ほとんどはアルコール）により脳の一部が損傷してしまったことが理由かも知れません。

瞑想

物質乱用治療には幾つかの薬が使われます[5]。乱用した物質と同じ様な働きで、より弱い作用のある薬を補充する治療法が存在します。更に、乱用物質の効果を弱めるような補充療法もあります。しばしば多くの物質乱用障害は、うつ病、不安神経症や気分障害といったメンタルヘルス疾患と重なっています。このような場合、他の病態も確実に適切な治療を行うのが賢明です。例えば、もし大うつ病性障害に苦しむ人がアルコール中毒ならば、物質乱用と根本原因である大うつ病とを両方共治療するのが堅実です。メンタルヘルス疾患は、心理療法および瞑想を同時に行うことが必要とされるかも知れません。

自然療法

物質乱用に対して自然療法が単独で提案されるのは考えにくいでしょう。しかし、自然療法は優れた補助療法となるかも知れません[6]。静脈内栄養療法は、中毒および離脱のプロセスで失われたビタミン、ミネラル、そしてアミノ酸を補給するのに利用できます。もし患者さんが痛みに苦しみ鎮痛剤を乱用しているならば、痛みに関する多くの病態は炎症によって悪化することから、炎症を治療するのが妥当です。この場合、オメガ-3脂肪酸に加えてビタミンD、そして植物ベースの食物により偏った食事が考慮されるでしょう。

痛みの根本原因を治療するような特別な注射療法を自然療法医が行っている地域もあります。増殖療法は靭帯を強くし結合組織の修復を促す注射療法です。組織移植は骨髄や脂肪細胞を使って、損傷を受けた組織が修復するのを促します。最後に、神経増殖療法と呼ばれる増殖療法のサブセットがありますが、これは炎症を起こしている部位の近傍に溶液を注射して神経原性疼痛を治療します^[6]。しかし、氷や熱を患部に当てがうといった、最も簡単なレメディがしばしば見過ごされています。

しばしば自然療法医は、様々な形で薬草を利用しますが、これは物質乱用と何の違いもありません。ハーブには、神経痛を治療するハーブ（セントジョーンズワートとして知られるセイヨウオトギリソウのように）、痙攣を治療するハーブ（カモミールやペパーミントのように）、そして炎症を治療するハーブ（ターメリック、ボスヴェリアや生姜のように）等々、多数存在します。

鍼は、その坑中毒の可能性が広く調査されました。自然療法医は、国立鍼解毒協会プロトコルと呼ばれるものを利用しますが、このプロトコルは耳にある多くのツボを使います（耳鍼治療と呼ばれます）。自然療法医は、幾つかの生活習慣に関するテクニックも薦めてくれるでしょう。例えば、ストレス管理術について教え、患者さんがサポートシステムを構築するのを助けるために様々なコミュニティのリソースを紹介してくれるでしょう。

プログラムの形態の物質乱用に対する全体的アプローチについて、幾つかの調査が行われました[7]。これらは必ずしも、自然療法医学の傘下に収まる治療法ではありませんが、言及すべきものです。これには、ダンス療法あるいは運動療法、太極拳、アート療法、余暇やレクレーション、精神的成長、文化に対する意識や理解、職業奉仕、精神科での治療、そして身体的健康といったものがあります。ある特定の研究では、患者さんたちが自我、自尊心、そして自信を発達させるのを助ける独特の方法に重点を置いたプログラムの特徴について、著者らが詳細に記述しました^[7]。

結論

全体として、従来療法、投薬治療、そして利用可能な自然療法を選んで複数の混在した治療を行うことが最大の効果をもたらすと、経験のある医療専門家は提言するでしょう。最終的に治療や転帰は個人に依存するところが大きいでしょう。非常に複雑な症例では、医療専門家チームだけでなくコミュニティの支援グループに頼るのが堅実です。物質乱用は治療可能な病態ですが、大半は患者さんの教育です。離脱症状、様々な治療オプション、そして再発率について患者さんが知ることが、極めて重要です。物質乱用状態が再発するのは稀ではありません。根本原因（痛みなど）の治療が放置されていたり、メンタルヘルス疾患（うつ病や不安神経症）が継続中であったりする場合に、これはとりわけ困難です。時には患者さんたちは、アルコールや他の物質に向かい、気分を良くしようとするでしょう。これによって、一つの問題が別の問題を生じさせるという悪循環が作り出されます。これは、適切な支援を出来る限り早く求めることがこれほど重要である理由です。自然療法医は優れた補助療法提供者として、他の根本原因に取り組み、薬物乱用を直接的あるいは間接的に治療するでしょう。