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産後期-自己免疫疾患の発生およびリスク因子

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産後期-自己免疫疾患の発生およびリスク因子
by: ジェサ・ランドマン自然療法医師

トロント、オンタリオ州
jessalandmann.nd@gmail.com



産後期


はじめに

妊娠は女性の人生で最もエキサイティングな時かも知れません。それは、特にもし妊娠合併症で健康上の問題があるなら、最もストレスの多い時でもあり得ます。妊娠には、吐き気、胸やけそして疲労のような、良く聞く良くある“副作用”が沢山あります。しかし、妊娠に次いで発症する可能性のあるもっと深刻な病態も存在するため、それらの症状は新しい病気の発病の兆候であるかも知れず、それは長期的に健康へ大きく影響を及ぼすことから、無視したり払いのけたりすべきではありません。とりわけ、妊娠中には女性の免疫システムに重大な変化が起こります。これらの変化は、妊婦に流産という胎児の拒絶を避けさせ妊娠を維持させるためのものであるため、命にかかわります。このプロセスは耐用性と言われています。耐用性とは、通常ならば免疫反応を引き起こすことであろう物質に対して免疫システムが無反応の状態を発達させるプロセスのことです。正常な環境で免疫システムは“自己”に対して“非自己”を認識する能力があり、この能力のお陰で私たちの体が外来のバクテリアやウィルスによる感染を撃退することができるのです。妊娠状態では、母胎が胎児を非自己として認識せず、そして免疫反応を立ち上げないことが不可欠です。胎児耐用性という考えは、胎児のDNAの半分が父親からのものであり、ですからその女性自身のDNAとは異なっていることから、長年生物学者たちを迷わせてきました。

残念なことに、同様に免疫システムも混乱し、自分自身を非自己と認識し始める可能性があります。これが起こる際、抗体およびサイトカインと呼ばれる他の免疫メッセンジャーが体自身の組織を攻撃し始めます。これが正に、リウマチ性関節炎(RA: rheumatoid arthritis)、多発性硬化(MS: multiple sclerosis)、橋本甲状腺炎や全身性エリテマトーデス(SLE: systemic lupus erythematosus)のような自己免疫疾患の患者に起こることです。妊娠中に、エストロゲン、プロゲステロンそしてコルチゾールのレベルが著しく上昇し、ホルモン環境は劇的に変化します。これらのホルモンは免疫細胞の振る舞いに大きな影響を及ぼします。この影響が原因で、女性の妊娠中には多くの自己免疫疾患が、多発性硬化やリウマチ性関節炎のような一時的な緩和、あるいは全身性エリテマトーデスのような悪化といった、いずれかの様相を見せます。

子供の誕生後、プロゲステロン、エストロゲン、コルチゾールおよびDHEASの血清レベルが相当に低下し、副腎ホルモンおよび生殖腺ホルモンが不十分な環境となりますが、これは理論的には炎症反応を抑制あるいはコントロールする能力の縮小を引き起こします[1]。これは病気が発症する可能性の大きい環境で、産後に自己免疫疾患が発症するのは珍しくありません。この記事では、産後期に新しく発症する可能性のある2つのそのような病態、産後甲状腺炎そしてリウマチ性関節炎に注目します。


産後甲状腺炎 産後甲状腺炎

古典的な形として、産後甲状腺炎(PPT: Postpartum thyroiditis)は動悸、神経質、発汗および震えのような甲状腺機能亢進症状を伴う一時的な甲状腺中毒期として現れ、一時的な甲状腺機能低下期が続き、産後1年の終わりまでには甲状腺機能正常状態に回復します[2]。しかし、甲状腺機能が正常の状態に決して戻らずにいつまでも甲状腺機能低下のまま、残りの人生で薬を余儀なくさせられる女性たちもいます。もしその女性がさらに子供を持とうと計画するならば、甲状腺機能低下は流産や早産の確率上昇の原因となり得ることから、これにより潜在的な問題も提起されます。

産後甲状腺炎は本来、自己免疫性で、妊娠の最初の3半期の甲状腺ペルオキシターゼ抗体(TPO-Ab: thyroid peroxidase antibodies)やサイログロブリン抗体(TG-Ab: thyroglobulin antibodies)検査での陽性と関連しています[3]。陽性抗体の女性たちは、33-50%の確率で産後甲状腺炎を発症し、確率は滴定濃度が高いほど大きくなります[3]。産後甲状腺炎発症の他のリスク因子は、産後甲状腺炎の病歴、甲状腺刺激ホルモン(TSH: thyroid-stimulating hormone)の高値、高齢、一人以上の子供の出産そして超音波での甲状腺エコー低輝度です[3]。ある研究では、最初の妊娠で産後甲状腺炎を発症した女性54人のうち、69%は2人目の妊娠時に再発したことが報告されました[4]。産後甲状腺炎が原因で永久に甲状腺機能低下となるリスクは20-40%の範囲のどこかであることが、大半の研究で報告されています。最近のある研究では、産後12年の女性409人に連絡を取りました。これらの女性のうち71人が産後甲状腺炎を発症し、その71人のうち38%が永久的に甲状腺機能低下症のままでした[5]。産後甲状腺炎が甲状腺機能低下あるいは甲状腺機能亢進のいずれかに分類される際、永久に甲状腺機能低下となる大きなリスクは甲状腺機能低下状態のみに授けられていました。それに加えて、産後6ヶ月時点のTSH値も(陽性予測限界値2.6 μM/Lで)、長期的甲状腺機能低下と関連がありました。

