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鍼療法と女性の健康

Lei Gu
BSc, ND
https://www.marsdencentre.com
31 August 2013
日本語

鍼療法と女性の健康 – 月経にまつわる問題から不妊症まで
By : Lei Gu Bsc ND
Scarborough Naturopathic Clinic
211-1585 Markham Road
Scarborough, ON. M1B 2W1
www.naturopathscarborough.com


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パートI パートII パートIIIパートIV

menstrual concerns to infertility




パートI

月経にまつわる問題というのは、月経前症候群(PMS: premenstrual syndrome)、月経時の疼痛、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS: polycystic ovary syndrome)、子宮内膜症や子宮筋腫といった広範囲を取り囲む女性の健康の共通問題です。これらの症状は、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜症や子宮筋腫など幾つかの医学的状態の一部である可能性があります。これらの健康問題は、生命を脅かすという訳ではないものの、女性の生活の質にマイナスの影響を与え、隠れている未解決の健康問題の前兆となっています。慣習的に、口避妊薬がこれらの症状を抑制するのに処方されています。

経口避妊薬の長期的使用は出血を整えるのに効果的な一方、潜在的病理(子宮内膜症や筋腫の増大)の悪化などと因果関係がないとも言えず、更に乳癌、子宮癌および卵巣癌(1)のリスクを増加させる可能性もあります。また、経口避妊薬は通常の排卵を抑制することにより効いていることを認識するのも大切です。つまり、そもそも経口避妊薬は疾患の原因を正すことなく、身体の通常の機能を妨げているのです。幸いこれらの医学的状態は、身体の通常の機能を取り戻すのを助ける鍼療法のような自然療法的医療行為により上手く治療することが可能です。この記事では、女性の健康にまつわる問題に対処するにあたっての鍼療法の効能について検討します。まずは月経前症候群から始めましょう。

月経前症候群

月経前症候群(PMS: premenstrual syndrome)は出産可能年齢の女性の多数を悩ませています。実際、ある研究では、カレッジに在籍する女子学生の90%以上が少なくとも2つのPMSの症状を経験したことがあることが確認されました(2)。PMSは、月経周期中頃から月経開始までの間のホルモンの変化・不均衡の結果生じる複雑な問題です。症状は感情および身体の両方に現れます。

2011年に出版された学術文献のシステマティック・リビュー(訳者注:文献をくまなく調査し無作為化比較試験のような質の高い研究データを限りなく偏りを除いて分析したもの)によると、様々な婦人科の病気に鍼治療を用いるのは一般的ではあるものの、それらの研究のデザインと管理が不十分であるため、鍼療法のこれらの問題への効能を支持するには更にエビデンスが必要であると述べられています。しかしながらこの記事では、調査対象の各研究の総合的な結果として、鍼治療を受けていないか偽の鍼治療を受けたコントロールグループと比較して、鍼療法のグループが改善の傾向を示していると報告されています(3)。

2012年後半、11人の患者による小規模な研究が行われ、月経3周期にわたり続けて鍼治療を受けると、筋肉痛や胸の痛み、下腹痛を含むPMSの症状を著しく軽減することが示されました。一酸化窒素(NO: nitric oxide,血管拡張を促進する化合物で痛みの軽減を助けます)、またグルタチオン(GSH,内因性酸化防止剤で酸化防止剤・酸化剤の不均衡はPMSと相関しています)という特定の物質の血中濃度を、鍼治療の前後でそれぞれ測定(4)したところ、鍼治療の後では一酸化窒素とGSHとの両方の血中濃度が上昇し、鍼治療の結果、明らかな生物学的変化があったことを示しています。



Acupuncture and Women’s health - From menstrual concerns to infertility

パートII
By: Lei Gu Bsc ND
Scarborough Naturopathic Clinic
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stomich パートIで私たちは、女性の健康問題を扱うにあたり、通常の身体機能を抑制するよりも回復させるやり方での治療の重要性を再検討しました。鍼治療はPMSに対する効果的な治療法である可能性があることを確認しました。更なる研究では、鍼治療は子宮内膜症などによる月経痛といった様々な女性の健康状態に効果的である可能性があることを示しています。

近年のシステマティック・リビュー(訳者注:文献をくまなく調査し無作為化比較試験のような質の高い研究データを限りなく偏りを除いて分析したもの)、これはあるトピックに関する既存のデータ全てを要約するタイプの研究ですが、そこでは全体として、鍼治療もしくは別の技法によるツボ刺激の30回分は、この療法を受けない或いは薬を服用する(1)のに比べると、月経痛のコントロールにより大きな効能があると分かりました。激しい月経痛の共通の原因に子宮内膜症がありますが、これも鍼治療を用いることにより上手く管理することが可能です(2,3)。特に、日本での研究によると、4週間の鍼治療が子宮内膜症の女性の間で腰痛を著しく軽減しました(4)。