米国甲状腺協会により定められた妊娠中の甲状腺疾患のためのスクリーニングのガイドラインは、現在のところTSH値および遊離T4値が含まれています。TPO-AbおよびTG-Abのスクリーニングは、特に一回目の妊娠期間中については、未だに議論があります。しかし2回目の妊娠に続き、もしTPO-Ab陽性で、産後甲状腺炎または別の自己免疫疾患の病歴のあることが分かったら、その女性は産後3,6,9ヶ月後に(検査と検査の間の時期にいったんTOP-Ab陰性にならない限り)、抗体、TSHおよび遊離T4のスクリーニングを受けることが勧められます[6]。これにより、セレン補給のような早期介入が可能となるでしょう。このセレン補給は、TPO-Ab、TSHそして超音波での甲状腺エコー低輝度の値を低下させることが、多くの研究で示されています[3]。以前言及された通り、妊娠中のTOP-Abスクリーニングは議論となっています。しかし、この著者の意見によると、産後甲状腺炎発症率および永久的な甲状腺機能低下となる率が高いことを鑑みると、スクリーニングはどこでも受けられるようになるべきです。甲状腺抗体を持つ甲状腺機能正常の女性たちは、これらの抗体検査が陰性の甲状腺機能正常の女性たちと比較して、自然流産率が倍増します[3]。同様に、ある研究では、最初の妊娠で抗体検査が陽性であるものの産後甲状腺炎を発症しなかった女性たちの25%が、彼女たちの2回目の妊娠で産後甲状腺炎を発症したことが報告されました[7]


リウマチ性関節炎 リウマチ性関節炎

典型的に、リウマチ性関節炎(RA: rheumatoid arthritis)は、比較的小さな手の関節に起こる自己免疫性、慢性炎症性の病態ですが、より大きな関節でも発症する可能性があります。リウマチ性関節炎発症のピークは年齢40歳以降で、女性は男性よりも3倍多く発症します。この性別による不均衡およびリウマチ性関節炎が通常は妊娠中に治まり和らぐといった観察により、医学研究者たちは性ホルモンとこの病態の振る舞いとの間の関係を調べました。多数の興味深い研究がありましたが、リウマチ性関節炎とホルモンとの間の明確な関係は、まだ立証されていません。ある研究では、骨関節炎の関節と比較して、リウマチ性の関節ではエストロゲン値が2-2.5倍高いことが分かりましたが、エストロゲンが(関節滑液の炎症に寄与する可能性のある)単球を刺激することから、これは非常に暗示的です[8]

リウマチ性関節炎の発症に関して、妊娠中は症例数の全体的減少(70%ほど)があるものの、産後、特に最初の3ヶ月で症例数の増加が見られることが、多くの研究で報告されています[8]。イギリスのある研究では、45歳以下の患者全体では、リウマチ性関節炎は産後1年目に19%、産後2年間では29%が発症することが報告されました[9]。フィンランドのある研究では、リウマチ性関節炎患者全体の12.6%が出産後1年の間に発症していることが報告されました[10]。興味深いことに、女性のリウマチ性関節炎症例のピークは性ホルモンが急速に減少する閉経期で、これは産後期と酷似しています。

授乳はさらにリウマチ性関節炎発症リスクを上昇させることも示唆されましたが、ある研究では授乳を行った女性たちは対照と比較して病気発症の確率が5倍でした[11]。これはプロラクチンの影響であろうと考えられていますが、プロラクチンは本来炎症反応を促進し、それが高レベルの際には全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、全身性硬化症、橋本病、小児脂肪便症や多発性硬化といった他の自己免疫疾患と関連を持つとされています[12]。リウマチ性関節炎に関して、リウマチ性関節炎とプロラクチンとを結びつける研究には一貫性がありませんが、しかしプロラクチンは病気の酷さに一役買っているかも知れません。(高炎症マーカー、高RF滴定量、レントゲンスコア不良そして6ヶ月以上の関節膨張により定義された)重度リウマチ性関節炎であると分類された女性176人を対象としたある研究では、総授乳期間が6ヶ月以上であったのは、軽度リウマチ性関節炎の26%と比較して、重度リウマチ性関節炎の参加者たちでは46%でした[13]

リウマチ性関節炎発症に関する妊娠および授乳のリスクを示唆するこれらの知見にも関わらず、医学文献は極めて雑多です。女性674人を対象とした看護師の健康調査の結果によると、前回の妊娠からリウマチ性関節炎の診断を受けた日までの平均日数は25年でした。さらに付け加えると、生涯授乳期間が12-23ヶ月の参加者たちはリウマチ性関節炎リスクの30%減少と、授乳期間1年以上では50%の減少と関連がありました[14]。最近のもう一つの研究では、病気の発症に妊娠はなんのリスクもなく、授乳の予防的効果が確認された[15]のと同時に、さらにもう一つの研究では妊娠が実際にリウマチ性関節炎のリスクを40%低下させたことが分かりました[16]


結論 結論

ホルモン環境の急激な変化といった様々な要因が、産後期に自己免疫疾患、特に産後甲状腺炎やリウマチ性関節炎の発症に影響を及ぼす可能性があります。女性の妊娠の前後で関節痛があるのは珍しくはありませんが、これは一時的な症状として簡単にやり過ごすことが可能でしょう。更に、疲労、発汗や情緒の変化のような産後甲状腺炎の症状は分娩後にも良く見られるかも知れません。これらの病態の様々なリスク因子のある女性では、早期発見が重要です。

さらに詳細にていてはこちらをご覧ください:http://www.naturopathiccurrents.com/articles/postpartum-period-incidence-and-risk-factors-autoimmune-diseases#sthash.bELGtZMp.dpuf