月経不順の原因となる病気は多嚢胞性卵巣症候群、PCOSです。PCOSは、テストステロオンなどの男性ホルモンの濃度上昇、月経不順、体毛増加やニキビ(5)といった多数の兆候や症状と共に現れます。おびただしい数の研究では、PCOSの治療の選択肢の1つとしての鍼治療が効果的であることが示されました。それらの研究の1つでは、PCOSの女性87人のグループで、電気刺激による鍼療法、運動療法、そして無介在それぞれの結果を比較しました。血中ホルモン濃度、月経頻度とニキビ発疹が厳密に評価されました。2つの介在グループ(鍼療法と運動療法)は、何の介在も受けなかったグループに比べて、全ての評価結果について著しい改善を示しました。そして鍼療法を実施したグループが最良の結果を示しました(6)。更に患者達は、鍼治療は身体的症状軽減の他に、気分を良くする助けになり、希望やPCOSを管理しているという感覚をもたらす(7)と報告しました。

女性を悩ませる機能障害性出血の原因となる3つ目の病気は子宮筋腫です。子宮筋腫は子宮壁中に形成される良性の腫瘍です。この病気の最も知られた症状は月経時の多量の出血で、これが長期におよぶと失血の結果として鉄欠乏性貧血といった他の問題を招く可能性があります。中国で1994年に行われた研究では、子宮筋腫に鍼治療を用いることにより大変前向きな結果が見られました。患者の98%が好意的で、73%が完全に治癒したのです(8)。更に最近では、使用された生理用ナプキンの数とドップラー超音波技術(9)で測定された血流とをベースとした2011年のあるケーススタディで、鍼療法は子宮筋腫の症状を軽減すると報告されました。

多くの人々が鍼治療の効果を認めていますが、それがどのような仕組みで効果をもたらすのかを理解するは容易ではありません。鍼療法のメカニズムは多面的であるらしいものの、特定の神経経路や臓器の近くに挿入される鍼が、中枢および末梢両方の神経に何らかの影響を及ぼし、それにより中枢的に脳がホルモン調節を変えているという仮説が立てられています。更にとりわけ女性の健康問題では、例えば鍼の骨盤部の鍼ツボへの挿入では、卵巣への神経シグナルを誘発するのではないかという理論が立てられています(10)。全体として、鍼治療は女性の健康問題に対する安全で非侵襲(訳者注:発熱、出欠、中毒など肉体の通常の状態を乱す外部からの刺激がない)かつ効果の高い療法の1つの選択肢です。

不妊症における鍼治療の役割に関して論じているパートIIIとパートIVも引き続きお読み下さい。



Acupuncture and Women’s health - From menstrual concerns to infertility

パートIII
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infertility Human Reproduction誌に発表された2012年のある研究によると、カナダの異性カップルの16%は不妊症の問題を抱えています(1)。これらのカップルのうち多数は補助的あるいは代替の解決方法を探しており、そのうちの1つは鍼療法です。鍼治療を不妊療法に組み込んだ際に広範におよぶ効果があったと、何組ものカップルが報告しました。カップル内での不妊の原因は男性もしくは女性に起因する問題でありうるものの、この論文は、鍼療法が女性に施される時の効果と不妊に関する議論に焦点を当てています。

男性に起因する不妊症と違って、女性に起因する不妊症は数々の問題が原因であると考えられます。第一に排卵の問題があります。これは質の良くない排卵、無排卵や不規則な排卵も含まれます。第二に、不適切だったり質が良くなかったり或いは状態不良の粘液(この粘液は精子が受精するために卵子に向かって旅をするのに欠くことの出来ないものです)など、子宮頸管の要因が考えられます。第三に、卵巣に続いている卵管に傷跡があったり障害物があったりすること。もしそうだった場合には、精子は卵子に到達できません。第四に、不適切もしくは状態不良の子宮内膜や不十分な黄体ホルモンの濃度、もしくは線維腫の存在など、着床の問題。言わずもがなですが、これら全ての要因が女性ホルモンにより影響を受けています。

鍼治療は通常の身体機能を回復し最適にします。例えば、PCOSの様な排卵に影響のある病理が上手く治療される時に、妊娠に成功するチャンスも改善します。同様に、卵子の質が改善すると妊娠成功のチャンスが向上する結果となります。鍼治療はホルモンバランスを調節することを可能とし、排卵と卵子の質を改善し、生殖器への血流を増加し、卵子着床に適した子宮環境を促進します(2,3)。

鍼治療は、女性の体内で通常の排卵を抑制するコルチゾールとプロラクチン(4)の血中濃度調節を助けることを示してきました。加えて、慣習的な経口避妊薬による治療と比べると、鍼療法は治療後より長時間、正常なホルモンレベルを保つ結果となりました(5)。PCOSの患者においては、週2回の鍼治療を10-13週行うと、何の施術も受けなかった女性達よりも頻繁な排卵と性ホルモンの著しい改善が見られました(6)。一方別の研究によると、IVFを行っている女性達が事前に鍼治療を受けると、卵子と卵母細胞の質が良くなるという結果となりました(7)。別の研究では、鍼治療は生殖器への血流を改善することが分かりました(8)。不妊症の女性が鍼治療を週2回、4週間受けると、子宮動脈血流障害が著しく軽減し、子宮へのより良好な配血が示されました。

ただ残念ながら、各ケースでの病理の治療の成功がいつも受胎成功につながる訳ではなく、また間違いなく全ての病理が治癒出来る訳でもありません。パートIVでは、IVFにおいて最良の結果を得るための、鍼治療の補助的な役割について論じます。



Acupuncture and Women’s health - From menstrual concerns to infertility

パートIV
By: Lei Gu Bsc ND
Scarborough Naturopathic Clinic
211-1585 Markham Road
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Nutritional Agents for Managing PCOS: NAC and Vitamin D 試験管内受精(IVF)は、医学的支援による生殖では断然高価で侵襲性の高い方法で、しばしばカップルの最終手段となっています。しかしながら、IVFの成功率はたった33%前後に過ぎないと見積もられています(1)。高いコストと限られた成功率をかんがみると、IVFの成功率を高める可能性のある補助的療法はどんなものでも有益であることでしょう。鍼治療は、IVFを行っている女性達がますます探し求め、不妊療法の専門家がますます薦めている療法の選択肢の1つです。

2008年に2つのメタ・アナリシス(先行研究からのデータを全て合わせた一連の強力な研究)が発表され、両研究とも鍼治療がIVFの治療を行っている女性の妊娠率を高めることを示しました。更にとりわけ、最初の研究(7つの調査と1366人の患者による)は、鍼治療が胎芽の移植の前後のタイミングで施術されると、妊娠率と生誕率が著しく改善すると結論付けました。二つ目の研究では(10つの調査と2003人の患者による)、特に鍼療法が胎芽移植と同日に施された時に、同様の結果である事が分かりました。

2012年には、更に新しいメタ・アナリシス(33の試験と、5598の患者プール)が、鍼治療をIVFの処置と連携して施術すると、妊娠率と生誕率の両方とに著しい増加をもたらすことを結論付けました(3)。最後に別の97ケースを伴う研究では、中国の漢方薬と鍼治療との両方を用いると、何の施術も行わない場合と比べて、卵子/卵母細胞の質が高くなり、妊娠率が著しく高くなることが分かりました(1)。

高価でかつ最後の砦の治療であるIVFを選択することはカップルに多分のストレスをもたらす可能性があります。実際、処置前の不安は、IVF処置後、妊娠に成功した女性に比べてそうでない女性の方が著しく高いことが分かっており、不安自体がIVFの成功を妨げるという結論に達しました(4)。逆を言えば、IVF処置を受ける女性の不安を軽減する助けとなる処置は潜在的に成功率を高める可能性があるのです。鍼治療はそういった患者達の不安の度合いを著しく軽減する(5)ことが分かってきたため、それが鍼療法をIVFの様な医学的支援による生殖の処置の補助的療法として組み入れるもう一つの理由となっています。

要約すると、鍼治療は女性の不妊症に対する安全で効果的な療法の選択肢の1つであることが分かってきました。鍼治療は、受胎能力に関する問題の原因となる隠された病理を上手く治療し、またIVF処置の直前直後で施術するとその成功率をも高めます(6)。統計的に、鍼治療は卵子の質を著しく改善することが分かってきました(7)。全体として、鍼治療は、妊娠率と出生率とをコントロールのグループに比べてより改善する安全な治療の選択肢の1つです(8)。加えて、鍼治療は従来の薬物投与に比べて卵子摘出の痛みをより効果的に軽減します(9)。ですから間違いなく鍼治療は、成功率を最高にするためにIVFと並んで補助的に用いるに値する治療法であると言えるのです(10)。

この四部シリーズを通して示されたように、鍼治療は、月経の問題から不妊症に至る多くの女性特有の健康の問題を治療するために効果の高い療法です。